菱形筋群の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
菱形筋群(りょうけいきんぐん)とは肩甲骨と肩甲骨の間に存在する筋肉群で、上部にある小菱形筋(しょうりょうけいきん)と下部にある大菱形筋(だいりょうけいきん)の2つで構成されています。英語では「rhomboid muscle」と呼ばれます。
菱形筋群は主に肩甲骨と肩甲骨をお互いに引き寄せる働きに作用したり、肩甲骨を下方に回旋させる働きがある筋肉です。猫背・巻き肩の改善には欠かせない筋群として、姿勢ケアの世界で重要視されています。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・菱形筋群を構成する2つの筋とは?
・大菱形筋・小菱形筋それぞれの違いは?
・なぜ猫背改善に重要なの?
・僧帽筋中部とどう違う?
・効果的な筋トレ・ストレッチは?
例え話で言うと、菱形筋群は「肩甲骨を背骨に引き寄せるダイヤモンド形のロープ」のような存在です。背骨と肩甲骨を斜めに繋いで、肩甲骨を内側に引き寄せ続けることで、正しい姿勢を保っています。
英語名称
rhomboid muscle(ロンボイド・マッスル)
「rhombus(菱形)」+「-oid(〜状)」で構成された名称で、筋肉の形が菱形(ダイヤモンド形)に似ていることに由来します。
菱形筋群の解説
菱形筋群(りょうけいきんぐん)は上部にある小菱形筋と下部にある大菱形筋の2つで構成され、僧帽筋に覆われる薄い菱形の筋です。
大きさなどに違いはありますが、形状も働きもほぼ同じで、主に肩甲骨を内転(引き寄せる働き)に作用し、また、肩甲挙筋、小胸筋と協同して肩甲骨を下方回旋させる働きがあります。
また、小菱形筋は肩甲挙筋とともに肩甲骨の挙上にも関与します。
さらに菱形筋群は前鋸筋と協同して肩甲骨内側縁を胸郭に保持する役割を果たしています。
菱形筋群の筋力が著しく弱化すると肩甲骨が外転するので、結果的に肩関節が内旋し、猫背のように背中が丸くなってしまいます。
各筋肉の詳細につきましては下記からご確認ください。
大菱形筋と小菱形筋の違い
両者は連続した1つの筋のように見えますが、起始・停止に違いがあります:
小菱形筋(上側)
・起始:C6〜C7の棘突起、項靭帯下部
・停止:肩甲骨内側縁の肩甲棘内側端
・特徴:上部にあり、肩甲挙筋と協働して挙上にも関与
大菱形筋(下側)
・起始:T1〜T4の棘突起、棘上靭帯
・停止:肩甲骨内側縁の肩甲棘内側端から下角まで
・特徴:下部にあり、より広い範囲をカバー
両者は連続して働き、肩甲骨を背骨に引き寄せます。
菱形筋群と僧帽筋中部の違い
両者とも肩甲骨を内転する筋ですが、明確な違いがあります:
菱形筋群
・位置:深層(僧帽筋に覆われる)
・走行:斜め下方(背骨上方→肩甲骨下方)
・作用:内転+下方回旋
・特徴:肩甲骨を「内側下方」に引く
僧帽筋中部
・位置:表層
・走行:水平
・作用:純粋な内転
・特徴:肩甲骨を「真横」に引く
つまり、菱形筋群は肩甲骨を内側に寄せながら少し下方回旋させる動きを担い、これが「肩甲骨を背骨にぴったり貼り付ける」姿勢を作ります。
菱形筋群と猫背・巻き肩の関係
現代人の多くが悩む猫背・巻き肩は、菱形筋群の弱化が深く関わっています。
① 肩甲骨が外側に開く
菱形筋群が弱いと肩甲骨を内側に引き戻す力が不足し、肩甲骨が外側(外転位)で固定されます。
② 胸が閉じて巻き肩に
肩甲骨が外側に開くと、自然と胸郭も閉じ、肩が前に出る「巻き肩」になります。
③ 猫背・呼吸の浅さ・肩こり
巻き肩姿勢では胸郭が広がりにくく、呼吸も浅くなり、肩こり・首こり・自律神経の乱れにつながります。
④ 上部僧帽筋が代償活動
菱形筋群が機能しないと、上部僧帽筋が代償的に過剰活動し、慢性肩こりに。
⑤ デスクワークで悪化
腕を前に出して作業する姿勢で菱形筋群が常時引き伸ばされ、機能が低下します。
姿勢改善のためには菱形筋群+僧帽筋中下部を意識的に強化することが効果的です。
菱形筋群の主な働き

運動動作においては肩甲骨を脊柱に向かって引き寄せ(内転)、わずかに下方回旋、挙上させる作用があります。
主な役割:
・肩甲骨の内転(背骨方向に引き寄せる)
・肩甲骨の下方回旋
・肩甲骨の挙上(小菱形筋)
・肩甲骨を胸郭に保持(前鋸筋と協働)
・姿勢保持・引く動作のパワー発揮
菱形筋群を支配する神経
肩甲背(けんこうはい)神経(C4〜C6)
肩甲背神経は肩甲挙筋も支配します。「肩甲骨を引き上げて内側に寄せる」共通の働きを持つこれらの筋が同じ神経支配なのは、機能的にも合理的です。
日常生活動作
手前にあるものを手前に引き寄せる動作に主に関与します。
具体的には:
・引き戸を開ける動作
・カバンを引き寄せる動作
・胸を張る動作・姿勢の保持
・後ろから物を取る動作
・食事を口に運ぶ動作の安定化
スポーツ動作
弓を引いたり、ボートのオールを漕いだり、肩甲骨を真ん中に寄せる動作などに大きく貢献します。
特に重要なスポーツ:
・アーチェリー・弓道(弓を引く動作)
・ボート競技(オールを引く)
・クライミング(体の引き上げ)
