棘下筋とは|起始停止・神経支配と最強の外旋筋・棘下筋単独萎縮の解説

棘下筋


棘下筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

棘下筋(きょっかきん)とはローテーターカフ(回旋筋腱板)の中で唯一表層部にある筋肉で、肩関節の外旋動作に大きく作用する筋肉です。英語では「infraspinatus muscle」と呼ばれます。

また棘下筋は肩関節を後方から安定させる働きをもち、しばしばオーバーユースによる筋萎縮が起こる場所でもあります。特にバレーボールのアタッカーに見られる「棘下筋単独萎縮」は、スポーツ医学的にも有名な特殊な障害として知られています。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

棘下筋の正しい起始停止・作用は?
なぜ最強の外旋筋と呼ばれる?
棘下筋単独萎縮とは何?
効果的な鍛え方とストレッチは?

例え話で言うと、棘下筋は「肩関節後方の主力外旋エンジン」のような存在です。小円筋を補助役に従えて、肩を後ろから安定させながら腕を外側に捻る動作を主導しています。

英語名称

infraspinatus muscle(インフラスパィネィタス・マッスル)

「infra(下の)」+「spinatus(棘の)」で構成された名称で、肩甲骨の棘下窩(きょっかか)から起こることに由来します。

棘下筋の解説

棘下筋(きょっかきん)は肩関節の安定性を保つ働きを果たしている筋肉群、ローテーターカフ(ローテーターカフとは棘上筋棘下筋小円筋肩甲下筋など、肩関節の安定性を高めている筋肉群の総称です)の一つで、肩関節の外旋筋の中では最も強力な筋肉と言われています。

棘下筋はローテーターカフの中で唯一表層にある筋肉で、肩甲棘の下部(棘下窩)あたりで触診することができます。他のローテーターカフ筋(棘上筋・小円筋・肩甲下筋)は深層にあり触りにくいため、棘下筋はトリガーポイントケアやマッサージのターゲットになりやすい筋でもあります。

筋肉の一部分は三角筋と僧帽筋に覆われ、棘下窩(きょっかか)から起こり、上腕骨大結節(じょうわんこつだいけっせつ)の中間部に着きます。

運動動作においては小円筋とともに肩関節の外旋および水平伸展に関与しています。また、棘下筋は肩関節の後方の安定性にとって非常に重要な役割を果たしています。

棘下筋と棘上筋の停止部

棘下筋と棘上筋の停止部

この筋肉が弱くなると肩関節の安定性が保てなくなるので(肩関節不安定症)、上腕骨骨頭が上方や前方にずれるようになります。
肩関節が不安定になるとインピンジメント症候群を併発したり、肩甲上神経障害で筋萎縮が起こることがあります。
因みに棘下筋はローテーターカフの中で棘上筋についで2番目に損傷を受けやすい筋肉と言われています。

棘下筋単独萎縮|バレーボール選手に多い特殊な障害

バレーボールのアタッカーではしばしば棘下筋の単独萎縮が見られることがあります。スパイク動作の繰り返しで、棘下筋だけが選択的に痩せていく独特な障害です。

萎縮の主な原因は次の2つの説が最も有力視されています:

肩甲上神経の絞扼(こうやく:締めつけられるという医学用語)説:神経が圧迫されて筋萎縮を起こす
過度な内旋強制による部分断裂説:スパイク動作の反復で腱が部分的に損傷

棘下筋単独萎縮は痛みを伴わないことも多く、選手本人が気付かないうちに進行することがあります。プレー中のパフォーマンス低下や肩の違和感として現れるので、肩の左右差(特に肩甲骨後面のへこみ)に注意が必要です。

肩関節の後方不安定性が顕著な例では特に棘下筋を中心としたエクスターナル・ローテーションと呼ばれる筋トレを行うことがとても有効です。

棘下筋のストレッチは肩関節の内旋と過度な水平内転が効果的です。

棘下筋と小円筋・棘上筋の違い

似た作用を持つローテーターカフ筋を整理:

棘下筋:外旋の主役、唯一の表層筋、触診可能
小円筋:外旋の補助役、深層、棘下筋と協働
棘上筋外転の主役(作用が異なる)、深層

外旋の主役と覚えると整理しやすいでしょう。

起始

肩甲骨の棘下窩(きょっかか)

肩甲骨の後面にある大きなくぼみ(棘下窩)の広い範囲から起こります。

停止

上腕骨の大結節(だいけっせつ)中央部、肩関節包(かたかんせつほう)

棘上筋(大結節上部)の真下、小円筋(大結節下部)の真上に停止します。

棘下筋の主な働き

肩関節の外旋 肩関節の水平外転

運動動作においては肩関節外旋水平外転させる作用があります。

主な役割:

肩関節の外旋(最強の外旋筋)
水平外転の補助
肩関節後方の動的安定化
上腕骨頭を関節窩に引きつける

棘下筋を支配する神経

肩甲上神経(C5〜C6)

肩甲上神経は棘上筋と棘下筋の両方を支配します。バレーボール選手などで肩甲上神経が絞扼されると、棘下筋だけが選択的に萎縮するケースがあり、これが棘下筋単独萎縮の主因の一つです。

日常生活動作

カーテンを開けるような動き、すなわち、腕を外側に振る動作などに関与しています。

具体的には:

