目次
前鋸筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
前鋸筋(ぜんきょきん)とは肩甲骨を前に押し出す働き(肩甲骨外転)がある筋肉です。
前鋸筋は上部と下部に分かれ、下部の一部だけが表層部に確認することができる筋肉です。
英語名称
serratus anterior muscle (セレタス・アンテリア・マッスル)
前鋸筋の解説
前鋸筋(ぜんきょきん)は肩甲骨の外転に関わる唯一の筋肉で、また、僧帽筋と協同して肩甲骨の上方回旋にも関与します。
前鋸筋は第1~8(または9)肋骨から起こり、胸郭(きょうかく)の外側面を被いつつ、後上方に向い、肩甲骨と胸郭(きょうかく)との間を通って肩甲骨の内側縁(ないそくえん)に付着する幅広い筋肉です。
前鋸筋の起始部が鋸状(のこぎりじょう)を呈することからこの名称がつけられました。
主な働きは肩甲骨の安定化と肩甲帯の外転、上方回旋といった動きに関与します。
前鋸筋に何かしらの問題(例えば長胸神経麻痺など)が生じると肩甲骨の安定化がはかれなくなり、これに伴い肩関節も一緒に不安定になります。
不安定になることで腕立て伏せや、ボクシングのパンチなどの動作がうまくできなくなるばかりか『肩関節不安定症』や『胸郭出口症候群』を招いてしまう恐れもあります。
腕立て伏せを行うときにしばしば肩甲骨が後方に突き出る『翼状肩甲骨(よくじょうけんこうこつ)』という現象を見かけることがありますが、これは前鋸筋の機能が弱っている証拠です。
単に前鋸筋が弱化しているだけなら前鋸筋を鍛えるだけで済みますが、長胸神経麻痺(ちょうきょうしんけいまひ)で翼状肩甲骨が起きてしまっているなら前鋸筋の機能不全を疑い、早めに整形外科医に診てもらう必要があります。
前鋸筋は野球のボールを投げたり、バスケットでシュートする動作のときに大胸筋と共に大きく貢献します。
バーベル・ベンチプレスやバックプレスを行うことで前鋸筋を鍛えることができますが、ダンベルを持って仰臥位(ぎょうがい)になり、頭上に構えたダンベルを押し上げる様な動作(肩甲骨の外転)を行うことで前鋸筋のみ鍛えることができます。
また、前鋸筋をストレッチするには部屋の角に向いて立ち、両手を肩の高さまで持ち上げて手の平を壁にあてます。
両手を伸ばしたまま、顔を壁の角に近づけるようにすることで肩甲骨が内転され、前鋸筋を効率よく引き延ばすことができます。
起始
第1~8(または9)肋骨の外側面中央部
停止
肩甲骨の上角(じょうかく)・下角(かかく)とその間の内側縁(ないそくえん)
前鋸筋の主な働き
前鋸筋を支配する神経
長胸神経(C5~C7)
日常生活動作
腕をより前に押し出すような動きや深く息を吸う動作(吸息)にも関与します。
スポーツ動作
ボクシングや空手など素早いパンチを打つ動作に大きく貢献します。
関連する疾患
長胸神経麻庫(ちょうきょうしんけいまひ)、胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)、肩関節不安定症(けんかんせつふあんていしょう)
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ
【三角筋・広背筋・大円筋・ローテーターカフ(小円筋・棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)・僧帽筋(僧帽筋上部線維・僧帽筋中部線維・僧帽筋下部線維)・外内肋間筋・肩甲挙筋・菱形筋群(大菱形筋・小菱形筋)】