僧帽筋(下部)の筋力チェック
この記事では、僧帽筋下部線維の筋力チェック方法を解説します。
・僧帽筋下部線維の筋力チェック手順
・正しい測定のためのポイント
・神経リンパ反射と関連臓器
・肩甲骨機能不全との関連
僧帽筋下部線維は「肩甲骨の下方支持筋」。肩甲骨の下制+上方回旋+内転に関与し、肩関節の挙上動作に必須の筋肉です。応用キネシオロジー(AK)では脾臓との関連も研究されています。
僧帽筋下部線維とは|最も機能低下しやすい筋
僧帽筋下部線維の基本情報:
① 起始
・第6〜第12胸椎の棘突起
② 停止
・肩甲棘内側
③ 主な作用
・肩甲骨の下制(主作用)
・肩甲骨の上方回旋(補助)
・肩甲骨の内転(補助)
④ 神経支配
・副神経+頚神経叢(C2-C4)
「肩甲骨の下方支持筋」:
僧帽筋下部の役割:
① 肩甲骨の下方安定
・「肩を下げる」動作
・僧帽筋上部の過緊張を打ち消す
・姿勢の安定
② 上方回旋の協同筋
・前鋸筋・僧帽筋上部と協調
・「フォースカップル」を構成
・肩関節180度挙上に必須
③ 「胸を張る」補助
・肩甲骨内転
・巻き肩予防
「最も機能低下しやすい筋」:
僧帽筋下部は現代人で最も機能低下しやすい筋の1つ:
① 使われない
・長時間座位
・肩を下げる動作が少ない
・意識的に使わないと衰える
② 拮抗筋優位
・僧帽筋上部が過剰活動
・「肩がすくむ」姿勢
③ 結果として
・肩甲骨上方への位置異常
・肩こり・首こりの悪循環
・肩関節挙上困難
「僧帽筋3部位」の中の位置づけ:
僧帽筋は3部位に分かれます:
① 上部繊維
・挙上+頚部動作
・過剰活動傾向
② 中部繊維
・内転
・機能低下傾向
③ 下部繊維(本記事)
・下制+上方回旋+内転
・最も機能低下傾向
現代人は「上部過剰・中部下部弱化」のアンバランスが典型です。
実施方法

- 患者さんに腹臥位になってもらい、患側上肢を身体の側面から120度外転させ肩関節を十分に外旋させ、その位置で固定してもらいます。
このとき頭部は患側上肢に向けておきます。

- 術者は反対側の手で患者さんの肩甲骨を押さえ、患側の手首を軽く把握し、前方(床に)に向かって圧迫を加えます。
患者さんはその床方向への圧に対して上肢を保持することで僧帽筋下部の筋力を評価します。




