第三腓骨筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
第三腓骨筋(だいさんひこつきん)とは長趾伸筋の外側を走行する小さな筋肉です。英語では「peroneus tertius muscle」と呼ばれます。
第三腓骨筋は長腓骨筋・短腓骨筋などとともに足関節の外反を補助する作用を持ち、足関節の背屈動作にも関与する筋肉です。「腓骨筋群唯一の背屈筋・ヒトに特有な進化筋」として、他の腓骨筋群とは異なるユニークな特徴を持つ筋肉です。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・第三腓骨筋の正しい起始停止・作用は?
・なぜ「第三」?
・なぜヒトに特有の筋?
・欠損する人がいるって本当?
例え話で言うと、第三腓骨筋は「ヒトの二足歩行に進化した小さなアクセル筋」のような存在です。他の腓骨筋群が底屈に作用する中、唯一背屈に作用し、ヒトの直立二足歩行に特化したユニークな筋です。
英語名称
peroneus tertius muscle(ペロネァス・ターシャス・マッスル)
「peroneus(腓骨の)」+「tertius(第三の)」で構成された名称。「腓骨の3番目の筋」を意味します。長腓骨筋・短腓骨筋に続く3番目の腓骨筋として命名されました。
第三腓骨筋の解説
第三腓骨筋(だいさんひこつきん)は長腓骨筋・短腓骨筋とともに下腿の側面にある筋肉で主に足関節を外反させる作用を持ちます。(小指側を持ち上げる)
また、第三腓骨筋は長腓骨筋の補助筋として足関節の底屈にも関与しています。
第三腓骨筋(だいさんひこつきん)は長趾伸筋の外側を走行する小さな筋で第三腓骨筋は長趾伸筋の一部の筋束が枝分かれして出来た筋です。
第三腓骨筋は先天的に欠損している方も多い筋肉で日本人の約5%はないと言われています。
この筋肉は足関節を背屈させるウエイトトレーニングで鍛えることができます。またタオルギャザーと呼ばれる床の上においたタオルを足の指だけでたぐり寄せるエクササイズでも鍛えることができます。
第三腓骨筋は他動的に足と足関節を極端な内反及び底屈位にもっていくことでストレッチをすることができます。
第三腓骨筋は長趾伸筋から分岐した特殊な筋
第三腓骨筋を理解する上で最重要なのが「長趾伸筋からの分岐」です:
解剖学的事実
第三腓骨筋は独立した筋として進化したわけではなく、長趾伸筋の一部の筋束が分かれて発達した筋です。
長趾伸筋との関係:
・同じ筋膜に包まれている
・同じ神経支配(深腓骨神経)
・類似の作用(背屈)
・解剖学的に「長趾伸筋の第5束」と見なされることも
「腓骨筋」と呼ばれる理由の矛盾:
他の腓骨筋群(長腓骨筋・短腓骨筋):
・浅腓骨神経支配
・底屈作用
・外反作用
第三腓骨筋:
・深腓骨神経支配(長趾伸筋と同じ)
・背屈作用(他と逆!)
