オーバートレーニング症候群とは|症状・原因・回復方法を徹底解説

オーバートレーニング

『オーバートレーニング症候群(以下、OTS:Overtraining Syndrome)』とは適切な運動強度・量・頻度を超えた状態でトレーニングを中長期に渡り続けたことによって、肉体的・精神的にストレスが蓄積してしまった状態のことをいいます。

一度、このオーバートレーニング症候群に陥ってしまうと疲労がどんどん蓄積していってしまい、肉体的・精神的に非常に回復しにくい状態になってしまいます。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

オーバートレーニングとは何?
オーバーリーチングとどう違う?
どんな症状が出る?
陥ってしまったらどう回復する?

回復しない状態が長期間続くと身体のあちこちに負担がかかり、やがて怪我もしやすくなり、最終的にはパフォーマンスそのものが低下していってしまいます。

例え話で言うと、オーバートレーニング症候群は「身体の警告システムが鳴り続ける状態」です。本来は短期で消える疲労シグナルが、いつまでも消えず慢性的に鳴り続けるため、トレーニング効果は得られず、むしろ後退してしまいます。

オーバーリーチングとオーバートレーニング症候群の違い

症状が軽い場合は『オーバーリーチング(Overreaching)』と呼ばれます。

オーバーリーチングの場合はオーバートレーニング症候群とは異なり、症状は数日から1週間程度で回復します。

しかし、症状が重度の場合は、『オーバートレーニング症候群(OTS)』と呼ばれ、肉体的・精神的の回復に数週間から数ヶ月に及ぶこともあると言われています。

機能的オーバーリーチングと非機能的オーバーリーチング

近年のスポーツ医学では、オーバーリーチングをさらに2つに分類します:

① 機能的オーバーリーチング(FOR:Functional Overreaching)
計画的に負荷を増やした状態
・短期間(数日〜1週間)の休養で回復
・回復後にパフォーマンスが向上する
スーパーコンペンセーションを狙う計画的な手法

② 非機能的オーバーリーチング(NFOR:Non-functional Overreaching)
意図せず負荷をかけすぎた状態
・回復に数週間かかる
パフォーマンスは低下
・放置するとOTSに進行

③ オーバートレーニング症候群(OTS)
・回復に数ヶ月〜年単位
競技離脱の可能性
・身体的・精神的な深刻な症状
・最も深刻な状態

OTS は「FOR → NFOR → OTS」と段階的に進行します。早期発見+早期休養が予防の鍵です。

オーバートレーニングはスポーツ選手だけのもの?

オーバートレーニング症候群は何も日常的に身体を酷使しているスポーツ選手だけに限った話しではありません。

一般的な部活動を行なっている学生や社会人のスポーツ愛好家でもオーバートレーニング症候群に陥ってしまう可能性は十分にあります。

過密なスケジュールでトレーニングをした場合は勿論のこと、日々の勉強や仕事との兼ね合いの問題で、相乗的に疲労が溜まりオーバートレーニング症候群になってしまうことも珍しくありません。

また、部活動などにおいて、まだ身体の基礎(構造的・肉体的)も出来上がっていない学生に対し、それを考慮に入れずに練習をさせてしまうことでオーバートレーニング症候群になってしまうことも良くあります。

こうならないようにするためには指導者や上級者は『個人の体力』『身体の発達具合』などを考慮に入れて、運動強度や量・頻度・休息を考慮に入れながら運動指導をしなければなりません。

場合によっては完全休息を促す必要もあるかもしれません。

当然、個人でスポーツを楽しんでいるスポーツ愛好家はこれらを全て自己管理しなければならないのです。

『何かがいつもと違う』と感じたときは早めに医師やトレーナーなどの専門家に相談することをお勧めします。

オーバートレーニング症候群には種類がある?

症状が軽い場合は『オーバーリーチング』、症状が重度になると『オーバートレーニング症候群』と呼ばれるということは先にも触れました。

実はこのオーバートレーニング症候群は大きく『精神的』『身体的』の2つに大別することができます。

①精神的オーバートレーニング

精神的オーバートレーニングは一般的に専門競技者ほど陥りやすいと言われています。

競技力向上のために運動強度や量などをあまり考慮に入れず、ただがむしゃらに運動や練習を行うことでオーバートレーニング状態に陥っていってしまうのです。

オーバートレーニング状態になると疲労はどんどん溜まる一方で、やがてそれは全身の倦怠感や練習時の集中力の欠如などの諸症状を引き起こしてしまいます。

当然のことながらパフォーマンスは低下してしまうので良い結果など出せるわけがありません。場合によってはケガを頻繁に発症するようになってしまうこともあるかもしれません。

