肘筋とは|起始停止・神経支配と肘関節の伸展補助・テニス肘との関係を解説

肘筋

肘筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

肘筋(ちゅうきん)とは肘関節のやや下側に位置する小さな筋肉で、主に上腕三頭筋の働きを補助し肘関節の伸展に貢献します。英語では「anconeus muscle」と呼ばれます。

肘筋は肘関節が屈曲するときに、関節包が肘関節に対してずれないように保つ働きをしています。三角形の小さな筋ですが、肘関節の安定化と障害予防に欠かせない重要な筋肉です。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

肘筋の正しい起始停止・作用は?
上腕三頭筋とどう違う?
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)との関係は?
効果的な鍛え方は?

例え話で言うと、肘筋は「肘関節の小さな番人」のような存在です。三角形の小さな筋ながら、肘の動きの陰で関節包の挟み込みを防ぎ、肘の安定を守っています。

英語名称

anconeus muscle(アンコウニィァス・マッスル)

ギリシャ語の「ankōn(肘)」に由来する名称です。

肘筋の解説

肘筋(ちゅうきん)は肘関節の直下に存在する小さな筋で、主に上腕三頭筋補助的な役割を果たしています。

その他にも肘関節が屈曲するときに、関節包が肘関節に対してずれないように保つ働きがあるので、肘関節の障害予防にも大きく貢献しています。

肘筋は主に「ドアを押す」「頭上に物を持ち上げる」などの肘関節の伸展動作に関与しますが、上腕三頭筋ほど大きな筋力が発揮できるわけではありません。

しかし、肘関節を伸展させるときに前腕の回内動作を同時に行うと肘筋の筋活動は高まります。これは肘筋トレーニングの大きなポイントです。

この筋肉は上記でも述べたように上腕三頭筋と一緒に肘関節を伸展させる作用を持つので、鍛えるためにはトライセップス・プッシュダウンなどのエクササイズを行うことが有効です。

また、肘関節を最大限に屈曲させれば肘筋はストレッチされます。

肘筋と上腕三頭筋の違い

両者は同じく「肘関節伸展」を担う筋ですが、役割が異なります:

上腕三頭筋(主役)
・大きな筋、上腕の体積の約2/3
・主にパワーを出す役割
・橈骨神経支配

肘筋(補助・安定化)
・小さな三角形の筋
・主に肘の安定化・関節包の保護
・橈骨神経支配
純粋な肘の伸展を主導するとの説もあり

筋電図研究では「純粋な肘の伸展を主動する筋は実は肘筋」とする報告もあり、小さいながら肘伸展の主役級の役割を持つ筋とも言えます。

関節包の保護|肘筋の隠れた重要機能

肘筋の最も重要な役割の一つが関節包の保護です。

肘を伸展させる時に、関節包が肘頭と上腕骨の間に挟み込まれる可能性があります。肘筋は伸展動作に合わせて関節包を引っ張り上げ、挟み込みを防ぐ役割を担っています。

この機能が低下すると:
肘の後方インピンジメント
肘の安定性低下
慢性的な肘の違和感

野球選手など投球動作で肘に負担がかかる方は、肘筋の機能維持が重要です。

肘筋とテニス肘(上腕骨外側上顆炎)の関係

肘筋は上腕骨の外側上顆から起始するため、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)と密接な関係があります。

テニス肘とは
バックハンドの反復動作などで、外側上顆に付着する筋(主に短橈側手根伸筋)の腱に炎症が起こる疾患。テニスプレーヤーだけでなく、PC作業や家事でも発症します。

肘筋との関連
・肘筋も外側上顆から起始するため、慢性炎症の影響を受けやすい
・肘筋の機能低下で肘の安定性が損なわれ、テニス肘を悪化させることがある
・テニス肘患者の外側部の圧痛・違和感に肘筋のトリガーポイントが関与することも

対策
・前腕回内位での軽い負荷の伸展エクササイズ
・外側上顆周辺のマッサージ・ストレッチ
・痛みが続く場合は整形外科を受診

起始

上腕骨の外側上顆(がいそくじょうか)の後面、外側側副靭帯(がいそくそくふくじんたい)

外側上顆はテニス肘(上腕骨外側上顆炎)の発症部位として有名な解剖学的ランドマーク。肘筋もここから起始しています。

停止

尺骨の肘頭(ちゅうとう)外側面

上腕三頭筋と同じく尺骨肘頭に停止しますが、肘筋は外側面に停止する点が特徴です。

肘筋の主な働き

肘関節の伸展

主に肘関節の伸展に関与します。

主な役割:

肘関節の伸展(上腕三頭筋の補助)
関節包の保護(挟み込み防止)
肘関節の安定化
前腕の軽い回内動作

肘筋を支配する神経

橈骨(とうこつ)神経(C7〜C8)