カーテンを開ける動作
髪を後ろに払う動作
シートベルトを引き出す動作
後ろを振り返って物を取る動作
あらゆる腕の動きでの肩後方の安定化

スポーツ動作

テニスのバックハンドの動作や、投球動作の終動時に腕にブレーキをかけることに貢献しています。

特に重要なスポーツ:
バレーボール(スパイク動作・単独萎縮のリスク)
野球(投球のフォロースルー)
テニス・バドミントン(バックハンド)
水泳(リカバリー動作)
ゴルフ(バックスイングの安定化)

関連する疾患

腱板損傷(けんばんそんしょう)、棘下筋単独萎縮(きょっかきんたんどくいしゅく)、肩関節不安定症、肩甲上神経麻痺(けんこうじょうしんけいまひ)など。

① 棘下筋単独萎縮

上述のとおり、バレーボール選手などに多い特殊な障害。肩甲上神経絞扼や部分断裂が原因とされ、痛みなく進行することが特徴。

② 腱板損傷(部分断裂・完全断裂)

棘下筋腱は棘上筋に次いで損傷しやすい部位。外旋筋力の低下、肩後部の痛みが主症状。

③ 肩関節不安定症

棘下筋が機能低下すると肩関節後方の安定性が損なわれ、亜脱臼や違和感を引き起こします。

④ 肩甲上神経麻痺

肩甲上神経が損傷すると棘下筋と棘上筋が同時に麻痺し、外旋・外転筋力が同時に低下します。

⑤ トリガーポイントによる関連痛

棘下筋は表層にありトリガーポイントができやすい筋。肩前面や腕に放散痛を引き起こすことがあります(「五十肩のような症状」として現れることも)。

代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

棘下筋を鍛えるポイント

① 軽い負荷で高回数
ローテーターカフ全般に共通:1〜2kgの軽いダンベルや軽いゴムチューブで15〜20回×2〜3セット。

② エクスターナルローテーションが基本
肘を体側につけたまま前腕を外側に開く動作。棘下筋に最も効率よく刺激が入ります。

③ プローン(腹臥位)ポジション
うつ伏せで腕を90度外転させた状態でのエクスターナルローテーションは、棘下筋により強い刺激を入れられます。

④ ゆっくり動かす
反動を使わず、コントロールされた動きで行います。

⑤ 表層筋トレーニングの前に
ベンチプレスやショルダープレスの前にウォームアップとして行うのがおすすめ。

よくある質問(FAQ)

Q1. 棘下筋はなぜ「最強の外旋筋」と呼ばれる?
肩関節の外旋に関わる筋(棘下筋・小円筋・三角筋後部)の中で、最も外旋筋力を発揮するからです。小円筋は補助役、三角筋後部は他の作用も担うため、外旋専門に近い棘下筋が主役となります。

Q2. 棘下筋単独萎縮はどうやって気づく?
痛みがないことが多いため、肩甲骨後面の左右差(へこみ)パフォーマンス低下(スパイクの威力減)で気づくケースが多いです。バレーボール選手や肩を多用するアスリートは定期的なチェックがおすすめ。

Q3. 棘下筋と棘上筋の違いは?
両者とも肩甲上神経支配ですが、棘下筋は外旋棘上筋は外転が主作用と異なります。停止部も棘上筋は大結節上部、棘下筋は中間部です。

Q4. 棘下筋のトリガーポイントは?
肩甲骨の中央あたりにできやすく、肩前面や上腕外側に放散痛を引き起こします。五十肩のような症状として現れることもあるため、原因不明の肩痛がある方は棘下筋のチェックを。

Q5. 棘下筋を自分でほぐすには?
テニスボールやマッサージボールを肩甲骨の中央あたりに当てて、壁に背中をつけてゆっくり押し回すと効果的。ただし強く押しすぎると神経を刺激するので注意。

Q6. エクスターナルローテーションの頻度は?
週2〜3回、15〜20回×2〜3セットが目安。肩を多用するスポーツ選手は週3〜4回が推奨されます。

まとめ

棘下筋について解説してきた内容を整理します。

肩甲骨の棘下窩から起こり、上腕骨大結節中央部に停止
・ローテーターカフの中で唯一の表層筋、触診可能
・主作用は肩関節の外旋(最強の外旋筋)と後方安定化
・支配神経は肩甲上神経(C5〜C6)
棘上筋に次いで2番目に損傷しやすい
バレーボール選手の棘下筋単独萎縮はスポーツ医学的に有名
エクスターナルローテーションで軽負荷・高回数で鍛える

棘下筋は外旋の主役にして、肩後方の安定化を担う重要な筋です。スポーツ選手はもちろん、肩こり・四十肩を予防したい一般の方にもエクスターナルローテーションの習慣をおすすめします。

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その他の肩部・背部の筋肉

三角筋広背筋大円筋ローテーターカフ(小円筋棘上筋肩甲下筋)・僧帽筋(僧帽筋上部線維僧帽筋中部線維僧帽筋下部線維)・外内肋間筋前鋸筋肩甲挙筋菱形筋群(大菱形筋小菱形筋)】

暗記チェック

棘下筋クイズ(全7問)

起始・停止・神経支配などを4択で確認。覚えたかチェックしよう。

参考文献・出典

・Wikipedia「棘下筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/棘下筋

・日本整形外科学会「腱板断裂」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html

・ビタカイン製薬「棘下筋のトリガーポイント」https://triggerpoint-net.vitacain.co.jp/

・rehatora.net「棘下筋の解剖と機能・ストレッチ」https://rehatora.net/

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