小円筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
小円筋(しょうえんきん)とは棘下筋(きょっかきん)の下、大円筋(だいえんきん)の上に位置する筋肉です。英語では「teres minor muscle」と呼ばれ、ローテーターカフ(回旋筋腱板)を構成する4つの筋肉の一つです。
小円筋は肩関節の外旋の働きに関与するだけでなく、肩関節を後方から安定させる働きもあります。野球の投球やテニスのバックハンドなど、腕を外側に振る動作で活躍する重要な筋肉です。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・小円筋の正しい起始停止・作用は?
・ローテーターカフの中での役割は?
・大円筋・棘下筋との違いは?
・効果的なエクササイズは?
例え話で言うと、小円筋は「肩関節の後方を支える小さな安定化バンド」のような存在です。小さいながらも、肩のあらゆる動きで上腕骨頭が後方にズレないように支える縁の下の力持ちです。
英語名称
teres minor muscle(テレス・マイナー・マッスル)
「teres(円形の)」+「minor(小さい方の)」で構成された名称です。大円筋(teres major)とペアで覚えると整理しやすい筋ですが、両者は作用も神経支配も全く異なる別物の筋です。
小円筋の解説
小円筋(しょうえんきん)はローテーターカフ(ローテーターカフとは棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋など、肩関節の安定性を高めている筋肉群の総称です)の一つです。
小円筋は肩関節を外旋させる際に後方関節包(こうほうかんせつほう)の挟み込まれを防いだり、手を挙上させる際に関節包の緊張を高めて上腕骨の骨頭を支持するなど、肩関節の安定性に大きく貢献している筋肉です。
特に小円筋は棘下筋とともに肩関節後方の動的安定性に関与しています。
小円筋は棘下筋に一部分被われて肩甲骨後面の外側縁部から起こり、上腕骨大結節の下部に着きます。
小円筋と棘下筋の起始、停止、作用などはほぼ似通っていることから、これら2つの筋肉は同時に働き、とりわけ肩関節の外旋・水平伸展に関与しているといわれています。したがって、小円筋や棘下筋を強化するにはエクスターナル・ローテーションと呼ばれる筋トレを行うのがとても有効と思われます。
もし、小円筋の筋力が弱化するとローテーターカフの機能障害が起こり、それに伴い肩関節が不安定(ルーズショルダー)になるので、腱板損傷・脱臼・投球障害肩など、肩にまつわる傷害が発症しやすくなります。
投球障害肩では小円筋の圧痛・攣縮(れんしゅく)が起こり、肩から背中にかけて背面全体に強い痛みがでるようになります。
代償性肥大とは|小円筋の独特の現象
小円筋は棘下筋の共同筋なので、もし、棘下筋に損傷が起きた場合には、それを補うように小円筋が発達することがあります。これを代償性肥大(だいしょうせいひだい)といいます。
MRI画像などで「小円筋だけが異常に大きい」場合は、棘下筋の損傷や麻痺が隠れている可能性があり、整形外科の臨床で重要な所見の一つとされています。
小円筋と大円筋の違い
名前が似ていますが、両者は完全な別物です:
・小円筋:腋窩神経支配、肩関節の外旋、ローテーターカフの一員
・大円筋:肩甲下神経支配、肩関節の内旋(作用が真逆)、ローテーターカフには含まれない
紛らわしいですが、「支配神経も作用も真逆」と覚えておきましょう。
小円筋と棘下筋の違い
両者はとても似た作用を持ちますが、次の違いがあります:
・棘下筋:肩甲骨後面の棘下窩から起こる大きな筋。外旋の主役
・小円筋:肩甲骨の外側縁から起こる小さな筋。外旋の補助
両者は協働して肩関節の外旋と後方安定化を担います。
起始
肩甲骨後面の外側縁(がいそくえん)
停止
上腕骨の大結節(だいけっせつ)、肩関節包(かんせつほう)
上腕骨後面の大結節下部に停止します。隣にある棘下筋(大結節上部に停止)とは少しだけ位置がずれています。
小円筋の主な働き

主な役割:
・肩関節の外旋(腕を外側に捻る)
・水平伸展の補助(腕を後方に動かす)
・肩関節後方の動的安定化
・後方関節包の保護(挟み込み防止)
小円筋を支配する神経
腋窩(えきか)神経(C5〜C6)
腋窩神経は三角筋と小円筋の両方を支配する珍しい神経です。同じく腋窩神経支配の三角筋の麻痺が起きると、小円筋も同時に機能障害になります。
日常生活動作
カーテンを開ける動作、すなわち、腕を外側に振る動作などに関与しています。
具体的には:
・カーテンを開ける動作
・髪を後ろに払う動作
・シートベルトを後ろから引き出す動作
・あらゆる腕の動きでの肩の後方安定化
スポーツ動作
テニスのバックハンドの動作や、投球動作の終動時に腕にブレーキをかけることに貢献しています。
特に重要なスポーツ:
・野球(投球のフォロースルーで腕にブレーキ)
・テニス・バドミントン(バックハンド)
・水泳(リカバリー動作)
・ゴルフ(バックスイングの安定化)
