後頭下筋群とは|起始停止・後頭下三角と頭痛・眼精疲労との深い関わりを解説

後頭下筋群の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

後頭下筋群(こうとうかきんぐん)とは、後頭部と頚椎をつなぐ深層部にある4つの小さな筋肉の総称です。それぞれの筋肉は決して大きくないものの、約4〜5kgもある頭部を支え、繊細な動きをコントロールする極めて重要な筋肉群です。

後頭下筋群は「頭の三脚」とも呼ばれ、目の動きや姿勢の微調整に関わるため、現代人に多い頭痛・眼精疲労・首こり・ストレートネックと深く関わっています。デスクワークやスマホ操作で長時間うつむき姿勢を続ける人にとって、知っておきたい筋肉群です。

この記事では、後頭下筋群を構成する4つの筋肉それぞれの起始停止、後頭下神経による支配、後頭下三角の構造、頭痛・眼精疲労との関わり、効果的なセルフケアまで、解剖学的根拠とともに徹底解説します。

英語名称

suboccipital muscles(サボシピタル・マッスルズ)

「sub-(下の)」+「occipital(後頭骨の)」+「muscles(筋肉)」で構成された名称で、文字通り「後頭骨の下にある筋」を意味します。

後頭下筋群の解説

後頭下筋群(こうとうかきんぐん)は、小後頭直筋(しょうこうとうちょっきん)大後頭直筋(だいこうとうちょっきん)上頭斜筋(じょうとうしゃきん)下頭斜筋(かとうしゃきん)という頚椎後面の深層部にある4つの筋肉の総称です。

後頭下筋群はそれぞれ第1頚椎(C1:環椎)第2頚椎(C2:軸椎)から起始し、頭蓋骨(とうがいこつ)や環椎に停止します。

主に上部頚椎の伸展(後屈)、側屈、回旋に関与し、特に大後頭直筋と下頭斜筋は回旋動作に大きく貢献します。

一つ一つはとても小さい筋肉でそれほど大きな力を有しているわけではありませんが、重い頭蓋骨カメラの三脚のように支え、微細に動かしている筋なので、とても重要な役割を果たしています。

例え話で言うと、後頭下筋群は「頭の位置を1ミリ単位で調整する微調整つまみ」のような存在です。表層の大きな筋肉(僧帽筋など)が大まかな動きを担うのに対し、後頭下筋群は精密な角度調整を行っています。

これらの筋肉に過剰なストレスが加わるとしばしば頭痛・眼精疲労・めまいの原因に繋がってしまうことがあります。後頭下筋群の中央には「後頭下三角(こうとうかさんかく)」と呼ばれる三角形のスペースがあり、ここを椎骨動脈・後頭下神経・大後頭神経が通っているため、筋肉の緊張がこれらを圧迫すると様々な症状が現れます。

起始

① 小後頭直筋:C1(環椎)の後結節
② 大後頭直筋:C2(軸椎)の棘突起
③ 上頭斜筋:C1(環椎)の横突起
④ 下頭斜筋:C2(軸椎)の棘突起

停止

① 小後頭直筋:下項線の内側1/3(後頭骨)
② 大後頭直筋:下項線の中央部(後頭骨)
③ 上頭斜筋:大後頭直筋の停止の上部(後頭骨)
④ 下頭斜筋:C1(環椎)の横突起

※情報源によっては「上項線」と表記されることもありますが、いずれも後頭骨の項線部に停止しています。

後頭下三角|後頭下筋群が作る重要なスペース

後頭下筋群の中でも、大後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋の3つが囲む三角形のスペースを「後頭下三角(こうとうかさんかく)」と呼びます。

この後頭下三角はとても重要な解剖学的構造で、次のような血管・神経が通っています。

椎骨動脈(ついこつどうみゃく):脳に血液を送る重要な動脈
後頭下神経:後頭下筋群を支配する神経
大後頭神経:後頭部の感覚を担う神経
椎骨静脈

後頭下筋群が過緊張すると、この後頭下三角を通る血管や神経が圧迫され、後頭部の痛み、目の奥の痛み、めまい、自律神経の乱れなどの原因となることがあります。

後頭下筋群の主な働き

後頭下筋群の作用は、4つの筋肉が連携することで生まれる細かい動きが特徴です。

① 頭部の伸展(後屈)

