内閉鎖筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
内閉鎖筋(ないへいさきん)とは股関節の外旋動作に関わる深層外旋六筋の中では最も強力な筋肉です。英語では「obturator internus muscle」と呼ばれます。
内閉鎖筋は上双子筋と下双子筋の間を走行します。骨盤の内側面から起こり、小坐骨孔を貫通して大腿骨に停止する、極めて独特な走行を持つ筋肉です。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・内閉鎖筋の正しい起始停止・作用は?
・なぜ深層外旋六筋で最強?
・骨盤底筋とどう関係する?
・上双子筋・下双子筋とどう協働する?
例え話で言うと、内閉鎖筋は「骨盤の内側から外へ滑車のように方向転換する筋」のような存在です。骨盤の内壁から起こり、小坐骨孔で90度近く方向を変えて外側の大腿骨に達する、人体でも特殊な走行を持ちます。
英語名称
obturator internus muscle(オブチュレイター・インターナス・マッスル)
「obturator(閉鎖する)」+「internus(内側の)」で構成された名称。閉鎖孔の内側にあることから命名されました。
内閉鎖筋の解説
内閉鎖筋(ないへいさきん)は大臀筋の更に深層部にある筋肉です。
内閉鎖筋は閉鎖孔周りの寛骨内面及び閉鎖膜から起始し、上双子筋と下双子筋の間を走行し、小坐骨孔を貫通し、骨盤の後面から大腿骨の大転子の転子窩に停止する筋肉です。
内閉鎖筋は他の『深層外旋六筋』とともに主に股関節の外旋動作に貢献する筋肉です。
深層外旋六筋とは内閉鎖筋をはじめ、梨状筋・外閉鎖筋・大腿方形筋・上双子筋・下双子筋の総称で、主に股関節を外旋させることに大きく関わりがある筋肉群なのでしばしばそう呼ばれることがあります。
深層外旋六筋は肩関節でいうところの回旋筋腱板(ローテーターカフ)と同じように、腸骨大腿靭帯などと協力して骨頭を安定させる働きを持つ筋肉でもあります。
内閉鎖筋は深層外旋六筋の中では大腿方形筋と並びとても力の強い筋肉です。
背臥位になりパートナーに股関節の内旋と少しの屈曲を加えることで効率良く筋肉をストレッチすることができます。
内閉鎖筋の独特な走行|小坐骨孔での90度方向転換
内閉鎖筋を理解する上で最重要なのがその独特な走行です:
3段階の走行:
① 骨盤内側面で起始
・閉鎖孔の周囲・閉鎖膜から起こる
・骨盤の内側に位置
・骨盤内臓の側壁を形成
② 小坐骨孔を貫通して方向転換
・骨盤の外側に出る
・小坐骨切痕(坐骨小切痕)が滑車の役割
・約90度の方向転換を行う
・他の筋に類を見ない特殊な走行
③ 大腿骨大転子に停止
・大転子の転子窩
・上双子筋と下双子筋に挟まれた状態
・「三層サンドイッチ」のような構造
この走行のメリット:
・強力な外旋力を発揮
・滑車効果でてこの力が増幅
・骨盤内の臓器と外側の筋を同時に支える
・大腿方形筋に並ぶ最強の外旋力
この独特な構造により、内閉鎖筋は大腿方形筋と並んで深層外旋六筋の中で最強の外旋筋として機能できるのです。
内閉鎖筋と骨盤底筋|骨盤底の側壁を形成
内閉鎖筋を語る上で外せないのが骨盤底との関係です。
骨盤底の3層構造:
・骨盤隔膜(肛門挙筋・尾骨筋):上層
・尿生殖隔膜(深会陰横筋・浅会陰横筋):中層
・外層(外性器筋など):下層
内閉鎖筋の役割:
内閉鎖筋は骨盤底の「側壁」を形成します。骨盤底の上層(骨盤隔膜)の肛門挙筋が内閉鎖筋の腱弓から起始するため、両者は機能的に密接に連携します。