オーバーヘッド競技の選手は、小円筋のトレーニングが肩のケガ予防に直結します。
関連する疾患
肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)、投球障害肩(とうきゅうしょうがいかた)、腱板損傷(けんばんそんしょう)、腋窩神経麻痺(えきかしんけいまひ)
① 投球障害肩
野球選手で最も多いオーバーユース障害。小円筋の圧痛・攣縮が出て、投球時の肩痛・可動域制限を引き起こします。
② 腱板損傷
ローテーターカフの腱が損傷した状態。小円筋単独の損傷は比較的稀ですが、棘下筋とともに損傷することがあります。
③ クアドリラテラルスペース症候群(QLSS)
小円筋・大円筋・上腕三頭筋長頭・上腕骨で囲まれる「四辺形間隙(クアドリラテラルスペース)」を通る腋窩神経・後上腕回旋動脈が圧迫される疾患。肩後部の痛みや小円筋・三角筋の機能低下を引き起こします。
④ 腋窩神経麻痺
腋窩神経の損傷で小円筋と三角筋が同時に麻痺します。肩関節脱臼や上腕骨頸部骨折に伴うことが多いです。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

棘下筋のスタティックストレッチ
小円筋を鍛えるポイント
① 軽い負荷で高回数
ローテーターカフの一員なので、1〜2kgの軽いダンベルや軽いゴムチューブで15〜20回×2〜3セットが目安。
② 棘下筋とセットで考える
小円筋単独のエクササイズはほぼ存在しません。エクスターナルローテーションで棘下筋とともに鍛えるのが効率的。
③ ゆっくり動かす
反動を使わず、コントロールされた動きで行います。
④ 表層筋トレ前のウォームアップに
ベンチプレスやショルダープレスなどの前に行うことで、肩のケガ予防になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 小円筋と大円筋の違いは?
名前は似ていますが完全な別物です。小円筋は外旋、大円筋は内旋と作用が真逆で、支配神経も異なります(小円筋=腋窩神経、大円筋=肩甲下神経)。
Q2. 小円筋と棘下筋の違いは?
両者とも肩関節の外旋を担いますが、棘下筋が外旋の主役、小円筋は補助役です。起始も異なり、棘下筋は肩甲骨後面の広い範囲(棘下窩)から、小円筋は外側縁から起こります。
Q3. 小円筋を意識的に鍛える必要は?
ローテーターカフ強化としてエクスターナルローテーションを行えば、棘下筋とともに自然に強化されます。特に野球・テニス・水泳など肩を多用するスポーツ選手は重要です。
Q4. 代償性肥大とは?
棘下筋が損傷したとき、共同筋である小円筋が代わりに発達して機能を補う現象です。MRIで小円筋だけが大きく映っている場合、棘下筋の損傷が隠れている可能性があります。
Q5. 肩後部が痛むのは小円筋が原因?
可能性はあります。投球障害肩やクアドリラテラルスペース症候群などでも肩後部の痛みが出ます。慢性的な痛みやしびれを伴う場合は整形外科を受診してください。
Q6. なぜローテーターカフに大円筋は含まれない?
大円筋は関節包に直接付着しないため、上腕骨頭を関節窩に固定する役割を持ちません。ローテーターカフは4つ(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)と覚えましょう。
まとめ
小円筋について解説してきた内容を整理します。
・肩甲骨後面の外側縁から起こり、上腕骨大結節に停止
・ローテーターカフの4つの筋の一員
・主作用は肩関節の外旋と後方安定化
・支配神経は腋窩神経(C5〜C6)
・棘下筋とペアで「後方の安定化チーム」を作る
・大円筋とは名前が似ているが作用も神経支配も真逆
・棘下筋損傷時に代償性肥大を起こす独特の特徴
・エクスターナルローテーションで軽負荷・高回数で鍛える
小円筋は小さく目立たない筋ですが、ローテーターカフの一員として肩関節を後方から支える重要な筋肉です。肩を多用するスポーツ選手はもちろん、四十肩・五十肩を予防したい方にとっても、エクスターナルローテーションを習慣にすることをおすすめします。
【三角筋・広背筋・大円筋・ローテーターカフ(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)・僧帽筋(僧帽筋上部線維・僧帽筋中部線維・僧帽筋下部線維)・外内肋間筋・前鋸筋・肩甲挙筋・菱形筋群(大菱形筋・小菱形筋)】
参考文献・出典
・Wikipedia「小円筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/小円筋
・日本整形外科学会「腱板断裂」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html
・rehatora.net「小円筋の解剖と機能・ストレッチ」https://rehatora.net/
・筋肉研究所「小円筋」https://www.kinken.org/k10250.html