4つの筋肉すべてが両側で収縮すると、頭を後ろに反らす動きをサポートします。上を向く動作で活躍します。

② 頭部の側屈

上頭斜筋が片側だけ収縮すると、頭を同側へ傾ける動きを担います。

③ 頭部の回旋

大後頭直筋と下頭斜筋が片側だけ収縮すると、頭を同側へ回す動きを担います。特に「左右に首を振る」動作の精密制御に欠かせません。

④ 眼球運動との連動

これは特に重要なポイントですが、後頭下筋群は眼球の動きと連動して収縮します。目を上下左右に動かすだけで、後頭下筋群はわずかに緊張するのです。デスクワークで長時間モニターを見つめていると、後頭下筋群が知らず知らずのうちに疲労していきます。

後頭下筋群を支配する神経

後頭下神経(第1頸神経後枝)

後頭下筋群はすべて後頭下神経(こうとうかしんけい)、つまり第1頚神経(C1)の後枝によって支配されています。

この後頭下神経は、後頭下三角の中を走行し、4つの後頭下筋に枝を送ります。すぐ近くを大後頭神経(C2の後枝)も走行しており、こちらは後頭部の皮膚感覚を担っています。後頭下筋群の過緊張で大後頭神経が圧迫されると、後頭神経痛が生じることがあります。

日常生活動作

日常のどのような生活動作にも関わりがあります。

後頭下筋群は意識して動かす筋肉ではありませんが、次のような場面で常に活躍しています。

頭の位置を保持する(座位・立位での頭の安定)
目線を動かす(眼球運動に連動)
うなずく動作・首を振る動作
パソコン・スマホを見る姿勢の保持
読書時の首の角度調整
歩行中の頭の安定化

特に「長時間うつむき姿勢でスマホを見る」「パソコン画面に集中する」といった現代人の生活習慣は、後頭下筋群を慢性的に酷使する原因となります。

スポーツ動作

すべてのスポーツに関与します。

後頭下筋群は、頭の繊細な位置調整が必要なほぼすべてのスポーツで活躍しています。

球技(テニス・サッカー・バスケなど):ボールを目で追う動作
格闘技:相手の動きを目で捉えながら頭の位置を調整
ゴルフ:スイング中の頭の位置を一定に保つ
射撃・アーチェリー:精密な照準合わせ

これらの競技では、後頭下筋群の繊細な働きがパフォーマンスに直結します。

関連する疾患・症状

頭痛や目の奥の痛みなど

後頭下筋群に関連する代表的な症状・疾患には、次のものがあります。

① 緊張型頭痛

最も一般的な頭痛のタイプで、後頭下筋群の過緊張が主要な原因の一つです。「後頭部から頭全体を締め付けるような鈍い痛み」が特徴で、肩こり・首こりを伴うことが多いです。

② 大後頭神経痛(後頭神経痛)

後頭下筋群が硬くなると、近くを通る大後頭神経が圧迫され、後頭部から頭頂部にかけてビリッ・ズキッとした電撃痛が走ることがあります。首を動かしたときに誘発されることが多い症状です。

③ 眼精疲労

後頭下筋群は眼球運動と連動するため、長時間の目の使用で疲労します。逆に、後頭下筋群の緊張が目の奥の痛み・目のかすみ・まぶたの重さを引き起こすこともあります。

④ めまい・自律神経症状

後頭下三角を通る椎骨動脈が後頭下筋群の緊張で圧迫されると、脳への血流が低下し、めまい・ふらつき・吐き気・自律神経症状を引き起こすことがあります。

⑤ ストレートネック関連症状

ストレートネック(スマホ首)では後頭下筋群が常に短縮した状態となり、慢性的な後頭部痛・首こり・肩こりの原因になります。

後頭下筋群のセルフケア|マッサージとストレッチ

後頭下筋群は深部にあるため、力任せに揉むのではなく、優しいアプローチが効果的です。

①テニスボールマッサージ

仰向けに寝て、テニスボールまたはマッサージボールを後頭部の生え際(外後頭隆起のすぐ下)に当てます。頭を軽く左右に揺らして、後頭下筋群に持続的な刺激を与えます。1日1〜2分が目安です。

最もシンプルかつ効果的なセルフケアで、首こり・頭痛に悩む方におすすめです。

②指圧マッサージ

両手の親指を後頭部の生え際の少し下に当て、円を描くように優しく押します。強く押すと逆効果なので、気持ちいい程度の圧で30秒〜1分を目安に。

③チンタック(あご引きエクササイズ)

椅子に座って背筋を伸ばし、あごをゆっくり後ろに引いて二重あごを作るような姿勢を5〜10秒キープします。10回繰り返します。後頭下筋群のストレッチと、対する椎前筋群の強化を同時に行えます。

