上腕筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
上腕筋(じょうわんきん)とは上腕二頭筋の深層にある肘関節屈曲の真の主役筋です。英語では「brachialis muscle」と呼ばれます。
「力こぶ」というと上腕二頭筋が有名ですが、実は肘を曲げる力で最も強力なのは上腕筋です。さらに、上腕筋は上腕二頭筋を下から押し上げる「力こぶの土台」として、腕の盛り上がりを作る重要な筋肉です。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・上腕筋の正しい起始停止・作用は?
・上腕二頭筋とどう違う?
・力こぶを大きくするには上腕筋も鍛えるべき?
・ハンマーカール・リバースカールの効果は?
例え話で言うと、上腕筋は「力こぶの陰で支える縁の下の力持ち」のような存在です。上腕二頭筋ほど目立ちませんが、肘屈曲のパワーを生み、力こぶを下から盛り上げる役割を担っています。
英語名称
brachialis muscle(ブレイキアリス・マッスル)
「brachialis」は「上腕の」を意味するラテン語由来。シンプルに「上腕の筋」を意味します。
上腕筋の解説
上腕筋(じょうわんきん)は上腕二頭筋の深層にある扁平な筋肉で、上腕骨を覆うように付着しています。
上腕筋は主に上腕二頭筋と共に肘関節の屈曲に関与しますが、上腕二頭筋と比べるとその貢献度はあまり高くありません──と思われがちですが、実際には肘屈曲の主役は上腕筋とされています。上腕二頭筋は前腕回外位(手のひらを上に向けた状態)でこそ力を発揮しますが、上腕筋はどの前腕位置でも一定の力を発揮できる「真の主役」なのです。
この筋肉は上腕骨(じょうわんこつ)と尺骨(しゃっこつ)に停止しているので、前腕部の回内・回外といった動作に関係なく、純粋に肘関節の屈曲に関与します。
上腕筋を鍛えるためには、バーベルカールやプリチャーカールのように肘関節を曲げるエクササイズを実施すれば良いのですが、前腕回内位(手の甲が上向きになるように)で実施した方がより上腕筋の働きをクローズアップさせることができます。
上腕筋は純粋な肘関節屈筋なので、肩関節を屈曲位のまま肘関節を最大伸展するだけでストレッチを行うことができます。
支配神経は腕神経叢の外側神経束の枝である筋皮神経ですが、外側部は後神経束由来の橈骨神経です。
上腕筋と上腕二頭筋の違い
両者は協働して肘を曲げる筋ですが、明確な違いがあります:
上腕筋(深層・真の主役)
・位置:深層(上腕二頭筋の下)
・起始:上腕骨
・停止:尺骨粗面
・特徴:前腕の回内・回外に関係なく常時肘屈曲に貢献
・役割:肘屈曲の真の主役、力こぶの土台
上腕二頭筋(表層・目立つ)
・位置:表層
・起始:肩甲骨(長頭・短頭の二頭)
・停止:橈骨粗面
・特徴:前腕回外位で力を最大発揮、肩関節も跨ぐ二関節筋
・役割:力こぶの表面の盛り上がり
両者をバランスよく鍛えることで、上腕筋が下から押し上げ、上腕二頭筋が盛り上がる「立体的な力こぶ」が完成します。
力こぶを大きくしたいなら上腕筋を狙え
ボディビル界では「上腕の太さは上腕筋次第」とも言われています。理由は次の通り:
① 力こぶの土台を作る
上腕筋が発達すると、上腕二頭筋を下から押し上げ、力こぶの「高さ」「ピーク」が高くなります。
② 腕周囲径アップに直結
上腕筋は上腕骨を覆う扁平な筋。発達すると腕全体の周径が増すため、太い腕作りに有効。
③ どの種目でも刺激が入る
肘を曲げる動作なら必ず上腕筋が働きます。基本のカール種目で自然に鍛えられる。
④ 鍛え分けが容易
ハンマーカール・リバースカール(前腕回内)で上腕筋に集中刺激を入れられます。
腕の太さで伸び悩んでいる方は、上腕筋を意識的に鍛えることで突破口が開けるかもしれません。
起始
上腕骨前面の下半分及び筋間中隔(きんかんちゅうかく)
上腕骨の前面、下半分の広い範囲から起こります。これにより肘屈曲時に強力な力を発揮できます。
停止
尺骨粗面(しゃっこつそめん)
橈骨ではなく尺骨に停止することがポイント。尺骨は前腕の回旋に関わらず動かないため、上腕筋は前腕の回内・回外に関係なく肘屈曲を主導できます。
上腕筋の主な働き

主な役割:
・肘関節の屈曲(真の主役)
・前腕回内位での屈曲に最も貢献
・上腕二頭筋の補助(力こぶの土台)
・肘関節の安定化
上腕筋を支配する神経
筋皮神経(C5〜C6)+外側部は橈骨神経
筋皮神経は烏口腕筋・上腕二頭筋・上腕筋を支配します。外側部の一部は橈骨神経から支配を受けるという珍しい特徴があります(二重神経支配)。
日常生活動作
上腕二頭筋と同様に肘を曲げ、物を持つ動作などに主に関与します。
具体的には:
・カバンを腕にかける動作
・食事を口に運ぶ動作
・子どもを抱き上げる動作
・買い物袋を持ち上げる動作
