胸腸肋筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
胸腸肋筋(きょうちょうろくきん)とは脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)を構成している腸肋筋群(ちょうろくきんぐん)の中部に位置する筋肉です。英語では「iliocostalis thoracis muscle」と呼ばれます。
胸腸肋筋は主に胸椎を反らす働きがあり、体幹を側屈させる作用もあります。脊柱起立筋の最も外側の列を構成し、肋骨同士を縦につなぐことで胸郭の安定と呼吸機能にも関わる筋肉です。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・胸腸肋筋の正しい起始停止・作用は?
・腸肋筋群の他の筋肉との違いは?
・胸椎の伸展でなぜ重要?
・円背改善に効果はある?
例え話で言うと、胸腸肋筋は「肋骨同士をつなぐ縦の補強ロープ」のような存在です。下部の肋骨から上部の肋骨へと縦に走り、胸郭の構造を支えると同時に胸椎を伸展させる役割を担っています。
英語名称
iliocostalis thoracis muscle(イリオコスタリス・ソラシィス・マッスル)
「iliocostalis(腸骨と肋骨の)」+「thoracis(胸の)」で構成された名称。
胸腸肋筋の解説
胸腸肋筋(きょうちょうろくきん)は脊柱起立筋を構成している腸肋筋群の中部に位置する筋肉です。脊柱起立筋の3列構造(棘筋・最長筋・腸肋筋)のうち、最も外側の列に当たります。
胸腸肋筋は第7〜12肋骨から起始し、第1〜6肋骨へと停止しています。下部の肋骨から上部の肋骨へと縦に走るのが特徴です。
胸腸肋筋は主に胸椎を反らす働き(体幹の伸展動作)があり、体幹を側屈させる作用もあります。脊柱起立筋全体としての姿勢保持機能の一翼を担う重要な筋です。
腸肋筋群の3部位|頸・胸・腰の区分
腸肋筋群は脊柱沿いの位置によって3つに分類されます:
頸腸肋筋(けいちょうろくきん)
・頸部を支える
・起始:第3〜6肋骨
・停止:第4〜6頸椎の横突起
胸腸肋筋(きょうちょうろくきん)
・胸郭の中部を支える
・起始:第7〜12肋骨
・停止:第1〜6肋骨
腰腸肋筋(ようちょうろくきん)
・腰部・胸郭の下部を支える
・起始:仙骨・腸骨稜
・停止:第6〜12肋骨
3つの筋は連続的に位置し、頸部から腰部まで脊柱全体の側方を支える長い「筋の柱」を形成しています。
機能的特徴:
・どの腸肋筋も同側への側屈・体幹伸展に作用
・呼気時に肋骨を下げる作用もある
・呼吸補助筋としての役割
胸椎の伸展と呼吸補助|胸腸肋筋の機能的重要性
胸腸肋筋を語る上で重要なのが「胸椎の伸展」と「呼吸補助」です。
胸椎の伸展と姿勢
胸椎は本来、軽く後弯(後ろに膨らむカーブ)している部位ですが、現代社会で問題なのが「胸椎の過度な後弯(円背)」です。
円背(背中の丸まり)の原因:
・長時間のデスクワーク
・スマホの長時間使用
・胸腸肋筋を含む脊柱起立筋の弱化
・胸郭可動性の低下
胸腸肋筋の役割:
胸腸肋筋が機能すると、胸椎を伸展させて胸を開く姿勢を作れます。逆に弱化すると胸椎の後弯が進み、円背が進行します。
呼吸補助筋としての胸腸肋筋:
胸腸肋筋は肋骨同士をつなぐため、胸郭の動きにも関与します:
・深呼吸時の胸郭の拡張
・強い呼気時の肋骨の引き下げ
・姿勢と呼吸機能の連動
円背の人は呼吸が浅くなりがちですが、これは胸郭の動きが制限されるためです。胸腸肋筋を含む脊柱起立筋を鍛えることで、姿勢改善+呼吸機能向上の両方が期待できます。
円背・猫背改善と胸腸肋筋
円背改善のために胸腸肋筋を含む脊柱起立筋の強化は重要です。
効果的なアプローチ:
① バックエクステンション
うつ伏せから上半身を反らせる動作で胸腸肋筋を直接刺激。
② スーパーマンエクササイズ
両手両足を同時に持ち上げる。胸腸肋筋+臀筋を同時強化。
③ 胸郭ストレッチ
胸を開く動作で胸郭の柔軟性を確保。
④ 姿勢の意識
日常生活で「胸を張る」意識を持つ。
円背は遺伝的要因+生活習慣+筋力低下の組み合わせで進行します。胸腸肋筋トレーニング+姿勢改善で美しい姿勢を取り戻しましょう。
起始
第7〜12肋骨
胸郭の下部の肋骨から起こります。
停止
第1〜6肋骨
胸郭の上部の肋骨に停止します。肋骨から肋骨に走るのが特徴です。
胸腸肋筋の主な働き