・柔道・レスリング(引き寄せ動作)
・水泳(プル動作)
・体操(吊り輪)
関連する疾患
胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)、肩関節不安定症(かたかんせつふあんていしょう)、肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)
① 猫背・巻き肩
菱形筋群の弱化による最も一般的な現代人の悩み。デスクワーカーに多い問題です。
② 慢性肩こり・背中のこり
菱形筋群が弱化すると上部僧帽筋が代償活動し、肩こりを引き起こします。また、菱形筋群自体が硬くなると肩甲骨の間の鈍い痛みとして自覚されます。
③ 胸郭出口症候群
菱形筋群の機能不全で肩甲骨の位置が悪くなり、腕神経叢の圧迫を引き起こすことがあります。
④ 翼状肩甲(部分的)
菱形筋群の機能低下でも肩甲骨の内側縁が浮き上がる症状が出ることがあります。
⑤ 肩関節周囲炎の二次因子
菱形筋群の機能不全は肩甲骨の動きを制限し、四十肩・五十肩の進行を悪化させることがあります。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ
菱形筋群を効果的に鍛えるポイント
菱形筋群は深層にあり意識しづらいため、ターゲットを絞ったエクササイズが重要です。
① ベントオーバーローイング
前傾姿勢でダンベルやバーベルを引き上げる種目。肩甲骨を寄せる動作を意識すると菱形筋群に効きます。
② シーテッドロウ・フェイスプル
ケーブルマシンを使い、肩甲骨を背骨に引き寄せる動作。菱形筋群と僧帽筋中下部を同時に強化。
③ プローンY・T・W
うつ伏せで腕をY・T・Wの形に動かすエクササイズ。菱形筋群の活性化に最適。
④ ペットボトルを使った肩甲骨寄せ
両手にペットボトルを持ち、肘を90度に曲げて後ろに引き、肩甲骨を寄せる動作。デスクワーカーに最適なミニトレ。
⑤ 椅子で肩甲骨を寄せる
椅子に座って胸を張り、肩甲骨を背骨に寄せて5秒キープを10回。1時間に1回行うだけでも効果的。
よくある質問(FAQ)
Q1. 大菱形筋と小菱形筋の違いは?
位置と大きさの違いです。小菱形筋が上、大菱形筋が下に位置し、大菱形筋の方が広い範囲をカバーします。両者は連続して働きます。
Q2. 菱形筋群と僧帽筋中部はどう違う?
菱形筋群は深層・斜め走行(内転+下方回旋)、僧帽筋中部は表層・水平走行(純粋な内転)。両者は協働して肩甲骨の位置を保ちます。
Q3. 肩甲骨の間が痛い・凝るのは菱形筋群?
可能性が高いです。デスクワークで前傾姿勢が続くと、菱形筋群が常時引き伸ばされて疲労し、肩甲骨間に鈍い痛みや凝りとして現れます。
Q4. 菱形筋群はどれくらいの頻度で鍛える?
週3〜4回がおすすめ。深層筋なので、短時間でも継続することが姿勢改善のカギです。
Q5. 猫背改善には菱形筋群と僧帽筋どちらを鍛えるべき?
両方です。菱形筋群+僧帽筋中部・下部を一緒に鍛えるのが効果的。ベントオーバーロウやフェイスプルで同時にアプローチできます。
Q6. 菱形筋群のストレッチ方法は?
両腕を前で交差させて背中を丸めるように胸の前で抱きしめる「キャットポーズ」が効果的。15〜30秒キープを2〜3セット。
まとめ
菱形筋群について解説してきた内容を整理します。
・菱形筋群は大菱形筋・小菱形筋の2つで構成
・僧帽筋の深層にある斜め走行の筋
・主作用は肩甲骨の内転・下方回旋・挙上
・前鋸筋と協働して肩甲骨を胸郭に保持
・支配神経は肩甲背神経(C4〜C6)
・弱化すると猫背・巻き肩・肩甲骨間の凝りの原因
・ベントオーバーロウ・フェイスプル・プローンYTWで効果的に鍛える
菱形筋群は現代人の姿勢改善・肩こり対策において欠かせない筋肉群です。デスクワークで前傾姿勢が続く方こそ、意識的に鍛えてケアすることで、根本的な姿勢改善と肩こり解消につながります。
【三角筋・広背筋・大円筋・ローテーターカフ(小円筋・棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)・僧帽筋(僧帽筋上部線維・僧帽筋中部線維・僧帽筋下部線維)・外内肋間筋・前鋸筋・肩甲挙筋・大菱形筋・小菱形筋】
菱形筋群クイズ(全7問)
構成筋・作用・神経支配などを4択で確認。覚えたかチェックしよう。
問題文
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参考文献・出典
・Wikipedia「菱形筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/菱形筋
・看護roo!「大菱形筋・小菱形筋」https://www.kango-roo.com/word/19929
・日本ストレッチング協会「菱形筋の起始と停止・作用と神経支配」https://j-stretching.jp/anatomy/rhomboid-muscle
・厚生労働省 e-ヘルスネット「肩こり」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html




