ハムストリングスの筋力チェック
この記事では、ハムストリングスの筋力チェック方法を解説します。
・ハムストリングスの筋力チェック手順
・正しい測定のためのポイント
・神経リンパ反射と関連臓器
・肉離れ・骨盤前傾改善との関連
ハムストリングスは「大腿後面の3兄弟」。大腿二頭筋+半腱様筋+半膜様筋の3筋で構成され、股関節伸展+膝関節屈曲+骨盤後傾に重要な役割を担います。応用キネシオロジー(AK)では直腸との関連も研究されています。
ハムストリングスとは|大腿後面の3兄弟
ハムストリングスは3つの筋の総称:
① 大腿二頭筋(だいたいにとうきん)
・大腿後面外側
・長頭:二関節筋(股関節伸展+膝関節屈曲)
・短頭:単関節筋(膝関節屈曲のみ)
② 半腱様筋(はんけんようきん)
・大腿後面内側
・二関節筋
・腱が長い
③ 半膜様筋(はんまくようきん)
・大腿後面内側深層
・二関節筋
・膜状の腱が広い
主な作用:
・股関節の伸展(主作用)
・膝関節の屈曲(主作用)
・股関節の外旋(大腿二頭筋)
・股関節の内旋(半腱様筋・半膜様筋)
・骨盤後傾
神経支配:
・坐骨神経
・長頭・半腱様筋・半膜様筋:脛骨神経(L5-S2)
・大腿二頭筋短頭:総腓骨神経(L5-S2)
「ハムストリングス=二関節筋」:
ハムストリングスのほとんどは二関節筋:
・股関節伸展
・膝関節屈曲
両関節の動きを同時に支配します。
「肉離れの最頻発筋」:
ハムストリングスは肉離れの最頻発筋:
① スポーツ外傷
・スプリント中の肉離れ
・急な方向転換
② 受傷機転
・「ブチッ」と音
・急激な収縮
・過剰な伸長
③ 復帰
・2〜6週間
・再発しやすい
「現代人のハムストリングス」問題:
現代人のハムストリングスは機能低下+短縮が混在:
① 長時間座位
・常に屈曲位
・短縮+機能低下
② 運動不足
・柔軟性低下
・筋力低下
③ 結果として
・骨盤前傾+反り腰
・膝痛・腰痛
・歩行能力低下
実施方法

- 患者さんを腹臥位にさせ、片側の膝を30度屈曲させた位置で固定してもらいます。
- 術者は頭側の手を臀部に置き、足方の手を足首あたりに置きます。

- 術者はその位置より足首を前方(ベッド)に向かって圧迫を加えます。
患者さんはその下方への圧に対して膝屈曲位を保持することでハムストリングスの筋力を評価します。




ワンポイント
正しく測定するためのポイント:
・術者は頭側の手を臀部かハムストリングスに置く
・腰部への負担を防ぐため臀部固定
・膝30度屈曲位を維持
・体幹の代償を防ぐ
「臀部固定」の意味:
臀部を固定すると:
・体幹の代償を防ぐ
・腰部への負担軽減
・純粋なハムストリングステスト
「膝30度屈曲」の意味:
30度という角度の意義:
・長さ-張力関係で最適
・ハムストリングスの最大活動
・正確な評価
「3筋別評価」の方法:
各筋を個別に評価する方法:
① 大腿二頭筋テスト
・下肢を外旋
・大腿後面外側を活動
② 半腱様筋・半膜様筋テスト
・下肢を内旋
・大腿後面内側を活動
注意事項:
・腰部・膝の痛みがある場合は中止
・過度な圧は避ける
・段階的に力を加える




