『サルコペニア』とは加齢になればなるほど全身の筋肉量や筋力が減ってしまう現象のことをいいます。
サルコペニアという用語は、Irwin Rosenbergによって生み出された造語で、ギリシャ語で筋肉を表す「sarx (sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた言葉です。健康長寿ネットさまからの引用
サルコペニアは特に握力や下半身、体幹部などの筋力が著しく低下してしまった状態を指す場合が多く、これらの筋力が低下してしまうことで日常生活の様々な基本動作に支障をきたすようになります。
例えば、『歩くスピードが遅くなる』『手に持っていた荷物などを頻繁に落とすようになる』『階段の上り下りで手すりが必ず必要になる』といった症状が現れるようになるのです。
このように全身の筋肉量や筋力が低下してしまうことで、必然的に日常生活の行動範囲や活動量が減ってしまうのがサルコペニアの特徴です。
これをきっかけにほんの些細なことでバランスを崩して転倒するようになったり、怪我や骨折、高齢者であればそのまま寝たきりになってしまうことも珍しくありません。
サルコペニアは高齢者にだけ見られる症状ではなく、40歳代の働き盛りの比較的若い年代にも見られ、実に4人に1人がサルコペニア予備軍とも言われます。
果たしてこのサルコペニアを防ぐ有効な手立てはないのでしょうか?
サルコペニアは加齢が決定的な要因になるわけではない。
サルコペニアは加齢の他に、運動不足や栄養の偏りなども原因の一つと考えられています。
ご存知のとおり、筋肉は筋トレなどの運動を行うことで発達します。
また、筋トレで破壊された筋肉を修復し、さらなる発達を促すには十分なタンパク質やアミノ酸の摂取を心掛ける必要があります。
しかし、高齢者になってくると、高血圧や肥満、糖尿病と言った生活習慣病になってしまう方が多くなるので、この頃から次第に身体に違和感や痛みを感じ、身体を動かすのがとても辛くなってしまうのです。
そのため、日常生活で身体を使う機会がほとんどなくなってしまい、ますます筋肉量が減っていってしまいます。
また、食事面において、タンパク質の摂取(肉類)を積極的にしない方は、体内の筋肉量が維持することもできなくなるのでドンドン筋肉量が減っていってしまいます。
このように加齢だけではなく、運動不足と栄養の偏りがサルコペニアに繋がる大きな要因になっているのです。
サルコペニアを防ぐには適度な運動とバランスの取れた食事が大切
サルコペニアが起こりやすいと言われる筋肉は、いわゆる抗重力筋(こうじゅうりょくきん)と呼ばれる筋肉群と言われています。
抗重力筋は読んで字のごとく重力に対し常に対抗している筋肉のことで、脊柱起立筋や腹直筋、大腿四頭筋、腸腰筋、大臀筋などが挙げられます。
抗重力筋が衰えることで重力に対し、打ち勝つことができなくなるので、立ち上がることや歩くといった人間の行動の基本動作に支障をきたすようになります。
例えば、立ち上がる際に無意識に両手をテーブルについたり、何の段差ないところでつまずくようになったらかなり症状が進行していると言えるかもしれません。
サルコペニアの診断基準は、歩く速さが秒速0.8m以下と言われ、0.8mとは一般の横断歩道を青信号で渡り切れる速さと言われています。
握力は、男性は26㎏未満、女性が18㎏未満が判断基準となっていて、握力を測定した時にこれらの数値を大きく下回った時はサルコペニア予備軍と診断されることがあります。
サルコペニアの簡単なチェック方法として、『片足立ちで靴下が履けるか』、『椅子に座った状態から片足で立ち上がることができるか』、『片足だけで60秒立っていることができるか』といったものがあります。
これらのチェックで一つでも出来ないと場合は下半身の筋力が著しく低下していて既にサルコペニアになってしまっている可能性があります。
人の筋肉量は20歳代がピークだと言われ、30歳代に入ると年に1%の割合で筋肉量が減少するといわれています。
しかし、これは運動を全くしていない人に限っての話であり、定期的に筋力トレーニングを続けている方には当てはまりません。
そのため、30歳代に入った頃からは積極的に筋肉を維持するように努力する必要があります。
放っておくと、若くしてサルコペニアになってしまうリスクが高くなってしまいます。
予防法としては自重を利用したスクワットやつま先立ちをするといった運動が推奨されます。
食事においては赤みの肉とか魚など、必須アミノ酸が含まれた食品を多目に摂取することを心掛け、牛乳や卵、大豆製品なども日々摂取するようにします。
勿論、ビタミンやミネラル類も積極的に摂取し、栄養バランスに気を配ることがとても大切になります。
絶対にそのまま放置してはいけないサルコペニア
このサルコペニアの状態を放置してしまうと、やがて骨や関節、筋肉、神経と言った運動器に障害が起こり、日常生活に影響が出る『ロコモティブシンドローム』に発展していってしまいます。
更には、筋肉が衰えた状態から肥満になってしまう『サルコペニア肥満』にも繋がります。
このような状態に陥ると段差があるところでは勿論、段差がないところでも転倒しやすくなり、それがきっかけで骨折することがあります。
骨折した場所などにもよりますが、大腿骨や大腿骨頭などを骨折してしまうと、そのまま寝た切り状態になってしまうこともあり、健康寿命を著しく損なってしまいます。
20歳代や30歳代はまだまだ若いからといって運動をせずにいたり、食事の内容も考えずにいたりすると筋肉量は確実に減っていきます。
例外はありません。
健康な暮らしが一日でも長く続くように、一刻も早く生活改善をはかるようにしましょう。