菱形筋群の筋力チェック
この記事では、菱形筋群の筋力チェック方法を解説します。
・菱形筋群の筋力チェック手順
・正しい測定のためのポイント
・神経リンパ反射と関連臓器
・猫背・巻き肩との関連
菱形筋群は「肩甲骨を背骨に引き寄せる縁の下の力持ち」。大菱形筋+小菱形筋の2筋で構成され、肩甲骨の内転+下方回旋に重要な役割を担います。応用キネシオロジー(AK)では肝臓・胃との関連も研究されています。
菱形筋群とは|肩甲骨を背骨に引き寄せる筋
菱形筋群の基本情報:
① 起始
・小菱形筋:第6〜第7頚椎棘突起
・大菱形筋:第1〜第4胸椎棘突起
② 停止
・肩甲骨内側縁(菱形筋下部)
③ 主な作用
・肩甲骨の内転(主作用)
・肩甲骨の下方回旋
・肩甲骨の挙上(補助)
・肩甲骨の安定化
④ 神経支配
・肩甲背神経(C4-C5)
「2つの菱形筋」:
菱形筋群は2つの筋で構成:
① 小菱形筋
・上部(頚椎側)
・細長い
・小さい
② 大菱形筋
・下部(胸椎側)
・四角形
・大きい
両者が合わさって「菱形」の形を作ることから命名。
「肩甲骨を背骨に引き寄せる筋」:
菱形筋群の主な役割:
① 肩甲骨内転
・「胸を張る」動作
・両肩甲骨を背骨に寄せる
② 下方回旋
・「腕を下げる」動作
・引く動作で活躍
③ 安定化
・肩甲骨の動的安定
・姿勢の維持
「僧帽筋中部との違い」:
両者ともに肩甲骨内転筋ですが:
① 走行方向
・菱形筋=斜め下方向
・僧帽筋中部=水平方向
② 下方回旋への寄与
・菱形筋=下方回旋に貢献
・僧帽筋中部=下方回旋しない
③ テスト方法の違い
・菱形筋=内旋位でテスト(本記事)
・僧帽筋中部=外旋位でテスト
これらの違いを理解することで選択的な評価が可能。
実施方法

- 患者さんに腹臥位になってもらい、患側上肢を身体の側面から90度外転させ肩関節を十分に内旋させ、その位置で固定してもらいます。
このとき頭部は患側上肢に向けておきます。

- 術者は反対側の手で患者の肩甲骨を押さえ、患側の手首を軽く把握し、前方(床に)に向かって圧迫を加えます。
患者さんはその床方向への圧に対して上肢を保持することで菱形筋の筋力を評価します。




ワンポイント
正しく測定するためのポイント:
・患者さんは伸ばした指先に目線を向ける
・中部僧帽筋の関与を少なくするため肩関節を最大内旋
・90度外転位を維持
・頭部を患側上肢方向へ
「最大内旋位」の意味:
内旋位を維持すると:
・僧帽筋中部の活動を抑制
・純粋な菱形筋テストになる
・選択的評価が可能
「僧帽筋中部テストとの違い」:
両者を区別するポイント:
・菱形筋テスト:内旋位(本記事)
・僧帽筋中部テスト:外旋位
同じ姿勢で肩関節の回旋角度を変えるだけで、別々の筋を選択的に評価できます。
注意事項:
・肩関節の痛みがある場合は中止
・過度な圧は避ける
・段階的に力を加える