④首のストレッチ

椅子に座って、頭をゆっくり前に倒し、後頭部から首にかけてを伸ばします。15〜30秒キープ。深呼吸しながらリラックスして行います。

⑤温める

蒸しタオルやホットアイマスクで後頭部を温めると、深部の緊張がほぐれます。入浴時に首までしっかり浸かるのも効果的です。

⑥目の休憩

後頭下筋群は眼球運動と連動するので、20-20-20ルール(20分作業したら、20フィート=約6m先を、20秒見る)など、目の休憩を意識的に取ることが重要です。

注意点:強く押しすぎると、椎骨動脈や神経を圧迫してめまい・しびれを引き起こす危険があります。必ず気持ちいい範囲で行い、痛みやしびれが出たらすぐ中止してください。慢性的な頭痛や強い症状が続く場合は、自己判断せず脳神経内科・整形外科・ペインクリニックを受診してください。

後頭下筋群を整えるメリット

後頭下筋群を意識的にケアすることで、次のような効果が期待できます。

緊張型頭痛の軽減
後頭神経痛の予防
眼精疲労の改善
めまい・自律神経症状の軽減
首こり・肩こりの解消
ストレートネックの改善
姿勢の改善
集中力の維持

デスクワーカー、スマホヘビーユーザー、目を酷使する職業の方ほど、後頭下筋群のケアの価値は大きいと言えます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 後頭下筋群はどこにありますか?
首の最も深い場所、後頭部と頚椎をつなぐ部位にあります。外後頭隆起(後頭部の中央の出っ張り)のすぐ下から、髪の生え際の少し下あたりが目安です。

Q2. 目を使うと頭が痛くなるのはなぜ?
後頭下筋群は眼球運動と連動して収縮する性質があります。長時間目を使うと後頭下筋群も疲労し、緊張型頭痛や後頭部痛を引き起こすことがあります。

Q3. 後頭下三角とは何ですか?
大後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋の3つの筋肉で囲まれた三角形のスペースのことです。ここを椎骨動脈・後頭下神経・大後頭神経が通っており、後頭下筋群の緊張がこれらを圧迫すると、頭痛・めまい・眼精疲労などが生じます。

Q4. 後頭下筋群と僧帽筋の違いは?
僧帽筋は首から肩・背中にかけて広がる表層の大きな筋肉で、首と肩の大きな動きを担います。後頭下筋群はその深層、最も深い場所にある4つの小さな筋肉で、頭の繊細な位置調整を担います。役割もスケールも異なりますが、両者が連携して首の動きを実現しています。

Q5. 頭痛が続く場合はどうすればいい?
セルフケアで改善しない場合や、強い痛み・吐き気・しびれ・めまいを伴う場合は、自己判断せずに脳神経内科を受診してください。後頭下筋群由来の頭痛と、他の重大な疾患による頭痛を医師に判断してもらうことが大切です。

まとめ

後頭下筋群について解説してきた内容を整理します。

・後頭下筋群は小後頭直筋・大後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋の4つの筋肉から構成される
・別名「頭の三脚」と呼ばれ、頭部の繊細な位置調整を担う深層筋
・支配神経は後頭下神経(C1後枝)
・3つの筋が囲む「後頭下三角」を椎骨動脈・大後頭神経などが通る
眼球運動と連動するため、デスクワークで疲労しやすい
・過緊張は緊張型頭痛・後頭神経痛・眼精疲労・めまいの原因に
・テニスボールマッサージ・チンタックで効果的にケアできる

後頭下筋群は普段意識しない小さな筋肉ですが、現代人の不調と深く関わる重要な「頭のインナーマッスル」です。慢性的な頭痛・首こり・眼精疲労にお悩みの方は、まずは後頭下筋群のセルフケアから始めてみてください。改善しない場合は、迷わず専門医に相談しましょう。

その他の頭部・頚部の筋肉

表情筋舌骨下筋群・​ 側頭筋・​咬筋・​内側翼突筋外側翼突筋椎前筋群胸鎖乳突筋斜角筋群(前斜角筋中斜角筋後斜角筋)・頭板状筋頸板状筋

参考文献・出典

・療法士活性化委員会「後頭下筋群の解剖と機能を徹底解説!」https://lts-seminar.jp/2024/11/21/uchikawa-26/

・rehatora.net「後頭下筋群の解剖・触診・安全なリリース|頭痛対策ガイド」https://rehatora.net/

・おくだ脳神経外科クリニック「眼球運動と後頭下筋群」https://okuda-cl.jp/blog/1298

・板橋駅前オアシス鍼治療院「後頭下筋群と眼精疲労と慢性頭痛」https://www.hari-care.jp/

・おがわ整体院「全身の筋肉-頚部」https://www.aandk-t-s.com/16709974226097

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