・ドアを引いて開ける動作
特に手のひらが下向き(回内位)で物を持ち上げる時に上腕筋が最も活躍します。
スポーツ動作
上腕二頭筋と共にダンベル、バーベルを巻き上げる動作などに大きく貢献します。
特に重要なスポーツ:
・ウェイトリフティング(カール系種目)
・クライミング・ボルダリング(体の引き上げ)
・柔道・レスリング(相手の引き寄せ)
・カヌー・カヤック(パドリング)
・テニス(バックハンド)
関連する疾患
肘関節屈曲拘縮(ちゅうかんせつくっきょくこうしゅく)、筋皮神経麻痺(きんぴしんけいまひ)
① 肘関節屈曲拘縮
上腕筋の短縮や癒着で肘が完全に伸びなくなる症状。肘の外傷後やギプス固定後に起こりやすい。
② 筋皮神経麻痺
筋皮神経が損傷すると、上腕筋・上腕二頭筋・烏口腕筋が同時に麻痺。肘の屈曲筋力低下+前腕外側のしびれが特徴。
③ 上腕筋のトリガーポイント
カール系トレーニングのやりすぎや、長時間の肘屈曲姿勢(PC作業など)で上腕筋にトリガーポイントができ、肘前面や母指の付け根に放散痛を引き起こすことがあります。
④ 上腕筋の骨化性筋炎
肘の外傷後に上腕筋内で異常な骨形成が起こる稀な疾患。リハビリで予防が重要。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ
上腕筋を効果的に鍛えるポイント
① ハンマーカール
ダンベルを縦に握り(中立位)カール。上腕筋+腕橈骨筋を中心に刺激。腕の太さアップに最強の種目。
② リバースカール(逆手カール)
手のひらを下向き(回内位)でバーをカール。上腕二頭筋の関与が減り、上腕筋に集中刺激。
③ プリーチャーカール
専用ベンチに肘を固定してカール。動作中に肘が動かないため、上腕筋にしっかり効きます。
④ バーベルカール(基本)
上腕二頭筋と一緒に上腕筋も鍛えられる王道種目。
⑤ ゆっくり下ろす(ネガティブ動作)
カールの戻し動作(エキセントリック)を3〜4秒かけてゆっくり行うと、上腕筋への刺激が増大。
目安となる回数・セット数:
・初心者:10〜12回×3セット
・中級者:8〜12回×3〜4セット
・上級者:6〜10回×4セット
よくある質問(FAQ)
Q1. 上腕筋と上腕二頭筋の違いは?
上腕筋は深層・上腕二頭筋は表層。上腕筋は尺骨に停止するため前腕の向きに関係なく肘屈曲を担い、上腕二頭筋は橈骨に停止するため回外動作にも関与します。
Q2. 力こぶを大きくするには上腕筋を鍛えるべき?
はい、必須です。上腕筋が発達すると上腕二頭筋を下から押し上げて力こぶの「高さ」が増します。ハンマーカール・リバースカールを取り入れましょう。
Q3. ハンマーカールとリバースカールの違いは?
ハンマーカールはダンベルを縦に握る中立位、リバースカールはバーを手の甲側で握る回内位。両者とも上腕筋を狙えますが、リバースカールの方がより集中刺激。
Q4. 上腕筋を意識しすぎると上腕二頭筋に効かない?
基本種目(バーベルカール)では両方鍛えられます。専門的に上腕筋を狙う日と上腕二頭筋を狙う日を分けると効率的。
Q5. 上腕筋のストレッチ方法は?
肩を屈曲位(前に挙げた状態)で肘を最大伸展。手の甲を壁につけて軽く押すと効果的。20〜30秒キープ。
Q6. 筋皮神経麻痺の症状は?
肘の屈曲筋力低下(上腕筋・上腕二頭筋・烏口腕筋が同時麻痺)+前腕外側のしびれが特徴です。上腕骨骨折などで発症します。
まとめ
上腕筋について解説してきた内容を整理します。
・上腕骨前面下半分から起こり、尺骨粗面に停止
・上腕二頭筋の深層にある扁平な筋
・主作用は肘関節の屈曲(前腕の回内・回外に関係なく)
・支配神経は筋皮神経(C5〜C6)+外側部は橈骨神経
・肘屈曲の真の主役かつ力こぶの土台
・ハンマーカール・リバースカールで集中強化
・腕の太さアップには上腕筋の強化が不可欠
上腕筋は目立たないながらも、太い腕作り・力こぶの盛り上がりに最も貢献する筋肉です。上腕二頭筋ばかり鍛えてきた方こそ、ハンマーカール・リバースカールを取り入れて、ワンランク上の腕を目指しましょう。
その他の上腕部の筋肉
【上腕二頭筋・上腕三頭筋・烏口腕筋・肘筋】
参考文献・出典
・Wikipedia「上腕筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/上腕筋
・看護roo!「上腕筋」https://www.kango-roo.com/word/20060
・rehatora.net「上腕筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/
・厚生労働省 e-ヘルスネット「筋力トレーニング」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-003.html