・外反作用
機能的にも神経的にも他の腓骨筋とは異なるのですが、位置が腓骨筋群の近くにあることから歴史的に「第三腓骨筋」と命名されました。
解剖学的にユニークな点:
① 神経支配が異なる
腓骨筋群で唯一深腓骨神経支配。
② 作用が異なる
腓骨筋群で唯一背屈に作用。
③ 起源が異なる
長趾伸筋からの分岐で、他の腓骨筋群とは発生学的起源が違う。
④ 個体差が大きい
存在する人・しない人がいる。
これらの特徴から、第三腓骨筋は「腓骨筋群の仲間」というより「長趾伸筋の親戚」と言えるでしょう。
第三腓骨筋=ヒトに特有な筋|二足歩行への進化
第三腓骨筋には「ヒトに特有な筋」という興味深い特徴があります。
進化的な事実:
第三腓骨筋はヒトと一部の類人猿にのみ存在する筋。多くの動物には存在しません。
動物との比較:
四足歩行の動物(犬・馬など):
・第三腓骨筋は欠損または機能が異なる
・足は地面と平行に動く必要なし
・つま先を上げる動作が重要でない
類人猿(チンパンジー・ゴリラ):
・第三腓骨筋は存在するが小さい
・部分的な二足歩行
・ヒトほど発達していない
ヒト:
・第三腓骨筋が最も発達
・完全な直立二足歩行
・つま先を上げる動作が重要
なぜヒトに発達したのか:
① 二足歩行への適応
完全な直立二足歩行ではつま先を上げる動作が必須。
② つまずき予防
歩行中に常につま先を上げる必要があるため、前脛骨筋+第三腓骨筋の協働が重要。
③ アライメント制御
歩行時の足の方向制御に外反作用が必要。
④ 不整地での対応
ヒトは多様な地形を歩くため、足首の細かな調整が必要。
進化的な意義:
第三腓骨筋はヒトの直立二足歩行への適応の証。長趾伸筋から分岐して発達した「進化のお土産」と言える筋です。
機能的な役割:
第三腓骨筋は小さな筋ですが、ヒトの歩行に独自の貢献:
① 背屈の補助
前脛骨筋+長趾伸筋とともにつま先を上げる。
② 外反の補助
腓骨筋群とともに足の外側を持ち上げる。
③ 着地時の調整
歩行のリズムに合わせて細かな調整。
④ 二方向への引き上げ
背屈+外反の同時動作で、足の外側上方への動きを実現。
第三腓骨筋は単独では弱いですが、他の筋と連携することで歩行の繊細な制御を可能にしています。
第三腓骨筋の個体差|欠損する人の特徴
第三腓骨筋は個体差が大きい筋として知られています:
欠損の頻度:
・日本人:約5%が欠損
・欧米人:約5〜10%が欠損
・地域差:人種・民族により差がある
欠損していても問題ない?
基本的には欠損していても日常生活に支障はありません:
・他の筋(前脛骨筋・長趾伸筋)が代償
・歩行・走行は問題なく可能
・気づかない人がほとんど
欠損する原因:
① 遺伝的要因
家系内で欠損する傾向あり。
② 発生学的個体差
胎児期の発生過程での違い。
③ 進化の名残
ヒトに特有の筋として、まだ進化途中とも考えられる。
欠損の確認方法:
① 自分で確認するのは困難
表面から触診しても判断しにくい。
② 解剖学的検査
MRIなどで確認可能。
③ 多くの場合は気づかない
症状がないため、気づかずに過ごす人がほとんど。
欠損していると分かる場面:
・解剖実習で発見されることが多い
・医学的検査で偶然発見
・足首の手術の際に発見
進化の不思議:
ヒトに特有な筋でありながら欠損する人がいるという事実は、進化の過程でこの筋の重要性がまだ完全に確立していないことを示唆します。
第三腓骨筋の存在・欠損は、ヒトの進化の現在進行形を見せてくれる興味深い解剖学的事実です。
起始
腓骨の下部前面
長趾伸筋の起始と隣接した部位から起こります。
停止
第五中足骨底背面
足背の外側、短腓骨筋停止部の近くに停止します。
第三腓骨筋の主な働き

主な役割:
・足関節の背屈(腓骨筋群で唯一)
・足関節の外反
・歩行時のつま先上げ補助
・長趾伸筋の補助
・足の方向制御
第三腓骨筋を支配する神経
深腓骨神経(L4〜S1)
長趾伸筋・前脛骨筋と同じ深腓骨神経の支配を受けます。長腓骨筋・短腓骨筋(浅腓骨神経)とは異なる支配神経です。
日常生活動作
歩いたり、走ったりするときに足裏と地面が向き合うように補助します。
具体的には:
・歩行(つま先上げ+外反)
・階段昇降
・不整地の歩行
・立位での足の方向制御
毎日の歩行で活躍する筋。
スポーツ動作
トレッキング・ビーチバレーなどのスポーツ動作に大きく貢献します。
特に重要なスポーツ:
・トレッキング(不整地)
