頸板状筋とは|起始停止・神経支配と首こり・むちうち・後頭部痛の関係

頸板状筋

頸板状筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

頸板状筋(けいばんじょうきん)とは頭板状筋(とうばんじょうきん)の深層を走行する筋肉です。頸板状筋は主に首を反らす働きがあり、横に曲げる作用もあります。

頸板状筋は後頭部から首にかけての深層部に位置する細長い筋肉で、頭板状筋とペアで「板状筋群」を構成しています。長時間のデスクワーク、スマホ姿勢、むちうち損傷などで負担を受けやすく、現代人の首こり・後頭部痛・トリガーポイント由来の頭痛と関わる筋として注目されています。

この記事では、頸板状筋の起始停止、神経支配、頚部運動における役割、関連する疾患、セルフケアまで、解剖学的根拠とともに解説します。

英語名称

splenius cervicis muscle(スプリニアス・サーブィシィス・マッスル)

「splenius」はギリシャ語の「splenion(包帯・添え木)」、「cervicis」は「頸部の」を意味します。

頸板状筋の解説

頸板状筋は頭板状筋(とうばんじょうきん)のやや前方(深層)を走行し、頭頸部の後面にあり、首の後側面で筋腹に触れることができる筋肉です。

頸板状筋は後頭部に付着している筋肉のうち比較的深層にある筋肉で、頭板状筋とともに首を後ろに反らしたり、首を真横に倒したり、首を左右に捻るといった複合動作に関与しています。

また、頸板状筋はこれらの運動動作以外にも頭部をしっかりと安定させる働きに作用します。

例え話で言うと、頸板状筋は「首の屋台骨を支える深層の補強材」のような存在です。表層の頭板状筋が大きな動きを担うのに対し、頸板状筋はその下で頚椎の細かい位置調整と安定化を担っています。

なお、頭板状筋が「乳様突起・後頭骨」(頭部)に停止するのに対し、頸板状筋は「上位頚椎の横突起」に停止する点が大きな違いです。つまり頸板状筋は頭ではなく頚椎を直接動かす筋として作用します。

起始

第3(または4)〜第5(または6)胸椎の棘突起

停止

第1〜第2(または3)頸椎の横突起の後結節

頸板状筋の主な働き

頸板状筋の作用:頚部の伸展 頸板状筋の作用:頚部の側屈 頸板状筋の作用:頚部の回旋

運動動作においては頭板状筋とともに頸部の伸展・側屈・回旋に関与しています。

両側が同時に収縮:頚部の伸展(首を後ろに反らす)
片側だけが収縮:同側への側屈と同側への回旋(首を傾けて同じ方向を向く)

胸鎖乳突筋の回旋作用が反対側であるのに対し、頸板状筋・頭板状筋の回旋作用は同側である点が重要な違いです。

頸板状筋を支配する神経

脊髄神経の後枝(C1〜C5)

下位頚神経の後枝の外側枝によって支配されています。

日常生活動作

頭部を後ろに反らしたり、真横に倒したり、左右に捻るといった動作に関与しています。また、頭部を安定させるためにもとても重要な役割を果たしています。

具体的には:

上を見上げる動作
後ろを振り向く動作
長時間のデスクワーク中の頭部姿勢の維持
読書・スマホ操作時の頭部の支持
歩行・運動中の頭部の安定化

頭が前に出る姿勢(前方頭位)が続くと、頸板状筋が常に伸長・過緊張状態となり、慢性的な首こり・後頭部痛の原因になります。

スポーツ動作

頭部や上体を固定させるあらゆるスポーツ動作に貢献しています。特に格闘技、ラグビー、アメフトなどのコンタクトスポーツや、体操、ダイビングなど頭部の位置調整が重要な競技で活躍します。

関連する疾患

頚髄損傷、むちうち、頚部の痛み

① むちうち損傷(外傷性頚部症候群)

