表情筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
表情筋(ひょうじょうきん)とは別名、顔面筋と呼び、その名称どおり顔の豊かな表情を作り出す筋肉です。表情筋は頭蓋骨の表面や筋膜から起始し、皮下の結合組織内を走行して皮膚に停止するという、他の骨格筋とは異なる特殊な構造を持っています。
この記事では、表情筋の解剖学的な役割と特徴、主要な9つの筋肉の働き、顔面神経による支配の仕組み、そして顔のたるみやほうれい線の予防に役立つ表情筋エクササイズまで、トレーニングと解剖学の両面から徹底解説します。
英語名称
mimic muscles(ミミック・マッスルズ)
なお、英語では「facial muscles(フェイシャル・マッスルズ)」とも呼ばれます。
表情筋の解説
頭部の筋肉は、下顎を動かす咀嚼筋(そしゃくきん)と、顔の表情を作り出す表情筋に大別されます。
表情筋(ひょうじょうきん)はまたの名を顔面筋(がんめんきん)と呼ばれ、その名称どおり、顔の豊かな表情を作り出す筋肉です。
表情筋は頭蓋骨の表面や筋膜から起始し、皮下の結合組織内を走行して皮膚に停止します。表情筋は他の骨格筋とは異なり、骨と骨をつなぐ筋ではないため、皮筋(ひきん)に分類されます。皮膚に直接停止しているからこそ、収縮することで皮膚を動かし、豊かな表情を作り出せるのです。
表情筋はすべて顔面神経に支配されており、ヒトでは30種類以上が存在すると言われています。喜び、悲しみ、怒り、驚きといった感情表現は、これらの筋を巧みに連動させることで生まれます。
例え話で言うと、表情筋は顔という舞台の上で動く役者たちのようなものです。役者一人ひとり(個々の筋肉)が指揮者(顔面神経)の合図に合わせて演技することで、無数の表情が生まれるのです。
表情筋の主な働き
表情筋には30種類以上ありますが、ここでは特に重要な9つの筋肉について解説します。
- 眼輪筋(がんりんきん)
眼の周りを取り囲むようについている筋肉で、主に瞬きや、目を閉じるといった動作に作用します。眼輪筋が衰えると上まぶたが下がる、目の下のたるみができるといった現象が起きやすくなります。 - 上唇挙筋(じょうしんきょきん)
眼の下を走行するやや深層の筋肉で、主に上唇を引き上げる動作に作用します。
- 上唇鼻翼挙筋(じょうしんびよくきょきん)
鼻の両脇から鼻筋にかけて沿うように走行している筋肉で、主に上唇と鼻翼を引き上げる動作に作用します。鼻の付け根から口元にかけて伸びるため、ほうれい線とも関係の深い筋肉です。
- 口輪筋(こうりんきん)
口の周りを取り囲むようについている筋肉で、主に唇の動きに関与し、口を閉じる動作にも作用します。発音や食事、表情に幅広く関わる重要な筋肉です。
- 下唇下制筋(かしんかせいきん)
下唇の下にある筋肉で、主に下唇を外側及び下方に引き下げる動作に作用します。
- 頬筋(きょうきん)
頬のやや深層にある筋肉で、口角を外側へ引く動作に作用します。食事の際に食物を歯の間に保つ働きもあり、別名「ラッパ筋」とも呼ばれます。
- 小頬骨筋(しょうきょうこつきん)
鼻の両脇から鼻筋にかけて走行している筋肉で、主に上唇を引き上げる動作に作用します。 - 大頬骨筋(だいきょうこつきん)
頬を斜めに走行する筋肉で、主に口角を上方及び外側へ引き上げる動作に作用し、笑筋と共に笑顔を作り出す筋肉でもあります。「スマイルマッスル」とも呼ばれ、ここを鍛えると自然な笑顔が作りやすくなります。 - 笑筋(しょうきん)
頬から口角に伸びる筋肉で、主に口角を側方及び外側へ引く動作に作用し、また、名称どおり笑顔を作り出す筋肉でもあります。
このほか、額の前頭筋(驚きの表情)、眉間の皺眉筋(しゅうびきん)(怒りの表情)、顎のオトガイ筋(梅干しジワを作る筋肉)など、多数の表情筋が連動して様々な顔の表情を生み出しています。
表情筋を支配する神経
顔面神経
表情筋はすべて顔面神経(第Ⅶ脳神経)によって支配されています。顔面神経は脳幹から出て、耳の後ろを通り、顔面に広がって5つの主要な枝(側頭枝・頬骨枝・頬筋枝・下顎縁枝・頸枝)に分かれ、それぞれが対応する表情筋を支配しています。
なお、顔面神経が麻痺すると、まばたきができない、口角が下がる、唾液がこぼれるなどの症状が出る「顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)」を引き起こします。代表的なものにベル麻痺やハント症候群があります。
日常生活動作
日常の顔面の動作全てに関与します。
具体的には次のような場面で表情筋が活躍しています。
・笑う、泣く、怒る、驚くなどの感情表現
・食事中の咀嚼・嚥下を補助する動作(頬筋)
・会話における発音(口輪筋、頬筋など)
・まばたき、目を閉じる動作(眼輪筋)
・口を閉じて唾液をこぼさない動作(口輪筋)
表情筋を意識的に動かさない生活が続くと、筋力が低下し、顔のたるみ・ほうれい線・二重あごの原因になることもあります。