しかし、競技者本人は『調子が悪いのは自分のせいだ!トレーニングの強度や量・頻度が足りないから良い結果がでないだけなんだ!』と思い込んでしまうのです。

周りの環境(周囲から過剰な期待感)がそのような状態に競技者を追い込んでいってしまっているのかもしれません。

こうなってしまうとオーバートレーニング症候群の『負のスパイラル』が起きてしまい、やがて競技だけでなく生活面でも睡眠障害が起きたり、意欲の低下・動悸・息切れなどの諸症状が見られるようになってきます。

やがて、このことを切っ掛けに、競技を継続することは勿論のこと、普段の日常生活にまで支障がきたすようになっていきます。

オーバートレーニング症候群は場合によっては『うつ状態』を招き、重篤な精神疾患に発展しかねないので甘くみると大変危険です。

治療のために長期療養が必要になったり、入院を要する場合もあるので、これを切っ掛けに競技から離れ、引退してしまう競技者も出てきます。

これが『精神的オーバートレーニング』と呼ばれるものです。

かなり個人差(性格的な要素)があるので、誰しもがここまで重篤な状態に陥るとは限りませんが、こうならないためにも家族や指導者・上級者などの周りの人がしっかりと競技者をサポートしてあげることが大切になります。

②身体的オーバートレーニング

日常生活を営んでいる程度や軽度な運動を行っているくらいならさほど気にする必要はないと思いますが、この範疇を超えて過度に身体に負担を掛け続けると身体にストレスが溜まり身体に様々な諸症状を引き起こすことがあります。

例えば、テニス肘、野球肘ジャンパーズニーオスグッドシュラッター病ジャンパーズニー・ランナーズニーなどのいわゆるスポーツ障害がそれに相当します。

これらのスポーツ障害は身体を過使用することによって発症するケースがほとんどです。

勿論、身体が未成熟な頃に身体を酷使してしまうとその発症率は爆発的に高くなります

上記にあげた障害を総称して『オーバーユース(使いすぎ)症候群』といいます。

このように身体を酷使したことによる全身・または体の一部分に起こる筋・腱・関節の痛み『身体的オーバートレーニング』といいます。

オーバートレーニング症候群の6つの主要症状

オーバートレーニング症候群に陥ると様々なシグナルが身体に現れるようになります。

重篤なオーバートレーニング症候群に陥らないためにもオーバートレーニング症候群の兆候をある程度頭にとどめておく必要があると思います。

①筋トレの効果が出なくなりパフォーマンスが落ちてきた

例えば筋トレを行うと成長ホルモンや男性ホルモンが刺激されるので普通は筋力がついたり、筋肉が肥大(これを同化といい、筋肉が構築されるという意味です)化します。

しかし、オーバートレーニング症候群に陥ると副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの分泌量が増えすぎるため異化(筋肉を分解するという意味)作用が強く働いてしまい筋力の低下や筋肉の萎縮を招きます。

