下腿三頭筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
下腿三頭筋(かたいさんとうきん)とは下腿部にある強大な筋肉で、浅層の腓腹筋と深層のヒラメ筋からなりたっています。英語では「triceps surae muscle」と呼ばれます。
下腿三頭筋のうち腓腹筋は膝関節屈曲と足関節の底屈、ヒラメ筋は足関節の底屈に関与します。「ふくらはぎの強力な推進エンジン・第二の心臓」として、歩行・走行・ジャンプの推進力と、下半身の血流ポンプを兼ねる重要な筋肉です。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・下腿三頭筋の3頭とは?
・なぜ「第二の心臓」と呼ばれる?
・腓腹筋とヒラメ筋の違いは?
・アキレス腱との関係は?
例え話で言うと、下腿三頭筋は「ふくらはぎを形作る3頭の血流ポンプ」のような存在です。歩行・走行のパワーを生み出すだけでなく、下半身の血液を心臓に戻す血液ポンプの役割も担います。
英語名称
triceps surae muscle(トライセップス・スラエ・マッスル)
「triceps(3つの頭の)」+「surae(ふくらはぎの)」で構成された名称。「ふくらはぎの3つの頭を持つ筋」を意味します。
下腿三頭筋の解説
下腿三頭筋(かたいさんとうきん)とは浅層部にある腓腹筋内側頭・腓腹筋外側頭、及び深層部にあるヒラメ筋の3つの筋肉の総称です。
腓腹筋(ひふくきん)の内側頭は大腿骨内側上顆、外側頭は大腿骨外側上顆から起始し、ヒラメ筋は脛骨内側縁・腓骨頭・ひらめ筋線・ひらめ筋腱弓から起始し、やがて3つの筋はアキレス腱を構成し、踵骨隆起に停止します。
腓腹筋は下腿三頭筋の中では二関節筋に分類され、膝関節の屈曲・足関節の底屈に大きく貢献しますが、ヒラメ筋は単関節筋なので足関節の底屈にしか関与しません。
ランニング・ジャンプなどこれらすべての動作は、身体を上方と前方に進める腓腹筋とヒラメ筋の力に大きく依存します。
腓腹筋・ヒラメ筋を鍛えるにはカーフレイズ(またはヒールレイズ)を行うことで強化することができます。
腓腹筋・ヒラメ筋をストレッチするには足関節を背屈させる必要があります。腓腹筋へのアプローチを高めるには膝関節を完全に伸展させておく必要がありますが、ヒラメ筋へのアプローチを高めるには膝関節を屈曲させておく必要があります。
各筋肉の詳細につきましては下記からご確認ください。
腓腹筋とヒラメ筋|二関節筋と単関節筋の役割分担
下腿三頭筋を理解する上で最重要なのが腓腹筋とヒラメ筋の違いです:
腓腹筋(gastrocnemius)
・浅層・表層
・二関節筋(膝関節+足関節)
・速筋線維優位
・瞬発力・ジャンプに強い
・大腿骨内側上顆/外側上顆起始
・2頭構造(内側頭+外側頭)
ヒラメ筋(soleus)
・深層
・単関節筋(足関節のみ)
・遅筋線維優位
・持久力・姿勢保持に強い
・脛骨/腓骨/ひらめ筋線起始
・1頭構造
共通点:
・どちらもアキレス腱を介して踵骨に停止
・足関節の底屈に作用
・支配神経は脛骨神経
機能的な役割分担:
① 瞬発系動作(腓腹筋優位)
ジャンプ・短距離走の加速など。
② 持続系動作(ヒラメ筋優位)
歩行・立位姿勢の保持・長距離走など。
③ 連携動作
2筋が連携して多様な動作に対応。
トレーニングの使い分け:
① スタンディング・カーフレイズ(立位)
膝伸展位 → 腓腹筋主役
② シーテッド・カーフレイズ(座位)
膝屈曲位 → ヒラメ筋主役
ストレッチも同様:
・膝伸展位での背屈:腓腹筋ストレッチ
・膝屈曲位での背屈:ヒラメ筋ストレッチ
腓腹筋とヒラメ筋を意識して使い分けることで、下腿三頭筋全体を効率的に強化・ケアできます。
下腿三頭筋=「第二の心臓」|ミルキングアクションと血流ポンプ
下腿三頭筋には「第二の心臓」という重要な別名があります。
「第二の心臓」と呼ばれる理由:
下腿三頭筋は下半身の血液を心臓に戻すポンプとして機能します。
ミルキングアクション(milking action)とは:
ふくらはぎの筋肉が収縮・弛緩を繰り返すことで、下肢の静脈を圧迫・解放し、血液を上方へ押し上げる作用。乳搾り(milking)のような動きから命名。
下半身の血流の問題:
人体の血液は心臓のポンプで押し出されますが、下半身から心臓へ戻る血液は重力に逆らう必要があります。
・動脈:心臓のポンプで強制的に押し出される
・静脈:戻る力が弱い
下腿三頭筋の役割:
① 静脈の圧迫
ふくらはぎの収縮で下肢静脈を圧迫
→ 血液が上方へ押し出される
② 静脈弁との協働
下肢静脈には逆流防止弁あり
→ ミルキングアクションで上方へのみ流れる
③ 心臓への還流促進
心臓のポンプを下から補助
④ むくみ予防
血流改善でむくみ・冷えを予防
ふくらはぎが「第二の心臓」と呼ばれる根拠:
歩行・カーフレイズの動作で、1回の収縮あたり約100mlの血液を上方へ送ると言われています。これは心臓の1回拍出量に匹敵するレベル。
下腿三頭筋機能低下のリスク:
① 下肢のむくみ
血液・リンパ液の滞留。
② 冷え性
末梢循環の悪化。
③ 静脈瘤
慢性的な血流障害。
④ 深部静脈血栓症(DVT)
重大な合併症。エコノミークラス症候群。
⑤ 心臓への負担増加
心臓が全ての循環を担うことに。
第二の心臓を活性化する方法:
① ふくらはぎを動かす
1日30分以上の歩行。
② カーフレイズ
1日20〜30回。デスクワーカーは1時間ごとに10回。
③ 足首回し
座りながらでもOK。
④ 弾性ストッキング
長時間立位・座位の方に。
⑤ ふくらはぎマッサージ
下から上へ向かって。
ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれる重要な血液ポンプ。日常的なケアで全身の健康に直結します。
下腿三頭筋とアキレス腱|一体構造のトラブル
下腿三頭筋はアキレス腱と一体となって機能します:
アキレス腱(calcaneal tendon)とは
下腿三頭筋(腓腹筋+ヒラメ筋)の3頭が合流して1本の腱となり、踵骨に停止する人体最強の腱。長さ約15cm、太さ約1cm。
名前の由来:
ギリシャ神話の英雄アキレウスから命名。アキレウスの唯一の弱点が踵だったことから「弱点」の象徴でもあります。
アキレス腱の機能:
・下腿三頭筋の力を踵に伝達
・歩行・走行の推進力
・強い張力に耐える(体重の数倍)
アキレス腱のトラブル:
① アキレス腱断裂
・スポーツ中の発症が多い
・「バンッ」という音
・突然の動作不能
・30〜50代の運動愛好家に多い
・手術+長期リハビリ必要
② アキレス腱周囲炎
・慢性的な使い過ぎ
・ランナーに多発
・朝の硬さ
・運動開始時の痛み
③ アキレス腱付着部障害
・踵骨付着部の障害
・スポーツ少年に多い
予防の3原則:
① ウォームアップの徹底
特に40代以降は念入りに。
② 段階的な強度アップ
急激な負荷増加は厳禁。
③ 柔軟性維持
下腿三頭筋のストレッチで。
「アキレス腱は加齢で硬くなる」:
・30代後半から弾力低下
・40代でリスク急増
・50代以降は要注意
40代以降のスポーツ復帰では、十分なウォームアップと段階的な強度アップが命を守ります。
下腿三頭筋の主な働き

主な役割:
・足関節の底屈(主作用)
・膝関節の屈曲(腓腹筋のみ)
・歩行・走行の推進力
・ジャンプの踏み切り
・立位姿勢の保持
・第二の心臓(血流ポンプ)
下腿三頭筋を支配する神経
脛骨神経(S1〜S2)
ハムストリングと同じ脛骨神経の支配を受けます。
日常生活動作
姿勢保持、つま先立ちをするなどの動作に関与します。
具体的には:
・歩行(推進力)
・つま先立ち
・階段昇降
・立位姿勢の保持
・足を踏み出す動作
・下半身の血流維持
すべての立位・歩行動作で活躍。
スポーツ動作
ランニング・ジャンプなどあらゆるスポーツ動作に大きく貢献します。
特に重要なスポーツ:
・陸上競技(短距離・跳躍・最重要)
・バスケットボール(ジャンプ)
・バレーボール(ジャンプ)
・サッカー(ダッシュ・ジャンプ)
・マラソン(推進力)
・テニス(ステップ)
走力・跳躍力に直結する筋。
関連する疾患
アキレス腱断裂、アキレス腱周囲炎、腓腹筋肉離れ
① アキレス腱断裂
30〜50代の運動愛好家に多発。手術+長期リハビリが必要。
② アキレス腱周囲炎
ランナーに多発する慢性炎症。
③ 腓腹筋肉離れ
通称「テニスレッグ」。中高年スポーツ愛好家に多発。
④ 下腿三頭筋拘縮
柔軟性低下による硬縮。歩行障害の原因。
⑤ 下腿コンパートメント症候群
筋膜内圧上昇による緊急疾患。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

スタンディング・カーフレイズ

下腿三頭筋のスタティックストレッチ
※膝関節が屈曲しているため正確いうとこれはヒラメ筋のストレッチになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 下腿三頭筋の3頭とは?
腓腹筋内側頭・腓腹筋外側頭・ヒラメ筋の3つ。3つの筋肉が合流してアキレス腱を形成します。
Q2. なぜ「第二の心臓」と呼ばれる?
ふくらはぎが収縮・弛緩することで下肢の静脈を圧迫・解放(ミルキングアクション)し、血液を心臓へ押し上げる役割があるためです。
Q3. 腓腹筋とヒラメ筋の鍛え分けは?
立位(膝伸展)でのカーフレイズ=腓腹筋、座位(膝屈曲)でのカーフレイズ=ヒラメ筋。膝の角度で使い分けが可能です。
Q4. アキレス腱断裂を予防するには?
ウォームアップの徹底+段階的な強度アップ+柔軟性維持。特に40代以降は急な激しい運動を避けることが重要。
Q5. デスクワーカーが気にすべき理由は?
長時間座位で下腿三頭筋のポンプ機能が低下→むくみ・冷え・深部静脈血栓症のリスク。1時間ごとのカーフレイズが予防に効果的。
Q6. むくみ予防には?
1日30分以上の歩行+1時間ごとのカーフレイズ10回。さらにふくらはぎを下から上へマッサージで血流促進。
まとめ
下腿三頭筋について解説してきた内容を整理します。
・腓腹筋内側頭・腓腹筋外側頭・ヒラメ筋の3つの総称
・大腿骨/脛骨・腓骨から起こりアキレス腱を介して踵骨に停止
・主作用は足関節底屈+膝屈曲(腓腹筋のみ)
・支配神経は脛骨神経(S1〜S2)
・「第二の心臓」として血流ポンプ
・ミルキングアクションで下肢血液を心臓へ
・歩行・ジャンプの推進力
・アキレス腱を介して踵骨に停止
・腓腹筋=瞬発力、ヒラメ筋=持久力
下腿三頭筋はふくらはぎの強力な推進エンジンであると同時に「第二の心臓」として全身の血流を支える重要な筋群です。スポーツのパフォーマンス向上だけでなく、むくみ・冷え・深部静脈血栓症の予防にも欠かせません。日常的なカーフレイズで第二の心臓を活性化しましょう。
【腓腹筋・ヒラメ筋・前脛骨筋・後脛骨筋・腓骨筋群(長腓骨筋・短腓骨筋・第三腓骨筋)・足底筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・長母趾伸筋・長趾伸筋】
参考文献・出典
・Wikipedia「下腿三頭筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/下腿三頭筋
・看護roo!「下腿三頭筋」https://www.kango-roo.com/word/20138
・日本整形外科学会「アキレス腱断裂診療ガイドライン」https://www.joa.or.jp/
・厚生労働省 e-ヘルスネット「深部静脈血栓症」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・rehatora.net「下腿三頭筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/