・ビーチバレー(砂浜)
・陸上競技
・サッカー
・テニス
地面の状態が一定でないスポーツで特に活躍。
関連する疾患
内反捻挫
① 内反捻挫
腓骨筋群弱化で発症リスク増加。第三腓骨筋も予防に貢献。
② 下垂足(drop foot)
深腓骨神経麻痺で前脛骨筋・長趾伸筋・第三腓骨筋すべてが麻痺。歩行困難。
③ コンパートメント症候群
下腿前面・外側の筋膜内圧上昇。第三腓骨筋を含む。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ
第三腓骨筋を効果的に鍛えるトレーニング
① タオルギャザー
床のタオルを足趾だけで手繰り寄せる。足部全体の機能的強化。1日5分。
② チューブでの背屈+外反
チューブで抵抗をかけながら足首を上+外側に動かす。第三腓骨筋の特異的活性化。
③ かかと歩き
かかとだけで歩く。前脛骨筋+長趾伸筋+第三腓骨筋を機能的強化。
④ つま先上げ+外反
座位でつま先を上+外側に動かす意識的トレーニング。
⑤ バランスディスクでの片足立ち
不安定面でのバランス練習。複数の足首筋の協働。
頻度の目安:
週3〜5回。捻挫経験者・転倒予防が必要な高齢者は毎日軽めに継続もOK。
第三腓骨筋のストレッチ・セルフケア
①内反+底屈ストレッチ
座位で足首を内反+底屈方向に他動的にストレッチ。30秒×3回×左右。
②正座での足甲ストレッチ
正座で足甲を床につけ体重をかける。前脛骨筋+長趾伸筋+第三腓骨筋を同時にケア。
③下腿前面のリリース
下腿前面〜外側をフォームローラーで圧迫リリース。
④温める
下腿外側をお風呂で温めて緊張緩和。
⑤足指の運動
足趾の動きで足部全体の機能維持。
よくある質問(FAQ)
Q1. 第三腓骨筋はどこにある?
下腿前外側の長趾伸筋の外側。腓骨下部前面から起こり、第5中足骨底背面に停止する小さな筋です。
Q2. なぜ「第三」?
長腓骨筋・短腓骨筋に続く3番目の腓骨筋として命名されました。
Q3. 他の腓骨筋と作用が違う?
はい。長腓骨筋・短腓骨筋が底屈に作用するのに対し、第三腓骨筋は背屈に作用する唯一の腓骨筋です。
Q4. 欠損している人がいるって本当?
はい。日本人の約5%、欧米人の約5〜10%が先天的に欠損しています。日常生活には支障ありません。
Q5. なぜヒトに特有?
直立二足歩行への進化に伴って発達した筋。四足歩行の動物には基本的に存在せず、ヒトと一部の類人猿のみ持つ筋です。
Q6. 第三腓骨筋を効率的に鍛える方法は?
タオルギャザー+チューブでの背屈+外反。他の足首筋と一緒に鍛えることで効率的に強化できます。
まとめ
第三腓骨筋について解説してきた内容を整理します。
・腓骨下部前面から起こり、第5中足骨底背面に停止
・長趾伸筋から分岐した筋
・主作用は足関節背屈+外反
・支配神経は深腓骨神経(L4〜S1)
・腓骨筋群で唯一の背屈筋
・ヒトに特有な筋
・二足歩行への進化の証
・日本人の約5%が先天的に欠損
・タオルギャザーで効率強化
第三腓骨筋は小さな筋ですが、ヒトの直立二足歩行を可能にした進化の証として、解剖学的にも進化学的にも興味深い筋です。欠損していても日常生活に支障はありませんが、存在する方は意識的なケアで歩行機能の維持に役立てましょう。
【下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)・前脛骨筋・後脛骨筋・腓骨筋群(長腓骨筋・短腓骨筋)・足底筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・長母趾伸筋・長趾伸筋】
参考文献・出典
・Wikipedia「第三腓骨筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/第三腓骨筋
・看護roo!「第三腓骨筋」https://www.kango-roo.com/word/20146
・日本整形外科学会「足部疾患診療ガイドライン」https://www.joa.or.jp/
・厚生労働省 e-ヘルスネット「ロコモティブシンドローム」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・rehatora.net「第三腓骨筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/