ワンポイント
正しく測定するためのポイント:
・患者さんは伸ばした指先に目線を向ける
・菱形筋の関与を少なくするため肩関節を最大外旋
・120度外転位を維持
・頭部を患側上肢方向へ
「120度外転+外旋」の意味:
中部テスト(90度)と異なる角度:
・120度外転=僧帽筋下部の繊維方向に合致
・最大外旋=菱形筋の活動を抑制
・選択的評価が可能
「中部と下部の違い」:
・中部テスト:外転90度+外旋
・下部テスト:外転120度+外旋(本記事)
両方を実施することで僧帽筋中部・下部の精密評価が可能。
注意事項:
・肩関節の痛みがある場合は中止
・過度な圧は避ける
・段階的に力を加える
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論考
判定方法:
この検査を左右両方で実施します。
弱いと感じた側の僧帽筋(下部)が弱化している可能性があります。
左右差の意味:
・5%以上の差:要注意
・10%以上の差:明らかな弱化
・左右差なし:正常
僧帽筋下部弱化が示唆するもの:
・肩甲骨の機能不全
・挙上動作(バンザイ)困難
・慢性的な肩こり
・姿勢の崩れ
・関連臓器(脾臓)の機能低下(応用キネシオロジー的視点)
「ほぼ全員が弱化」:
現代人の多くで僧帽筋下部は弱化:
① 弱化の特徴
・「肩を下げる」力が弱い
・挙上時の肩甲骨上方回旋不足
・巻き肩の一因
② 左右差
・利き手側の偏り
・マウス操作の影響
③ 連動する弱化
・僧帽筋中部も同時弱化
・菱形筋も弱化
・前鋸筋も連動
「肩甲骨上方回旋」の評価:
僧帽筋下部のもう1つの重要な評価:
① バンザイテスト
・両腕を真上に挙げる
・肩甲骨の動きを観察
② 正常
・肩甲骨が上方回旋60度
・スムーズに180度挙上
③ 異常
・180度挙上困難
・代償動作(体幹伸展)
・「上方回旋不足」
神経リンパ反射点
応用キネシオロジー(AK)における僧帽筋下部の神経リンパ反射点:
① 左乳首の下
・左側第7及び第8肋骨の間
② T7〜T8の間
・左側椎弓板の近く
※僧帽筋中部と同じ反射点です。
これらの部位を軽くマッサージすることで僧帽筋下部の機能を活性化できると考えられています。
関連臓器・腺
応用キネシオロジーでは僧帽筋下部は脾臓と関連すると考えられています。
「脾臓」とは:
脾臓の役割:
・血液のろ過
・古い赤血球の処理
・免疫機能(リンパ球の貯蔵)
・血液貯蔵
脾臓との関連:
僧帽筋下部の弱化があるとき:
・免疫機能の状態のサインの可能性
・疲労感・倦怠感
・「気の流れ」の指標(東洋医学的視点)
東洋医学との関連:
東洋医学では脾臓(脾)は:
・「気血の生成」
・「思」と関連
・消化機能と密接
応用キネシオロジーはこれらの東洋医学的概念とも関連が研究されています。
※注意:応用キネシオロジーの解釈であり、医学的に確立した因果関係ではありません。あくまで参考情報として考慮してください。
僧帽筋下部弱化と肩甲骨機能不全|現代人の隠れた問題
僧帽筋下部の弱化は肩甲骨機能不全の中心的問題:
「フォースカップル」の崩壊:
肩甲骨上方回旋の3筋協調:
① 僧帽筋上部
・外側上方への動き
② 僧帽筋下部(本記事)
・内側下方への動き
③ 前鋸筋下部
・外側下方への動き
これら3筋が三角形のフォースを作って肩甲骨を上方回旋させます。
「上方回旋不足」の連鎖:
僧帽筋下部の弱化が引き起こす連鎖:
① 肩甲骨上方回旋不足
・「バンザイできない」
・肩峰下スペース狭小
② インピンジメント症候群
・挙上時の痛み
・腱板炎
③ 腱板損傷
・反復ストレス
・断裂のリスク
④ 四十肩・五十肩
・肩関節周囲炎
・可動域制限
「スカプラディスキネジア」:
肩甲骨の動きの異常:
① 定義
・肩甲骨の動きが正常でない状態
・「肩甲骨の機能不全」
② 主な原因
・僧帽筋下部の弱化
・前鋸筋の弱化
・大胸筋・小胸筋の硬化
③ 影響
・投球障害肩
・水泳肩
・テニス肘
関連する障害:
① 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
・肩甲骨機能不全が一因
・40〜50代に多い
② インピンジメント症候群
・肩甲骨上方回旋不足
・挙上時痛
③ 腱板損傷
・反復ストレス
・断裂のリスク
④ 投球障害肩
・スカプラディスキネジア
・パフォーマンス低下
⑤ 慢性肩こり・首こり
・僧帽筋上部の代償
・悪循環
⑥ ストレートネック
・姿勢の崩れ
・頚部負担
「上位交差症候群」:
巻き肩・猫背の典型パターン:
① 短縮筋(×字の対角線)
・大胸筋・小胸筋
・頭半棘筋・後頭下筋群
② 弱化筋(×字の対角線)
・深層頚屈筋
・僧帽筋中部・下部(本記事)
これら4筋の「交差した」バランス崩壊が頭部前方位+肩前方位を生みます。
改善法:
① プローンY-Tエクササイズ(僧帽筋下部)
方法:
1. うつ伏せ
2. 両腕をY字に
3. 胸を上げる
4. 10回×3セット
効果:僧帽筋下部の選択的強化。
② プローンTエクササイズ(僧帽筋中部)
方法:
1. うつ伏せ
2. 両腕をT字に
3. 胸を上げる
4. 10回×3セット
③ Y-T-W-Lエクササイズ(総合)
方法:
1. うつ伏せ
2. Y字→T字→W字→L字と変化
3. 各10回×3セット
効果:肩甲骨周囲筋+外旋筋の総合強化。
④ ラットプルダウン
・引き下げる動作
・僧帽筋下部の機能的強化
⑤ デッドハング
・ぶら下がる
・肩甲骨下制を意識
⑥ 姿勢意識
・「肩を下げる」意識
・1時間に1回の姿勢リセット
まとめ
僧帽筋下部線維の筋力チェックについて解説してきた内容を整理します。
・腹臥位で患側上肢120度外転+外旋+頭部は患側へ
・床方向への圧に対して上肢を保持
・120度外転位で僧帽筋下部の選択的活動
・最大外旋位で菱形筋の関与を最小化
・左右比較で弱化を判定
・中部テスト(90度)と下部テスト(120度)を併用
・神経リンパ反射点:左乳首下(左側第7〜8肋骨間)+T7〜T8椎弓板(中部と同じ)
・関連臓器(応用キネシオロジー):脾臓
・「肩甲骨の下方支持筋」
・最も機能低下しやすい筋
・「フォースカップル」の主要メンバー
・スカプラディスキネジアの中心
・副神経+頚神経叢支配
僧帽筋下部の機能評価は肩甲骨機能改善+四十肩予防+投球パフォーマンス+免疫機能の参考指標として活用できます。整体・カイロ・トレーナーの現場で活用される基礎的な評価法です。日常的にもプローンY-Tエクササイズ+ラットプルダウン+姿勢改善で僧帽筋下部の健康を維持しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「肩こり」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本整形外科学会「肩関節疾患」https://www.joa.or.jp/
・日本肩関節学会「肩関節疾患」https://katakansetsu.jp/
・日本理学療法士協会「肩甲骨機能と姿勢」https://www.japanpt.or.jp/
・国際応用キネシオロジー学会「Manual Muscle Testing」https://www.icakusa.com/
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