「鍛えているのに痩せていく」はOTSの典型的サインです。

②疲労がとれない

超回復

超回復

適度な運動強度や量・頻度で運動を実施し、その上で休息と栄養のバランスに気をつけてさえいれば筋肉の疲労はやがてとれ、身体は強くなります。

これを超回復といいますが、これが起こらず疲労感がいつまでたっても抜けず、筋肉が萎縮したり筋力が低下するようならオーバートレーニング症候群を疑います

③ケガをしやすくなった

一概にいうことができませんがオーバートレーニング症候群に陥ると頻繁に怪我をしやすくなります

最初のうちは痛めてしまった場所は一カ所かもしれませんが、それを庇っている状態で運動を続けていくとやがて他の場所にも痛みが発症するようになります。

「ケガの連鎖」はOTSの危険信号です。

④風邪を引きやすくなった

上気道感染症(風邪症候群)と免疫との関係は非常に有名な話です。

適度な運動をすることで免疫能力を高めることができるのですが、過度な運動を行ってしまうと却って免疫能力が低下してしまいます。

最近、風邪を頻繁にひくようになった、また、風邪の治りが悪いと思ったらオーバートレーニング症候群を一度疑ってみてください

これは「オープンウィンドウ理論」と呼ばれ、過度な運動後に免疫機能が一時的に低下する現象として知られています。

⑤貧血がひどくなった

これも一概にいうことが出来ませんが、オーバートレーニング症候群に陥ると赤血球の破壊に対して再生が追い付かなくなってしまうことがあります。

特に足の裏を激しく打ち付けるスポーツ(マラソン、バレー、剣道、バスケットなど)選手に多くみられます。

『スポーツ性貧血』になるとパフォーマンスが低下してしまい、非常に疲れやすい状態に陥ってしまいます。

異常を感じたら速やかに病院にいくことをお勧めします。

⑥集中力が著しく欠ける

オーバートレーニング症候群により交感神経が過剰に働き過ぎ、落ち着きがなくなってしまったり、集中力が欠如してしまいます。

人によっては不安感で押しつぶされそうになる方もいます。

これは精神的オーバートレーニングの兆候でもあります。

その他のサインとして:
安静時心拍数の増加(朝起きた時の脈拍が普段より5〜10拍多い)
食欲不振
体重減少
睡眠の質低下
イライラ・抑うつ気分
性欲低下

この他にもオーバートレーニング症候群の兆候はたくさんありますが、ひとまずこれだけ覚えておけば早期発見ができると思います。

もしもオーバートレーニング症候群に陥ってしまったら

上述のような各種症状が見られるようになったらまずは運動強度・量・頻度などを少な目にし、休息や栄養を十分に摂るように心掛けてみてください。

これでも解決しない場合は身体の状態を医療機関で診てもらう必要があると思います。

検査方法
検査は血液検査と心理テストが用いられるのが一般的です。

血液検査ではヘモグロビン値などを調べ、貧血を起こしていたり、肝臓機能に異常が見られるようならオーバートレーニング症候群が疑われます。

ただし、こういった症状は他の病気の可能性もあるので、それらときっちりと見分けることが大切です。

回復への道のり

① 完全休養(最重要)
症状の重さに応じて数週間〜数ヶ月の完全休養が必要。

② 段階的復帰
症状改善後も徐々に運動量を戻す。決して焦らない。

③ 栄養の見直し
タンパク質・炭水化物・ビタミン・ミネラルをバランス良く。

④ 睡眠の質向上
1日7〜9時間の質の高い睡眠。

⑤ ストレス管理
精神的ストレスの軽減も重要。

⑥ 専門家のサポート
医師・トレーナー・スポーツ栄養士の連携。

競技に復活する際にはオーバーワークを再発しないよう、くれぐれもパフォーマンスレベルを早く戻そうと焦らないことが大切になります。

オーバートレーニング症候群の予防策

最も重要なのは「予防」です:

① 適切な休息日の設定
週に1〜2日の完全休養日を設ける。

② 周期化(ピリオダイゼーション)
高強度期と低強度期を計画的に組み合わせる。

③ 自己モニタリング
安静時心拍数の記録(朝起きた時)
体重の記録
睡眠の質の記録
気分の変化を記録

④ バランスの良い栄養
特に炭水化物の十分な摂取(グリコーゲン回復)。

⑤ 質の高い睡眠
睡眠時間+睡眠の質の確保。

⑥ ストレス管理
仕事・勉強・人間関係のストレスも含めた総合管理。

⑦ 定期的なメディカルチェック
血液検査などで身体の状態を客観評価。

⑧ 早期の異変サイン認識
「何かがおかしい」と感じたら早めに休む勇気。

まとめ

オーバートレーニング症候群について解説してきた内容を整理します。

・適切な運動強度・量・頻度を超えた継続的なトレーニングで発症
オーバーリーチング(軽度)→オーバートレーニング症候群(重度)と進行
精神的・身体的の2タイプに大別
・主要症状はパフォーマンス低下・疲労蓄積・ケガ・風邪・貧血・集中力低下
スポーツ選手だけでなく学生・愛好家も対象
コルチゾール過剰分泌による筋肉異化が中心
・回復には完全休養+栄養+段階的復帰
・予防が最重要

オーバートレーニング症候群は「身体の警告システムが鳴り続ける状態」。早期発見+早期休養+焦らない復帰がカギです。「何かがいつもと違う」と感じたら、ぜひ自分の身体の声に耳を傾けてください。

参考文献・出典

・Wikipedia「オーバートレーニング症候群」https://ja.wikipedia.org/wiki/オーバートレーニング症候群

・厚生労働省 e-ヘルスネット「運動と疲労」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

・日本スポーツ協会「スポーツ医学・科学」https://www.japan-sports.or.jp/

・American College of Sports Medicine(ACSM)「Overtraining Syndrome」https://www.acsm.org/

・日本整形外科学会「スポーツ障害」https://www.joa.or.jp/

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