烏口腕筋とは|起始停止・神経支配と肩関節水平内転・筋皮神経の関係を解説

烏口腕筋

烏口腕筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

烏口腕筋(うこうわんきん)とは肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)から起始する小さな筋肉です。英語では「coracobrachialis muscle」と呼ばれます。

烏口腕筋は主に肩関節の屈曲や水平内転に関与しますが、いずれも主働筋の補助的な役割しか果たしません。しかし、筋皮神経の通り道として臨床的に極めて重要な意味を持つ筋肉です。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

烏口腕筋の正しい起始停止・作用は?
「烏口突起」から起こる他の筋との関係は?
筋皮神経の通り道としての役割は?
結帯動作で肘や前腕が痛い原因は?

例え話で言うと、烏口腕筋は「腕を体の前で交差させる縁の下のサポーター」のような存在です。小さく目立たない筋ですが、大胸筋や上腕二頭筋の働きを補助しつつ、筋皮神経の通路として重要な役割を担っています。

英語名称

coracobrachialis muscle(コラコブレイキアリス・マッスル)

「coraco(烏口の)」+「brachialis(上腕の)」で構成された名称で、文字通り「烏口突起と上腕骨を繋ぐ筋」を意味します。

烏口腕筋の解説

烏口腕筋(うこうわんきん)は肩甲骨の烏口突起から起始し、上腕骨の内側中央に停止する比較的小さな筋肉で、この筋自体はあまり大きな力を発揮することはできません。

烏口腕筋は肩関節の屈曲や内転といった動作では上腕筋上腕二頭筋などの補助的な役回りしか果たしませんが、唯一、肩関節の水平内転だけは重要な役目を果たしています。

なので、バーベル・ベンチプレスのように肩関節を水平内転させるようなエクササイズを行うことは烏口腕筋の訓練には最適といえます。

烏口腕筋のストレッチを行うには肩関節の過度に伸展させるか、あるいは過度に水平伸展させることで効率良く引き延ばすことができます。

日常動作の中で烏口腕筋は腕を前に交差させたり、腕を前方に持ち上げる動作などに主に関与します。

「烏口突起」から起こる3つの筋

烏口突起は肩甲骨の前面にある小さな突起で、ここから3つの筋肉が起始するという解剖学的に重要なランドマークです:

烏口腕筋:肩関節の水平内転・屈曲補助
上腕二頭筋短頭:力こぶ・肘屈曲
小胸筋:肩甲骨の下制・下方回旋

これら3つの筋は連動して働き、烏口突起部分の圧痛や疼痛はいずれかの筋(または腱)の炎症を示唆します。

起始

肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)

烏口突起の先端から起始します。上腕二頭筋短頭と共通の起始点です。

停止

上腕骨の内側中央

上腕骨の内側の中央あたり、ちょうど肘と肩の中間地点に停止します。

烏口腕筋の主な働き

肩関節の屈曲 肩関節の水平内転 肩関節の内転

運動動作においては肩関節屈曲(補助的に働く)、水平内転内転させる作用を持ちます。

主な役割:

肩関節の水平内転(腕を体の前で交差):唯一の主作用
肩関節の屈曲(補助):上腕二頭筋・上腕筋のサポート
肩関節の内転(補助)
筋皮神経の通り道:解剖学的に重要

烏口腕筋と筋皮神経の臨床的関係

烏口腕筋は単なる「補助筋」以上の重要性を持ちます。それは筋皮神経の通り道としての役割です。

支配神経は腕神経叢の外側神経束の枝である筋皮神経が司っています。筋皮神経は烏口腕筋を通過後、上腕二頭筋・上腕筋に分布し、前腕外側皮神経として肘窩(ちゅうか)から前腕外側の知覚を司ります。

つまり烏口腕筋は筋皮神経のトンネルのような役割を担っており、烏口腕筋の過緊張や肥厚があると神経絞扼を起こすことがあります。

結帯動作と烏口腕筋の神経絞扼

結帯動作(手を腰の後ろに回す動作、例:エプロンのひもを結ぶ・後ろ手)で肘から前腕外側に疼痛を訴える場合は、烏口腕筋での神経絞扼を疑う必要があります。

症状の特徴:
結帯動作で肘〜前腕外側に痛み・しびれ
肩前面の圧痛(烏口突起付近)
前腕外側の感覚異常

整形外科で「腕神経叢の障害」「神経絞扼性障害」として診断されるケースがあります。

烏口突起炎

烏口突起付近でしばしば疼痛が発症することがありますが、骨に損傷が認められない場合は烏口腕筋の腱の炎症(烏口突起炎)を疑った方が良いかもしれません。

烏口腕筋・上腕二頭筋短頭・小胸筋のいずれの腱の炎症でも烏口突起部の圧痛を引き起こします。

烏口腕筋を支配する神経

筋皮神経(C5〜C7)