交通事故などで頚部が急激に前後に振られると、頸板状筋を含む頚部後面の筋群が損傷します。首の痛み・頭痛・めまい・吐き気が遅れて出るのが特徴です。

② 緊張型頭痛・後頭部痛

頸板状筋の過緊張は、後頭部の鈍い締め付け感や緊張型頭痛の原因になります。

③ ストレートネック・スマホ首

頭が前に出た姿勢が続くと、頸板状筋が常に伸長状態で疲労し、慢性的な首こりの原因に。

④ トリガーポイントによる関連痛

頸板状筋にトリガーポイントができると、眼球の奥への放散痛や首の付け根の痛みとして現れることが知られています。

頸板状筋のセルフケア

①頸板状筋ストレッチ

椅子に座って背筋を伸ばし、両手を頭の後ろで組みます。あごを胸に近づけるようにゆっくり頭を前に倒し、後頭部から首の付け根を伸ばします。15〜30秒キープ。

②斜め前へのストレッチ

頭を斜め前(45度方向)に倒し、首の後ろの斜め走行する繊維をストレッチします。左右行います。

③チンタック(あご引き)

あごを後ろに引いて二重あごを作る姿勢を5〜10秒キープ。ストレートネック予防と頸板状筋のリラックスに有効です。

④温める

蒸しタオルで後頭部・首の付け根を温めると、頸板状筋の緊張がほぐれます。

注意点:強い首の痛み・しびれ・めまいを伴う場合は自己判断せず、整形外科・脳神経内科を受診してください。むちうち損傷の疑いがある場合は、症状が軽くてもまず医療機関で診てもらうことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 頸板状筋と頭板状筋の違いは?
両者は同じ「板状筋」のグループで似た作用を持ちます。頭板状筋は乳様突起・後頭骨に停止し、頭部を動かします。頸板状筋は上位頚椎の横突起に停止し、頚椎を動かします。

Q2. 頸板状筋が硬いとどんな症状が出ますか?
首こり・後頭部痛・緊張型頭痛・眼球奥への放散痛などの原因になります。

Q3. なぜ「板状筋」と呼ばれるの?
英語名「splenius」がギリシャ語の「splenion(包帯・添え木)」に由来し、首の後ろを包帯のように覆う形から名付けられました。

Q4. むちうちで頸板状筋が損傷した場合の回復は?
個人差がありますが、軽症なら数週間〜数ヶ月で改善します。早期の医療機関受診と適切な安静、その後のリハビリが大切です。

Q5. ストレッチで気をつけることは?
急激に首を倒したり回したりするのは避け、ゆっくり・呼吸を止めずに行ってください。痛みやしびれが出たらすぐ中止しましょう。

まとめ

頸板状筋について解説してきた内容を整理します。

T3〜T5の棘突起から起こり、C1〜C2の横突起後結節に停止
・頭板状筋の深層にある細長い筋
・主な作用は頚部の伸展・側屈・回旋(同側)
・支配神経は脊髄神経後枝(C1〜C5)
・頭板状筋と連携して頚部を安定化
むちうち・緊張型頭痛・首こり・ストレートネックと深く関わる
・チンタックとストレッチが基本ケア

頸板状筋は目立たない深層筋ですが、頚椎の安定と動きを支える重要な筋です。デスクワーク・スマホで首こりや後頭部痛にお悩みの方は、姿勢の見直しと優しいストレッチを習慣にしましょう。

その他の頭部・頚部の筋肉

表情筋舌骨下筋群・​ 側頭筋・​咬筋・​内側翼突筋外側翼突筋椎前筋群後頭下筋群胸鎖乳突筋斜角筋群(前斜角筋中斜角筋後斜角筋)・頭板状筋

参考文献・出典

・Wikipedia「頸板状筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/頸板状筋

・rehatora.net「頸板状筋の解剖と機能・触診・ストレッチ」https://rehatora.net/

・ビタカイン製薬「頸板状筋のトリガーポイント」https://triggerpoint-net.vitacain.co.jp/

・筋肉研究所「頸板状筋」https://www.kinken.org/k10570.html

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