運動動作においては体幹部の伸展(後屈)・側屈させる作用があります。
主な役割:
・胸椎の伸展(主作用、後屈)
・体幹の同側側屈
・胸郭の安定
・呼吸補助(肋骨を引き下げる)
・姿勢の保持
胸腸肋筋を支配する神経
脊髄神経の後枝(C4〜L3)
頸髄から腰髄までの広範囲の脊髄神経後枝に支配されます。
日常生活動作
姿勢保持だけでなく、かがんだ姿勢から上体を起こす動作に関与します。
具体的には:
・姿勢の保持
・かがみから上体起こし
・深呼吸
・歩行(体幹の安定)
・振り返る動作
無意識のうちに常に働き続ける姿勢筋です。
スポーツ動作
あらゆるスポーツ動作に関与し、上半身を安定させる働きに大きく貢献します。
特に重要なスポーツ:
・陸上競技(走動作の体幹安定)
・水泳(特にバタフライ・背泳ぎ)
・体操・ダンス
・ゴルフ・テニス(スイングの体幹)
・ボクシング・武道
体幹の安定性と胸郭の可動性が両方とも必要なスポーツで活躍。
関連する疾患
① 慢性腰痛・背中痛
胸腸肋筋の過緊張・トリガーポイントが背中痛の原因に。デスクワーカーに多発。
② 円背・胸椎後弯症
胸腸肋筋を含む脊柱起立筋の弱化で進行する姿勢異常。
③ 筋筋膜性疼痛症候群
胸腸肋筋のトリガーポイントによる慢性的な背中痛。
④ 呼吸機能低下
胸郭の柔軟性低下で深呼吸ができなくなる症状。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

ソリネックス・リバースバックエクステンション

胸腸肋筋のスタティックストレッチ
胸腸肋筋を効果的に鍛えるポイント
① バックエクステンション(基本)
うつ伏せで上半身を反らせる動作。10〜15回×2〜3セット。胸椎の伸展を意識。
② ライイングバックアーチ
床にうつ伏せで両腕を頭の上に伸ばし、上半身と両腕を同時に持ち上げる。胸郭の伸展に効果的。
③ スーパーマンエクササイズ
両手両足を同時に持ち上げる。胸腸肋筋+臀筋を同時強化。
④ サイドベンド
体幹を側屈させる動作。胸腸肋筋の側屈機能を強化。
⑤ デッドリフト(中・上級者向け)
全身の代表的種目で胸腸肋筋にも刺激。正しいフォームが必須。
胸腸肋筋のストレッチ・セルフケア
①基本前屈ストレッチ
立位または座位で、ゆっくり前屈する。30秒×3回。胸腸肋筋全体をストレッチ。
②胸郭側屈ストレッチ
両手を頭上で組み、ゆっくり身体を左右に倒す。胸腸肋筋を側方からストレッチ。
③猫のポーズ・コブラのポーズ(ヨガ)
四つ這いや仰向けでの背中の動的ストレッチ。胸腸肋筋+脊柱全体をケア。
④胸郭の回旋ストレッチ
座位で上半身をゆっくり捻る。胸郭の可動性向上に。
⑤温める
蒸しタオルやお風呂で背中を温めると緊張緩和に。
よくある質問(FAQ)
Q1. 胸腸肋筋はどこにある?
脊柱起立筋の最も外側の列(腸肋筋)の中部。胸郭の側方に位置し、肋骨同士を縦につなぐ筋です。
Q2. 腰腸肋筋とどう違う?
胸腸肋筋は胸郭中部(第7〜12肋骨→第1〜6肋骨)、腰腸肋筋は腰部・胸郭下部(仙骨・腸骨稜→第6〜12肋骨)に位置。連続的に走行しますが、位置と機能が若干異なります。
Q3. 円背改善に胸腸肋筋を鍛えるべき?
はい、胸椎の伸展を担う重要筋なので、円背改善に効果的。バックエクステンション・スーパーマンエクササイズがおすすめ。
Q4. デスクワークで背中が痛い時は?
胸腸肋筋を含む脊柱起立筋の慢性疲労・トリガーポイントの可能性。1時間ごとの立ち上がり+ストレッチが効果的。
Q5. 呼吸と胸腸肋筋の関係は?
胸腸肋筋は呼気時に肋骨を引き下げる呼吸補助筋。また胸郭の可動性に関わるため、円背の人は呼吸が浅くなりがち。
Q6. 胸腸肋筋を鍛えるメリットは?
姿勢改善(特に円背)、呼吸機能向上、慢性背中痛の予防、スポーツでの体幹安定。
まとめ
胸腸肋筋について解説してきた内容を整理します。
・第7〜12肋骨から起こり、第1〜6肋骨に停止
・脊柱起立筋の腸肋筋群中部
・脊柱起立筋の最も外側の列
・肋骨から肋骨へ走る独特な筋
・主作用は胸椎の伸展+同側側屈
・支配神経は脊髄神経後枝(C4〜L3)
・呼吸補助筋としての役割も
・円背改善・姿勢保持に重要
・デスクワーカーの背中痛の主因
胸腸肋筋は姿勢と呼吸機能の両方に関わる重要な筋です。円背・背中痛・浅い呼吸にお悩みの方は、胸腸肋筋を含む脊柱起立筋のトレーニング+胸郭ストレッチで、美しい姿勢と深い呼吸を取り戻しましょう。
その他の腹部・腰部の筋肉
【腹直筋・腹斜筋群(外腹斜筋・内腹斜筋)・腸腰筋(腸骨筋・大腰筋・小腰筋)・腹横筋・腰方形筋・脊柱起立筋(腰腸肋筋・胸最長筋・胸棘筋・多裂筋)・横隔膜・下後鋸筋・骨盤底筋群】
参考文献・出典
・Wikipedia「腸肋筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/腸肋筋
・看護roo!「胸腸肋筋」https://www.kango-roo.com/word/20102
・日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン」https://www.joa.or.jp/
・厚生労働省 e-ヘルスネット「姿勢と健康」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・rehatora.net「胸腸肋筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/





