肩甲下筋の筋力チェック
この記事では、肩甲下筋の筋力チェック方法を解説します。
・肩甲下筋の筋力チェック手順
・正しい測定のためのポイント
・神経リンパ反射と関連臓器
・ローテーターカフ唯一の内旋筋としての重要性
肩甲下筋は「肩の前面深層の隠れた要」。ローテーターカフ4筋の中で唯一の内旋筋であり、応用キネシオロジー(AK)では心臓との関連も研究されています。
肩甲下筋とは|ローテーターカフ唯一の内旋筋
肩甲下筋の基本情報:
① 起始
・肩甲骨前面の肩甲下窩
② 停止
・上腕骨小結節
③ 主な作用
・肩関節の内旋(主作用)
・上腕骨頭の関節窩への押し付け(動的安定)
・肩関節の前方安定
④ 神経支配
・上肩甲下神経・下肩甲下神経(C5-C7)
「ローテーターカフ唯一の内旋筋」:
ローテーターカフ4筋の内訳:
① 棘上筋=外転(最初の30度)
② 棘下筋=外旋
③ 小円筋=外旋
④ 肩甲下筋=内旋(本記事のテーマ)
肩甲下筋以外の3筋は後面に位置するのに対し、肩甲下筋だけが前面(肩甲骨と肋骨の間)に位置する独特の筋です。
「最大の内旋筋」:
肩甲下筋は内旋筋として最大級:
・大胸筋・広背筋と並ぶパワー
・動的安定の主役
・投球動作のリリースで爆発的活動
「肩関節の前方安定」:
肩甲下筋の特別な役割:
・上腕骨頭の前方脱臼を防ぐ
・反復性肩関節脱臼の予防
・関節包の補強
実施方法

- 患者さんに患側上肢の肩関節、肘関節を90度屈曲し、肩関節を最大限に内旋してもらいます。
- 術者は空いてる手を使って患側上肢の肘関節を固定し、テスト中、肩関節の外旋以外の動きが出ないように固定します。

- 術者は患者さんの後方より頭方に向かって患側の手関節に圧を加えます。
患者さんはその圧に対して内旋方向に抵抗することで肩甲下筋の筋力を評価します。




ワンポイント
正しく測定するためのポイント:
・術者は患者さんの手関節近位に手を軽く添える
・患者さんは出来るだけ肩を持ち上げない
・肘関節を確実に固定
・体幹の代償を防ぐ
「肩を持ち上げない」の意味:
肩を持ち上げると:
・僧帽筋上部が代償活動
・純粋な肩甲下筋テストにならない
・評価精度が低下
「最大内旋位」の意味:
最大内旋位で行う理由:
・肩甲下筋を選択的に活動
・他の内旋筋(大胸筋・広背筋)の代償を最小化
・外旋方向の抵抗に最適
注意事項:
・肩関節の痛みがある場合は中止
・過度な圧は避ける
・段階的に力を加える