上腕三頭筋と同じく橈骨神経支配です。橈骨神経が損傷すると、上腕三頭筋とともに肘筋も麻痺します。

日常生活動作

主にすべての押す動作に関与します。

具体的には:

重い扉を押し開ける動作
頭上の棚に物を置く動作
椅子から立ち上がる時の補助
腕立て伏せ
あらゆる肘伸展動作

スポーツ動作

上腕三頭筋と共に砲丸投げやアメフトなどの押す動作に大きく貢献します。

特に重要なスポーツ:
テニス・バドミントン(ストロークの肘安定)
野球(投球動作の肘安定)
ボクシング(パンチ)
ウェイトリフティング(プレス系)
体操(吊り輪・倒立)

関連する疾患

上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)、橈骨神経麻痺(とうこつしんけいまひ)

① 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

肘筋が起始する外側上顆の炎症。テニスやPC作業など、前腕の反復動作で発症する代表的な肘の障害。

② 橈骨神経麻痺

橈骨神経が損傷すると、上腕三頭筋とともに肘筋も麻痺。肘伸展筋力の低下と、手首・指の伸展障害(下垂手)を引き起こします。

③ 肘関節後方インピンジメント

肘を強く伸ばす動作の反復で、関節包の挟み込みが慢性化。肘筋の機能低下が悪化因子になります。

④ 肘筋のトリガーポイント

過度な肘伸展トレーニングや長時間の同じ姿勢で、肘筋にトリガーポイントができると、肘外側〜上腕後面の痛みとして現れることがあります。

代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

肘筋を効果的に鍛えるポイント

① 前腕回内位での伸展種目
肘伸展時に前腕を回内(手の甲を上向き)させると肘筋の活動が高まります。トライセップスプッシュダウンで意識すると効果的。

② 軽い負荷で高回数
小さな筋なので、軽い負荷で15〜20回×2〜3セットが目安。重い重量を扱う必要はありません。

③ コントロールされた動き
反動を使わず、ゆっくりとした動作で肘の安定化を意識。

④ 上腕三頭筋トレーニングのウォームアップに
本格的なトライセップス種目の前に、軽い肘伸展で肘筋を活性化しておくとケガ予防に。

⑤ 関節可動域全体を使う
肘を完全に伸ばしきる位置で1秒キープすると、肘筋にしっかり刺激が入ります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 肘筋と上腕三頭筋の違いは?
上腕三頭筋がパワーの主役、肘筋が肘安定化の縁の下の力持ち。両者とも肘伸展に関わりますが、肘筋は関節包の保護という独自の重要な機能を持ちます。

Q2. 肘筋単独で鍛えられる?
単独での意識は難しいですが、トライセップス系種目を前腕回内位で実施すると肘筋への刺激が高まります。

Q3. テニス肘の予防に肘筋トレーニングは有効?
肘の安定性を高める意味で有効ですが、痛みがある時は無理に行わず整形外科を受診してください。慢性化したテニス肘には専門的なリハビリが必要。

Q4. 肘外側に違和感がある時はどうする?
テニス肘・肘筋のトリガーポイント・橈骨神経の絞扼などが考えられます。続く場合は整形外科を受診し、原因を特定することが大切。

Q5. 肘筋のストレッチ方法は?
肘を最大限に屈曲するだけで肘筋はストレッチされます。反対側の手で肘を引き寄せると、より効果的。

Q6. 橈骨神経麻痺になると肘筋はどうなる?
橈骨神経麻痺では肘筋も麻痺し、肘伸展筋力の低下+下垂手などの症状が出ます。上腕骨骨折・締め付け(ハネムーン麻痺)などで発症します。

まとめ

肘筋について解説してきた内容を整理します。

上腕骨外側上顆から起こり、尺骨肘頭外側面に停止
・上腕三頭筋を補助する小さな三角形の筋
・主作用は肘関節の伸展と関節包の保護
・支配神経は橈骨神経(C7〜C8)
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の発症部位と関連
・前腕回内位での伸展で活動が高まる
トライセップスプッシュダウンなどで強化できる
・肘の安定化・障害予防の鍵

肘筋は小さく目立たない筋ですが、肘関節の安定と障害予防において重要な役割を果たしています。肘外側の違和感やテニス肘予防を意識する方は、肘筋の機能を整えることが効果的です。

その他の上腕部の筋肉
上腕二頭筋上腕三頭筋烏口腕筋上腕筋

参考文献・出典

・Wikipedia「肘筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/肘筋

・看護roo!「肘筋」https://www.kango-roo.com/word/20061

・日本整形外科学会「上腕骨外側上顆炎(テニス肘)」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/tennis_elbow.html

・rehatora.net「肘筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/

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