表情筋を鍛えるエクササイズ
表情筋は皮膚に直接停止する皮筋なので、鍛えると顔のリフトアップ効果が期待できます。ここでは簡単に取り入れられる4つの代表的なエクササイズを紹介します。
①「あいうえお」エクササイズ(口輪筋・頬筋・口角周辺)
口を大きく開いて「あ・い・う・え・お」と発音します。それぞれの音で口の形を限界まで大きく作るのがポイントです。
・「あ」:口を縦に大きく開く
・「い」:口角を真横に思いっきり引く
・「う」:唇をすぼめて前に突き出す
・「え」:口角を斜め上に引く
・「お」:唇を縦に楕円に開く
1日10セット程度を目安に行いましょう。口周りの筋肉を全体的に動かせる定番のエクササイズです。
②舌回しエクササイズ(口輪筋・頬筋)
口を閉じた状態で、舌の先端を歯と唇の間に入れ、ぐるりと一周させます。右回り20回、左回り20回が目安です。ほうれい線の予防に効果が期待できると言われています。
③ウィンクエクササイズ(眼輪筋)
左右の目を交互にぎゅっと閉じる動作を繰り返します。普段使わない眼輪筋を意識的に動かすことで、目元のたるみ予防につながります。左右10回ずつを目安に。
④スマイルキープ(大頬骨筋・笑筋)
口角を最大限に引き上げて、満面の笑顔を10秒キープします。鏡を見ながら左右対称になるよう意識すると効果的です。1日3〜5セット行いましょう。
注意点:強くやりすぎると逆にシワの原因になることもあります。鏡を見ながら正しいフォームで、無理のない範囲で続けることが大切です。
表情筋を鍛えるメリット
表情筋を意識的に鍛えることで、次のような効果が期待できます。
・顔のリフトアップ(たるみ予防・改善)
・ほうれい線の予防
・二重あごの解消
・口角アップによる若々しい印象
・笑顔の自然な定着
・滑舌の改善
・顔のむくみ軽減
特に長時間のデスクワーク、マスク生活、スマホ操作などで無表情の時間が長い現代人は、表情筋が衰えやすい環境にあります。1日数分でも意識的に動かす習慣をつけたいところです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 表情筋は何種類あるのですか?
ヒトの表情筋は30種類以上あると言われています(数え方により諸説あり)。それらすべてが顔面神経によって支配されています。
Q2. 表情筋エクササイズはどれくらいで効果が出ますか?
個人差がありますが、毎日続けて2週間〜1か月程度で変化を感じる方が多いようです。筋肉は使わないと衰えるため、継続が何より大切です。
Q3. 表情筋を鍛えすぎるとシワが増えるって本当?
やり方を間違えると、過度なシワ寄せ動作が皮膚にダメージを与え、かえってシワが定着することがあります。鏡を見ながら正しいフォームで、適度な強さで行うことが重要です。
Q4. 表情筋と咀嚼筋の違いは?
表情筋は皮膚に停止する皮筋で、顔面神経が支配し、表情を作る役割。咀嚼筋(咬筋・側頭筋など)は下顎骨を動かす骨格筋で、三叉神経が支配し、噛む動作を担います。役割も神経支配も異なります。
Q5. 顔面神経麻痺になったらどうすればいい?
突然の顔の片側のゆがみ、まぶたが閉じない、口角が下がるなどの症状が出たら、できるだけ早く耳鼻咽喉科や脳神経内科を受診してください。発症から72時間以内の治療開始が、回復率に大きく影響すると言われています。
まとめ
表情筋について解説してきた内容を整理します。
・表情筋は顔面筋・皮筋の別名でも知られ、皮膚に停止する特殊な筋肉
・30種類以上の筋肉が、すべて顔面神経に支配されている
・主要な筋肉は眼輪筋・口輪筋・頬筋・大頬骨筋・笑筋など
・表情筋を動かすことでたるみ・ほうれい線・二重あごの予防に効果
・「あいうえお」体操・舌回し・ウィンク・スマイルキープなどが効果的
・鍛えすぎはシワの原因にもなるので、適度な強さで継続することが重要
表情筋は使えば若々しさを保ち、使わなければ衰える筋肉です。1日数分の意識的な動きが、将来の表情と印象を大きく変えていきます。
【舌骨下筋群・ 側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋・椎前筋群・後頭下筋群・胸鎖乳突筋・斜角筋群(前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋)・頭板状筋・頸板状筋】
参考文献・出典
・看護roo!「表情筋」https://www.kango-roo.com/
・rehatora.net「顔面筋(表情筋)の解剖と働きまとめ」https://rehatora.net/
・forPT ONLINE「表情筋および咀嚼筋の起始停止・作用・支配神経」https://forphysicaltherapist.com/10511/
・獨協医科大学 解剖学(マクロ)「顔面筋・咀嚼筋・頚筋」https://dept.dokkyomed.ac.jp/dep-m/macro/etc/locomo/20bm13.pdf




