多裂筋とは|起始停止・神経支配と腰椎安定・腰痛予防の関係を解説

多裂筋


多裂筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

多裂筋(たれつきん)とは脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)群の深層にある長い筋肉です。英語では「multifidus muscle」と呼ばれます。

椎骨(ついこつ)同士を安定させるのが主な役割の筋肉です。腰痛研究の世界で「腰痛の鍵」「インナーマッスルの代表」として注目される、現代医学で最も重要視されている深層筋肉の一つです。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

多裂筋の正しい起始停止・作用は?
なぜ腰痛と関係する?
腹横筋とどう連動する?
ピラティスでなぜ重要視される?

例え話で言うと、多裂筋は「椎骨同士を縫い合わせる細い糸」のような存在です。隣接する椎骨をしっかりと縛り、脊柱が動く時にもバラバラにならないように深層から固定する重要な役割を担います。

英語名称

multifidus muscle(マルチフィデゥス・マッスル)

「multi(多くの)」+「findere(裂ける)」が語源で、多くに分かれている筋を意味します。

多裂筋の解説

多裂筋(たれつきん)は脊柱の後方を支持する脊柱起立筋の一つで、棘突起のすぐ両側に位置する筋長の短い筋肉です。脊柱起立筋よりもさらに深層にあります。

多裂筋は最長筋の浅部の腱・後仙骨孔と上後腸骨棘との間の仙骨後面・腰椎の乳頭突起・全胸椎の横突起・第4〜7頸椎の関節突起から起始し、各起始部から2〜4つ上に位置する椎骨の棘突起に停止します。

多裂筋は両側が同時に作用すれば体幹部の伸展(後屈)、片側が作用すれば側屈及び回旋動作に作用します。また、姿勢保持にも大きく貢献しています。

多裂筋は腰部、特に下位腰椎で非常に発達しているのですが、胸部より上の多裂筋の筋腹はとても小さく、力も弱い傾向にあります。これは、腰椎が体重を最も支える部位であるためです。

多裂筋と腹横筋|深層腹筋ユニットの最強コンビ

多裂筋を語る上で必ず一緒に語られるのが腹横筋との関係です。

ローカルマッスル(深層筋)の連動
多裂筋(背面)
腹横筋(前面・側面)
横隔膜(上面)
骨盤底筋(下面)

この4つの筋が連動して「インナーユニット」を形成し、腰椎を内側から包み込むように安定化します。360度全方向から腰椎を支える天然のコルセットと言われます。

多裂筋と腹横筋の関係
最新の研究では、健常者では動作開始の0.03秒前に多裂筋と腹横筋が先行収縮することが分かっています。これにより脊柱を「動く前」に安定化させ、無理な負荷から守ります。

腰痛患者での問題
慢性腰痛患者では、この先行収縮が遅れる・弱くなることが多く報告されています。多裂筋+腹横筋のリハビリが、慢性腰痛改善の現代医学的アプローチの中核です。

多裂筋と慢性腰痛|現代医学の最新知見

多裂筋は「腰痛の鍵」として近年最も注目されている筋肉です。

慢性腰痛患者の多裂筋の特徴
研究で明らかになった事実:
筋萎縮(特に下位腰椎レベル)
脂肪浸潤(筋線維が脂肪に置き換わる)
機能低下
左右非対称

「使えていない多裂筋」が腰痛を慢性化させる
腰痛で痛い動きを避ける→多裂筋を使わなくなる→筋萎縮→さらに腰椎が不安定→腰痛悪化…という悪循環が起こります。

MRIで分かること
慢性腰痛患者の腰椎MRIでは、健常者と比較して多裂筋の脂肪浸潤が顕著に見られることが報告されています。これは「使われていない筋肉」が脂肪化する典型的な変化です。

リハビリの考え方
現代の腰痛リハビリでは「多裂筋+腹横筋の再教育」が中心。痛みがあっても可能な範囲で動かすことで、多裂筋を再び活性化させ、腰椎の安定を取り戻すアプローチです。