腕神経叢の外側神経束から分岐します。同じ筋皮神経が上腕二頭筋・上腕筋も支配しており、これらを「筋皮神経支配の上腕屈筋群」として一括りに覚えると整理しやすいでしょう。

日常生活動作

日常生活では腕を前に交差させたり、腕を前方に持ち上げる動作などに主に関与します。

烏口腕筋には大胸筋三角筋の働きを補助する働きもあります。

具体的には:

腕を体の前で組む動作
抱きしめる動作
シートベルトを締める動作
カバンを抱える動作

スポーツ動作

大胸筋や三角筋と共に野球やテニスのスイング動作や砲丸、やりを投げるといった動作に関与します。

特に重要なスポーツ:
野球(投球・バットスイング)
テニス・卓球(フォアハンド)
砲丸投げ・やり投げ
ボクシング(フック)
水泳(クロールのプル動作)

関連する疾患

烏口突起炎(うこうとっきえん)、肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)、筋皮神経麻痺(きんぴしんけいまひ)

① 烏口突起炎

烏口腕筋・上腕二頭筋短頭・小胸筋いずれかの腱の炎症で、烏口突起部に圧痛・疼痛が出ます。

② 筋皮神経麻痺

筋皮神経が損傷すると、烏口腕筋・上腕二頭筋・上腕筋が同時に麻痺。肘の屈曲筋力低下+前腕外側のしびれが特徴。

③ 烏口腕筋による神経絞扼

烏口腕筋の過緊張・肥厚で筋皮神経が圧迫されると、前腕外側のしびれや痛みを引き起こします。

④ 肩関節周囲炎

肩前面の痛みの原因に烏口腕筋・烏口突起付着筋群が関与することがあります。

烏口腕筋を鍛えるトレーニング

烏口腕筋単独を鍛える種目はありませんが、複合種目で効率よく刺激できます。

① バーベルベンチプレス
肩関節の水平内転動作を含むため、烏口腕筋に最適。

② ダンベルフライ
腕を体の前に大きく寄せる動作で烏口腕筋に効きます。

③ ケーブルクロスオーバー
腕を体の前で交差させる動作が烏口腕筋に直接刺激を与えます。

④ ダンベルプレス
ベンチプレスより可動域が広く、烏口腕筋を含む上腕屈筋群を刺激。

⑤ ストレッチ
両手を後ろで組み、腕を上方に持ち上げる動作で烏口腕筋を効率よく伸ばせます。20〜30秒キープ×2〜3セット。

よくある質問(FAQ)

Q1. 烏口腕筋はどこにある?
肩甲骨の烏口突起から上腕骨内側中央に向かって走行する細長い筋。大胸筋の深層、上腕二頭筋短頭の隣に位置します。

Q2. 結帯動作で肘や前腕が痛い場合は?
烏口腕筋での神経絞扼の可能性があります。筋皮神経が烏口腕筋を貫通する解剖学的特性が原因。整形外科で検査を受けることをおすすめします。

Q3. 烏口突起の痛みは何が原因?
烏口突起炎の可能性が高いです。烏口腕筋・上腕二頭筋短頭・小胸筋のいずれかの腱の炎症が考えられます。

Q4. 烏口腕筋単独で鍛えられる?
単独での意識は難しいですが、ベンチプレス・ダンベルフライ・ケーブルクロスオーバーなどの胸トレで自然に強化されます。

Q5. 筋皮神経麻痺の症状は?
肘の屈曲筋力低下(上腕二頭筋・上腕筋・烏口腕筋が同時麻痺)+前腕外側のしびれが特徴です。

Q6. 烏口腕筋のストレッチ方法は?
両手を背中の後ろで組んで、腕を上に持ち上げる動作。または壁に手をついて体を反対方向に開く動作で、烏口腕筋がストレッチされます。

まとめ

烏口腕筋について解説してきた内容を整理します。

肩甲骨の烏口突起から起こり、上腕骨内側中央に停止
・小さな筋だが筋皮神経の通り道として臨床的に重要
・主作用は肩関節の水平内転(唯一の主作用)
・支配神経は筋皮神経(C5〜C7)
・烏口突起から起こる3つの筋(烏口腕筋・上腕二頭筋短頭・小胸筋)の一つ
結帯動作の痛みは神経絞扼の可能性
烏口突起炎の原因筋の一つ
ベンチプレス・ダンベルフライなどで自然に強化

烏口腕筋は小さく目立たない筋ですが、筋皮神経の通り道として、また肩前面の機能を支える重要な筋肉です。肩前面〜前腕外側に違和感がある方は、烏口腕筋関連の障害を疑ってみる価値があります。

その他の上腕部の筋肉
上腕二頭筋上腕三頭筋上腕筋肘筋

参考文献・出典

・Wikipedia「烏口腕筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/烏口腕筋

・看護roo!「烏口腕筋」https://www.kango-roo.com/word/20059

・rehatora.net「烏口腕筋の解剖と機能」https://rehatora.net/

・筋肉研究所「烏口腕筋」https://www.kinken.org/

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