論考
判定方法:
この検査を左右両方で実施します。
弱いと感じた側の肩甲下筋が弱化している可能性があります。
※通常、弱いと感じた側は肩関節が外旋している傾向にあります。
左右差の意味:
・5%以上の差:要注意
・10%以上の差:明らかな弱化
・左右差なし:正常
肩甲下筋弱化が示唆するもの:
・ローテーターカフの機能不全
・肩関節前方の不安定性
・反復性肩関節脱臼のリスク
・関連臓器(心臓)の機能低下(応用キネシオロジー的視点)
「弱化側で外旋傾向」の意味:
肩甲下筋(内旋筋)が弱いと:
・拮抗筋(棘下筋・小円筋)が優位
・肩関節が外旋位になる
・姿勢として観察可能
・視診でも判断できる
「ベリープレステスト」:
肩甲下筋断裂を疑うテスト:
① 方法
1. 患手をお腹に当てる
2. お腹を押す動作
3. 肘が後方に逃げるかチェック
② 陽性
・肘が後方に逃げる
・肩甲下筋断裂の可能性
「リフトオフテスト(ガーバーテスト)」:
別の評価法:
① 方法
1. 患手を腰に当てる
2. 手を背中から離す動作
② 陽性
・手を離せない
・肩甲下筋機能不全
神経リンパ反射点
応用キネシオロジー(AK)における肩甲下筋の神経リンパ反射点:
① 第1〜2肋骨間の胸骨近く
② T2〜T3の棘突起の間
これらの部位を軽くマッサージすることで肩甲下筋の機能を活性化できると考えられています。
関連臓器・腺
応用キネシオロジーでは肩甲下筋は心臓と関連すると考えられています。
「心臓」との関連:
肩甲下筋の弱化があるとき:
・心臓の機能状態のサインの可能性
・循環機能の指標
・左肩の症状と心疾患の関連
・関連痛として現れることも
左肩痛と心臓:
医学的にも知られている関連:
・心筋梗塞の関連痛が左肩に現れる
・狭心症でも左肩〜左腕の痛み
・関連痛のメカニズム
・注意すべきサイン
※注意:応用キネシオロジーの解釈であり、医学的に確立した因果関係ではありません。ただし持続的な左肩痛がある場合は心疾患の可能性もあるため、循環器内科の受診も検討してください。
肩甲下筋と巻き肩・現代人の問題
肩甲下筋は現代人の姿勢問題と密接に関連:
「巻き肩」と肩甲下筋:
巻き肩の状態では:
① 肩甲下筋の短縮
・常に内旋位
・硬化
・機能低下
② 拮抗筋の伸長
・棘下筋・小円筋=弱化
・外旋機能の低下
③ 姿勢の悪化
・巻き肩
・猫背
・肩こり
関連する障害:
① 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
・肩甲下筋の硬化が一因
・結帯動作困難
・40〜50代に多い
② 反復性肩関節脱臼
・前方への脱臼
・肩甲下筋の弱化
・若年スポーツ選手
③ 肩甲下筋腱断裂
・40歳以上に多い
・外傷後
・内旋筋力の急激な低下
④ インピンジメント症候群
・肩関節の機能不全
・挙上時の痛み
⑤ 投球障害肩
・投球フォロースルー期で爆発的活動
・過剰使用で損傷
「結帯動作」と肩甲下筋:
肩甲下筋の機能評価に重要な動作:
① 結帯動作とは
・手を背中に回す動作
・「帯を結ぶ」動作
・内旋+伸展の組み合わせ
② 評価
・肩甲骨まで届く:正常
・腰部のみ:要対応
・痛みあり:四十肩疑い
③ 改善エクササイズ
・振り子運動
・内旋筋ストレッチ
・段階的な可動域訓練
肩甲下筋ケアの重要性:
① インターナルローテーション
・軽負荷×高回数
・肩甲下筋の選択的強化
② 大胸筋ストレッチ
・胸を開く動作
・巻き肩予防
③ 後方関節包ストレッチ
・スリーパーストレッチ
・内旋制限の改善
④ 全身連動性
・キネティックチェーン
・体幹からの力の伝達
まとめ
肩甲下筋の筋力チェックについて解説してきた内容を整理します。
・座位で肩肘90度屈曲+肩最大内旋
・後方から頭方へ手関節に圧
・肩を持ち上げない+肘固定が重要
・左右比較で弱化を判定
・弱化側は肩関節外旋傾向
・ベリープレステスト・リフトオフテストも併用
・神経リンパ反射点:第1〜2肋骨間胸骨近く+T2〜T3棘突起間
・関連臓器(応用キネシオロジー):心臓
・ローテーターカフ唯一の内旋筋
・最大の内旋筋+肩関節前方安定の主役
・四十肩・反復性肩関節脱臼と関連
・左肩痛は心疾患の可能性も視野に
肩甲下筋の機能評価は肩関節の前方安定+四十肩予防+心臓機能の参考指標として活用できます。整体・カイロ・トレーナーの現場で活用される基礎的な評価法です。日常的にもインターナルローテーション+大胸筋ストレッチ+姿勢改善で肩甲下筋の健康を維持しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「肩こり」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本整形外科学会「肩関節周囲炎・腱板損傷」https://www.joa.or.jp/
・日本肩関節学会「肩関節疾患」https://katakansetsu.jp/
・日本臨床スポーツ医学会「投球障害肩」http://www.rinspo.jp/
・国際応用キネシオロジー学会「Manual Muscle Testing」https://www.icakusa.com/