セルフケアのポイント
痛みを恐れず動く(無理のない範囲で)
多裂筋のトレーニング(バードドッグなど)
腹横筋との連動を意識(ドローイン)
専門家の指導を活用

慢性腰痛にお悩みの方は、多裂筋へのアプローチが症状改善の重要なポイントになります。

ピラティス・コアトレーニングでの多裂筋

多裂筋はピラティス・コアトレーニングの中核として位置づけられています:

ジョセフ・ピラティスのメソッド
20世紀前半に開発されたピラティスメソッドは、まさに多裂筋+腹横筋を中心としたインナーマッスルを鍛えるためのエクササイズ。リハビリ目的で発展し、現在は世界中でフィットネス・腰痛予防の代表的メソッドに。

ピラティスの代表エクササイズ
バードドッグ:多裂筋+多裂筋を最大限活性化
デッドバグ:多裂筋+腹横筋の協調
プランク:多裂筋を含む全身体幹
サイドプランク:多裂筋+腰方形筋

誰におすすめ?
慢性腰痛に悩む方
姿勢改善したい方
産後ケア
高齢者のロコモ予防
アスリートの体幹強化

激しい動きではなく、正しく深層筋を活性化するピラティスは、すべての年齢層に推奨されるトレーニングです。

起始

最長筋の浅部の腱、後仙骨孔と上後腸骨棘との間の仙骨後面、腰椎の乳頭突起、全胸椎の横突起、第4〜7頸椎の関節突起

仙骨から頸椎まで広範囲から起こります。

停止

各起始部から2〜4つ上に位置する椎骨の棘突起に停止

各椎骨レベルで2〜4椎骨を飛び越えて停止するため、隣接する椎骨同士を細かく繋ぎとめる構造になっています。

多裂筋の主な働き

体幹の伸展 体幹の側屈 体幹の回旋 体幹の動き

運動動作においては体幹部の伸展(後屈)側屈回旋させる作用があります。

主な役割:

椎骨同士の安定化(主作用)
体幹の伸展(両側収縮で)
体幹の側屈・回旋(片側収縮で)
腰椎の安定(特に下位腰椎)
姿勢保持
動作の予測的制御(先行収縮)

多裂筋を支配する神経

脊髄神経後枝(C3〜C4)

各椎骨レベルの脊髄神経後枝に支配されます。

日常生活動作

姿勢保持や背中を反らす動作に関与します。

具体的には:

立位・座位の姿勢保持
歩行(脊柱の動的安定)
かがみから上体起こし
振り返る動作
物を持ち上げる際の腰椎保護

特に腰椎の細かな動きの制御で活躍。

スポーツ動作

跳躍やダッシュなど、あらゆるスポーツ動作に関与し、上半身を安定させる働きに大きく貢献します。

特に重要なスポーツ:
陸上競技(走動作の体幹安定)
体操競技
ダンス・バレエ
武道・格闘技
水泳
ゴルフ・テニス

スポーツでのパフォーマンスは多裂筋の機能に大きく依存します。

関連する疾患

慢性腰痛、腰部コンパートメント症候群、腰部脊柱管狭窄症

① 慢性腰痛

多裂筋の萎縮・脂肪浸潤が慢性腰痛の主因の一つ。現代の腰痛研究で最も注目されている所見。

② 腰部コンパートメント症候群

多裂筋を含む腰部の筋肉群の腫脹が引き起こす希少疾患。

③ 腰部脊柱管狭窄症

多裂筋の機能低下が姿勢の悪化と症状進行に関連。

④ 椎間板ヘルニア

多裂筋の機能低下が椎間板への負担を増加させる要因。

⑤ 脊柱側弯症

多裂筋の左右非対称が側弯の進行に関与することがあります。

代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

多裂筋を効果的に鍛えるポイント

① バードドッグ(最重要種目)
四つ這いで対角の手足を伸ばす。多裂筋を最も効率的に活性化する種目。左右各10回×3セット

② デッドバグ
仰向けで対角の手足を動かしながら腰を浮かさない。多裂筋+腹横筋の協調を強化。

③ サイドプランク
横向きに肘で身体を支える。多裂筋+腰方形筋+腹斜筋を同時強化。

④ プランク
肘とつま先で身体を支える。多裂筋を含む全身体幹を強化。

⑤ ピラティスのフラットバック
仰向けで腰を床に押し付けながら、深層筋を意識的に活性化。

頻度の目安
毎日でもOK。深層筋なので持久力系のトレーニングが効果的。正しいフォーム+意識が重要です。

多裂筋のストレッチ・セルフケア

①体幹の回旋ストレッチ

仰向けで両膝を曲げ、両膝をゆっくり左右に倒す。多裂筋の回旋方向のストレッチ。

②チャイルドポーズ(ヨガ)

正座から両手を前に伸ばして上半身を倒す。多裂筋を含む腰部全体のディープストレッチ。

③猫のポーズ・牛のポーズ

四つ這いで背中を丸める→反らせるを繰り返す。多裂筋の動的ストレッチに最適。

④テニスボールでのリリース

仰向けでテニスボールを背骨の脇(多裂筋)に当て、ゆっくり圧迫。深層への直接アプローチ。

⑤温める

蒸しタオルやお風呂で腰背部を温めると緊張緩和に。

よくある質問(FAQ)

Q1. 多裂筋はどこにある?
脊柱起立筋よりさらに深層にあり、棘突起のすぐ両側に位置します。背骨を直接安定させる最深層の筋。

Q2. なぜ多裂筋が「腰痛の鍵」と言われる?
慢性腰痛患者で萎縮・脂肪浸潤が顕著に見られ、動作の先行収縮の遅れが観察されるため。現代医学で最も注目される腰痛関連筋。

Q3. 多裂筋を鍛えるベストな方法は?
バードドッグが最も効率的。腹横筋との連動を意識したピラティス系のトレーニングもおすすめ。

Q4. 慢性腰痛が改善しない原因は?
多裂筋の機能低下+脂肪浸潤の可能性。専門の理学療法士による多裂筋+腹横筋の再教育が必要なケースも。

Q5. インナーユニットとは?
多裂筋・腹横筋・横隔膜・骨盤底筋の4筋による天然のコルセット。腰椎を360度から守る最強の深層筋ユニットです。

Q6. ピラティスは多裂筋に効果ある?
非常に効果的。ピラティスはもともと多裂筋+腹横筋を中心とした深層筋トレーニングとして開発されたメソッドです。

まとめ

多裂筋について解説してきた内容を整理します。

仙骨・腰椎・胸椎・頸椎から起こり、各起始部から2〜4椎骨上の棘突起に停止
・脊柱起立筋の深層に位置
椎骨同士を縫い合わせる細い筋
・主作用は椎骨の安定化+伸展+側屈+回旋
・支配神経は脊髄神経後枝
下位腰椎で最も発達
慢性腰痛の鍵として現代医学で最注目
腹横筋・横隔膜・骨盤底筋とインナーユニット形成
バードドッグでの強化が効果的
・ピラティスの中核ターゲット

多裂筋は腰椎の安定を支える最重要のインナーマッスルです。慢性腰痛にお悩みの方、姿勢を改善したい方、スポーツのパフォーマンスを上げたい方は、バードドッグ+ピラティス系のエクササイズで多裂筋を活性化していきましょう。

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その他の腹部・腰部の筋肉
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暗記チェック

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参考文献・出典

・Wikipedia「多裂筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/多裂筋

・看護roo!「多裂筋」https://www.kango-roo.com/word/20106

・日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン」https://www.joa.or.jp/

・厚生労働省 e-ヘルスネット「腰痛」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

・rehatora.net「多裂筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/

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