機能的な連動:
・内閉鎖筋の柔軟性=骨盤底の機能性
・内閉鎖筋の過緊張→骨盤底筋の機能低下
・排尿・排便機能への影響
・性機能への影響
女性医療での重要性:
近年、「内閉鎖筋リリース」は産後ケア・骨盤底筋リハビリで重要なアプローチとして注目されています。
こんな症状がある方は内閉鎖筋を疑う:
・骨盤痛
・排尿時の違和感
・性交痛
・慢性的なお尻の奥の痛み
・座位での不快感
これらの症状には骨盤底筋+内閉鎖筋の総合的なアプローチが効果的です。
内閉鎖筋・上双子筋・下双子筋の3つ組構造
内閉鎖筋は上双子筋・下双子筋と一緒に独特な構造を作ります:
解剖学的構造:
・上双子筋:内閉鎖筋の上方を覆う
・内閉鎖筋:中央(メイン)
・下双子筋:内閉鎖筋の下方を覆う
「三筋合体」とも呼ばれる:
3筋の停止部分の腱が合流して一つの腱として大腿骨に停止する解剖学的特徴を持ちます。実質的には1つの機能ユニットとして働きます。
機能的な意義:
・強力な外旋力
・大腿骨頭の安定
・協調的な動作
・骨盤の細かな調整
上双子筋・下双子筋は内閉鎖筋の補助として機能する小さな筋なので、内閉鎖筋の機能と密接に連動します。
起始
閉鎖孔(へいさこう)周りの寛骨(かんこつ)内面及び閉鎖膜
骨盤の内側面・閉鎖孔を覆う膜から起こります。骨盤の内側から起こる珍しい筋。
停止
大腿骨の大転子の転子窩(てんしか)
大腿骨大転子の内側のくぼみ(転子窩)に停止します。
内閉鎖筋の主な働き

主な役割:
・股関節の外旋(主作用、最強クラス)
・大腿骨頭の関節窩への固定(骨頭安定)
・骨盤底の側壁形成
・骨盤内臓器の支え
・歩行時の方向転換
内閉鎖筋を支配する神経
仙骨神経叢の分枝(L5〜S1)
仙骨神経叢から直接出る内閉鎖筋神経の支配を受けます。
日常生活動作
歩行時に方向を転換したり、立位など股関節を安定させる全ての日常生活動作に関与します。
具体的には:
・歩行(方向転換)
・立位の保持
・あぐら・正座
・椅子から立ち上がる動作
・骨盤の安定
無意識のうちに常に働き続ける筋。
スポーツ動作
体の向きを変える際の軸足の動きに大きく貢献します。
特に重要なスポーツ:
・野球(投球・バッティング)
・ゴルフ(スイング)
・テニス・バドミントン
・サッカー(方向転換)
・武道・格闘技(軸足の安定)
軸足の外旋パワーが必要なスポーツで活躍。
関連する疾患
梨状筋症候群、変形性股関節症、大腿骨頸部骨折
① 慢性骨盤痛症候群
内閉鎖筋のトリガーポイントが原因となるお尻の奥の痛み。座位で悪化する特徴があります。
② 変形性股関節症
深層外旋六筋全体の機能不全が症状進行に関与。
③ 大腿骨頸部骨折
高齢者の代表的骨折。リハビリで内閉鎖筋の機能維持が重要。
④ 内閉鎖筋症候群
内閉鎖筋の過緊張による骨盤痛・性交痛など。女性に多い症状。
⑤ 仙腸関節障害
骨盤の安定機能の障害。内閉鎖筋の機能と関連。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ
内閉鎖筋を効果的に鍛えるトレーニング
① クラムシェル(基本)
横向きで膝を曲げ、上の膝を開く動作。左右各20回×3セット。内閉鎖筋を含む深層外旋六筋を活性化。
② ヒップエクスターナルローテーション
座位で膝を曲げ、足首を外側に倒す動作。内閉鎖筋の純粋な外旋トレーニング。
③ バックキック
四つ這いで片脚を後ろに蹴り上げる動作。大臀筋+内閉鎖筋を同時強化。
④ シングルレッグ・スクワット
片脚スクワット。深層外旋六筋の機能的な使い方を強化。