論考
判定方法:
この検査を左右両方で実施します。
弱いと感じた側の菱形筋が弱化している可能性があります。
左右差の意味:
・5%以上の差:要注意
・10%以上の差:明らかな弱化
・左右差なし:正常
菱形筋弱化が示唆するもの:
・猫背・巻き肩のリスク
・肩甲骨の動的安定性低下
・姿勢の崩れ
・慢性的な肩こり
・肩甲背神経麻痺のサイン
・関連臓器(肝臓・胃)の機能低下(応用キネシオロジー的視点)
「肩甲骨翼状化」:
菱形筋の弱化で起こる典型的な姿勢:
① 肩甲骨の浮き上がり
・「翼」のような外観
・前鋸筋麻痺との区別が必要
② 違い
・菱形筋麻痺:肩甲骨が下方かつ外側に
・前鋸筋麻痺:肩甲骨が内側かつ上方に
両者を区別することで適切な治療が可能。
「肩甲背神経麻痺」:
菱形筋の弱化は肩甲背神経麻痺のサインの可能性:
・頚部の問題から発生
・斜角筋症候群と関連
・胸郭出口症候群と関連
特に急激な弱化では神経損傷を疑う必要があります。
神経リンパ反射点
応用キネシオロジー(AK)における菱形筋の神経リンパ反射点:
① 左側の第6〜7肋骨の間
・乳頭線から胸骨の間
② T6〜T7の間の椎弓板近く
これらの部位を軽くマッサージすることで菱形筋の機能を活性化できると考えられています。
関連臓器・腺
応用キネシオロジーでは菱形筋は肝臓(胃)と関連すると考えられています。
「肝臓・胃」との関連:
肝臓・胃の役割:
① 肝臓
・解毒機能
・代謝の中枢
・消化酵素の生成
② 胃
・消化機能
・胃酸の分泌
肝臓・胃との関連:
菱形筋の弱化があるとき:
・消化機能の状態のサインの可能性
・疲労感・倦怠感
・解毒能力の指標
・食事・アルコールの見直しも検討
東洋医学との関連:
東洋医学では:
・胃経・肝経が背中の経絡と関連
・「気の流れ」と関連
・応用キネシオロジーの基礎
※注意:応用キネシオロジーの解釈であり、医学的に確立した因果関係ではありません。あくまで参考情報として考慮してください。
菱形筋弱化と猫背・巻き肩|現代人の姿勢問題
菱形筋の弱化は「猫背・巻き肩」の中心的問題:
「猫背・巻き肩」の解剖学:
猫背・巻き肩は筋バランスの崩壊:
① 短縮筋(前面)
・大胸筋=硬く短縮
・小胸筋=硬く短縮
・前鋸筋=過剰活動
② 弱化筋(後面)
・菱形筋=伸ばされて弱化(本記事)
・僧帽筋中部・下部=機能低下
③ 結果として
・肩甲骨の外転+前傾
・胸が閉じる
・「猫背・巻き肩」の完成
「現代人の8割が猫背・巻き肩」:
日本人の約7〜8割が猫背・巻き肩傾向:
① 子供から始まる
・ゲーム・タブレット
・勉強姿勢
・スマホ早期使用
② 大人で完成
・長時間のデスクワーク
・運動不足
・ストレス
③ 高齢で固定化
・骨格の変形
・円背
・不可逆的
「下位交差症候群」:
菱形筋弱化が関わる姿勢パターン:
① 下位交差症候群
・骨盤前傾
・大臀筋・腹筋弱化+腸腰筋・脊柱起立筋短縮
② 上位交差症候群
・巻き肩・頭部前方位
・菱形筋・僧帽筋弱化+大胸筋・後頭下筋短縮
これら両症候群が連動することで全身の姿勢が崩れます。
「猫背・巻き肩の悪影響」:
① 肩こり・首こり
・菱形筋・僧帽筋の慢性疲労
・「現代人の国民病」
② 呼吸の浅さ
・胸郭の動き制限
・慢性的な酸欠
・疲労感
③ 肩関節障害
・インピンジメント
・四十肩・五十肩
・腱板炎
④ 頚椎症
・ストレートネックと連鎖
・頚椎への負担
⑤ 自律神経の乱れ
・交感神経優位
・不眠・うつ
⑥ 内臓圧迫
・消化不良
・胃食道逆流
⑦ 見た目の老化
・10歳以上老けて見える
・自信なさげな印象
関連する障害:
① 慢性肩こり
・菱形筋の慢性疲労
・マッサージで一時改善のみ
② 肩甲背神経痛
・菱形筋の痛み
・頚部の問題から発症
③ 胸郭出口症候群
・巻き肩での神経血管圧迫
・手のしびれ
④ 肩関節周囲炎
・肩甲骨機能不全
・四十肩・五十肩
⑤ 投球障害肩
・スカプラディスキネジア
・パフォーマンス低下
⑥ 緊張型頭痛
・菱形筋トリガーポイント
・関連痛として頭部に
改善法:
① 菱形筋強化(最重要)
(a) シーテッドロー
・引く動作
・菱形筋+僧帽筋中部
(b) リバースフライ
・うつ伏せまたは立位
・肩甲骨を寄せる
(c) バンドプル・アパート
・セラバンド使用
・菱形筋を意識
② 大胸筋ストレッチ
・胸を開く動作
・巻き肩予防
③ 姿勢意識
・胸を張る
・顎を引く
・1時間に1回の姿勢リセット
④ 環境改善
・モニター位置調整
・適切な椅子
・立ち作業の導入
⑤ 全身運動
・水泳(背泳ぎ)
・ヨガ
・ピラティス
⑥ 早期受診
・持続する痛み
・手のしびれ
・整形外科へ
まとめ
菱形筋群の筋力チェックについて解説してきた内容を整理します。
・腹臥位で患側上肢90度外転+内旋+頭部は患側へ
・床方向への圧に対して上肢を保持
・最大内旋位で僧帽筋中部の関与を最小化
・左右比較で弱化を判定
・神経リンパ反射点:左側第6〜7肋骨間+T6〜T7椎弓板
・関連臓器(応用キネシオロジー):肝臓(胃)
・「肩甲骨を背骨に引き寄せる縁の下の力持ち」
・大菱形筋+小菱形筋の2筋構成
・肩甲背神経支配
・「下方回旋」に重要
・猫背・巻き肩の主要因
・「上位交差症候群」の中心
・僧帽筋中部とは肩関節回旋位で区別
菱形筋群の機能評価は姿勢改善+猫背・巻き肩予防+肩こり改善+消化機能の参考指標として活用できます。整体・カイロ・トレーナーの現場で活用される基礎的な評価法です。日常的にもシーテッドロー+リバースフライ+バンドプル・アパート+大胸筋ストレッチ+姿勢改善で菱形筋群の健康を維持しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「肩こり」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本整形外科学会「肩こり・姿勢」https://www.joa.or.jp/
・日本理学療法士協会「姿勢と肩甲骨」https://www.japanpt.or.jp/
・日本肩関節学会「肩関節疾患」https://katakansetsu.jp/
・国際応用キネシオロジー学会「Manual Muscle Testing」https://www.icakusa.com/