⑤ ケーゲル体操との併用
骨盤底筋トレーニングと併せて行うと、内閉鎖筋+骨盤底筋の機能向上が期待できます。
頻度の目安:
週2〜3回。骨盤痛・座位での不快感のある方は毎日のストレッチがおすすめ。
内閉鎖筋のストレッチ・セルフケア
①基本ストレッチ(フィギュア4)
仰向けで片脚を反対側の膝にかけ、もう一方を引き寄せる。30秒×3回×左右。
②鳩のポーズ(ヨガ)
座位で片脚を前に折る。深層外旋六筋+内閉鎖筋のディープストレッチ。
③座位での足首乗せストレッチ
椅子に座って片足を反対の膝に乗せ、ゆっくり前傾。デスクワーク中の手軽なケア。
④テニスボールでのリリース
仰向けでテニスボールをお尻の深部に当て、ゆっくり圧迫。30秒〜1分。
⑤温める
蒸しタオルやお風呂でお尻〜骨盤を温めると緊張緩和に。
よくある質問(FAQ)
Q1. 内閉鎖筋と外閉鎖筋の違いは?
内閉鎖筋は骨盤の内側から起こり、小坐骨孔を貫通して大腿骨に停止。外閉鎖筋は骨盤の外側から起こります。深層外旋六筋で唯一の外側起始は外閉鎖筋。
Q2. 内閉鎖筋はなぜ深層外旋六筋で最強?
小坐骨孔での90度方向転換による滑車効果でてこの力が増幅されるためです。大腿方形筋と並ぶ最強の外旋筋。
Q3. 骨盤底筋とどう関連する?
内閉鎖筋は骨盤底の側壁を形成。肛門挙筋が内閉鎖筋の腱弓から起始するため、両者は機能的に密接に連動します。
Q4. 座位でお尻の奥が痛い原因は?
内閉鎖筋のトリガーポイント・過緊張の可能性。慢性骨盤痛症候群の一因として最近注目されています。
Q5. 内閉鎖筋を緩めるストレッチは?
フィギュア4ストレッチ+鳩のポーズが基本。深部の筋なので30秒以上ゆっくり伸ばすのがコツ。
Q6. 産後の骨盤底トラブルに内閉鎖筋ケアは有効?
はい、注目されているアプローチ。骨盤底筋トレーニング+内閉鎖筋リリースの組み合わせが効果的とされます。
まとめ
内閉鎖筋について解説してきた内容を整理します。
・閉鎖孔周りの寛骨内面・閉鎖膜から起こり、大腿骨大転子の転子窩に停止
・骨盤の内側面から起こる珍しい筋
・小坐骨孔を貫通して方向転換
・主作用は股関節の外旋+骨頭安定
・支配神経は仙骨神経叢の分枝(L5〜S1)
・大腿方形筋と並んで深層外旋六筋最強
・骨盤底の側壁を形成
・上双子筋・下双子筋と3つ組構造
・骨盤痛・性交痛・座位の不快感に関わる
内閉鎖筋は普段意識されない深層筋ですが、股関節の安定だけでなく骨盤底機能にも深く関わる重要な筋です。お尻の奥の痛み・骨盤痛にお悩みの方は、内閉鎖筋へのアプローチを検討してみましょう。
その他の臀部の筋肉
【大臀筋・中臀筋・小臀筋・深層外旋六筋(梨状筋・外閉鎖筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋)】
参考文献・出典
・Wikipedia「内閉鎖筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/内閉鎖筋
・看護roo!「内閉鎖筋」https://www.kango-roo.com/word/20115
・日本整形外科学会「変形性股関節症診療ガイドライン」https://www.joa.or.jp/
・厚生労働省 e-ヘルスネット「骨盤底筋」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・rehatora.net「内閉鎖筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/