論考
判定方法:
この検査を左右両方で実施します。
弱いと感じた側のハムストリングスが弱化している可能性があります。
※ハムストリングスが弱いと骨盤が前傾になり腰が反る(腰椎前弯)の原因になります。
左右差の意味:
・5%以上の差:要注意
・10%以上の差:明らかな弱化
・左右差なし:正常
ハムストリングス弱化が示唆するもの:
・骨盤前傾のリスク
・腰椎前弯増強(反り腰)
・慢性腰痛
・肉離れのリスク
・関連臓器(直腸)の機能低下(応用キネシオロジー的視点)
「骨盤前傾+反り腰」のメカニズム:
ハムストリングス弱化が骨盤前傾を引き起こす理由:
① ハムストリングスの機能
・坐骨結節から起こる
・骨盤を後傾させる
② 弱化の影響
・骨盤後傾の支持力低下
・結果として骨盤前傾
③ 連鎖的問題
・腰椎前弯増強
・慢性腰痛
・ぽっこりお腹
「ハムストリングス短縮」の評価:
弱化と並行して短縮も評価:
① SLRテスト(ストレートレッグレイズ)
・仰向け
・膝を伸ばしたまま足を上げる
・70度以上=正常
・50度以下=短縮
② 前屈テスト
・立位で前屈
・指先が床に届くか
・ハムストリングス+腰部の柔軟性
③ 弱化+短縮の悪循環
・「短くて使えない筋」
・機能不全
・慢性的な問題
神経リンパ反射点
応用キネシオロジー(AK)におけるハムストリングスの神経リンパ反射点:
大腿骨上部の小転子の基部近く
L5とPSIS(上後腸骨棘)の横突起の間にあるくぼみ
これらの部位を軽くマッサージすることでハムストリングスの機能を活性化できると考えられています。
関連臓器・腺
応用キネシオロジーではハムストリングスは直腸と関連すると考えられています。
「直腸」とは:
直腸の役割:
・便の貯蔵
・排便機能
・骨盤底機能と協調
直腸との関連:
ハムストリングスの弱化があるとき:
・直腸機能の状態のサインの可能性
・便秘・排便障害
・骨盤底機能の指標
東洋医学との関連:
東洋医学では:
・膀胱経が大腿後面を通る
・「気の流れ」と排泄機能
・応用キネシオロジーの基礎
※注意:応用キネシオロジーの解釈であり、医学的に確立した因果関係ではありません。あくまで参考情報として考慮してください。
ハムストリングス肉離れと大腿四頭筋とのバランス|現代人の問題
ハムストリングスの最大の問題が「肉離れ」:
「ハムストリングス肉離れ」とは:
スポーツ選手で最多発の障害:
① 病態
・急激な収縮or伸長による筋繊維の断裂
・「ブチッ」と音
・大腿後面の激痛
② 好発
・スプリント中(特に減速期)
・サッカー・陸上・バスケ
・30代以降に増加
③ 受傷機転
・「タイプI」:スプリント中の急加速
・「タイプII」:開脚・キックでの過伸長
④ 重症度分類
Grade I(軽度)
・微細損傷
・2〜3週間で復帰
Grade II(中等度)
・部分断裂
・4〜6週間で復帰
Grade III(重度)
・完全断裂
・3ヶ月以上
・手術の可能性
⑤ 再発率の高さ
・1年以内の再発率30%
・不完全な復帰が原因
・適切なリハビリが必須
「大腿四頭筋とのバランス」:
肉離れ予防の重要なポイント:
① 理想的な力比
・大腿四頭筋:ハムストリングス=3:2
・H/Q比=0.6〜0.8
② 現代人のアンバランス
・大腿四頭筋優位
・5:2程度のアンバランス
・ハムストリングス損傷のリスク
③ アスリートのアンバランス
・同側のQ/H比異常
・左右非対称
・肉離れリスク
「現代人のハムストリングス」問題:
長時間の座位はハムストリングスに最悪:
① 常に屈曲位
・短縮+機能低下
・柔軟性低下
② 運動不足
・筋力低下
・大腿四頭筋優位のアンバランス
③ 結果として
・骨盤前傾+反り腰
・慢性腰痛
・歩行能力低下
関連する障害:
① ハムストリングス肉離れ
・前述
② 慢性腰痛
・骨盤前傾
・連鎖的な負担
③ 鵞足炎
・半腱様筋+縫工筋+薄筋の付着部炎
・膝内側の痛み
④ 坐骨神経痛
・ハムストリングスの過緊張
・神経の圧迫
⑤ ハムストリングス腱付着部炎
・坐骨結節の付着部痛
・長時間座位で悪化
⑥ オスグッド類似症状
・成長期
・ハムストリングス短縮
⑦ 反り腰
・骨盤前傾
・腰椎前弯
⑧ 「下位交差症候群」
・骨盤前傾の典型
・大臀筋+腹筋+ハムストリングス弱化
改善法:
① ハムストリングス強化
(a) レッグカール
・マシン使用
・ハムストリングス選択的強化
(b) ノルディックハムストリング
・膝立ち
・前傾しながらブレーキ
・肉離れ予防のエビデンスあり
(c) ルーマニアンデッドリフト
・膝を曲げずに前傾
・ハムストリングス+大臀筋
(d) ブリッジ
・ハムストリングス+大臀筋
・骨盤後傾
② ハムストリングスストレッチ
(a) 仰向けレッグストレッチ
・仰向け+片足上げ
・30秒×3回×左右
(b) 立位前屈
・柔軟性向上
③ 大腿四頭筋とのバランス
・H/Q比0.6〜0.8を目標
・両筋の協調強化
④ 体幹強化
・プランク
・デッドバグ
⑤ ウォームアップ
・運動前の準備
・肉離れ予防
⑥ 早期受診
・急な大腿後面痛
・整形外科へ
まとめ
ハムストリングスの筋力チェックについて解説してきた内容を整理します。
・腹臥位で片側の膝を30度屈曲位
・足首に下方への圧に対して保持
・臀部固定で代償防止+腰部負担軽減
・30度屈曲位で最大活動
・左右比較で弱化を判定
・骨盤前傾+腰椎前弯の原因
・SLRテストで短縮も評価
・神経リンパ反射点:小転子基部+L5とPSIS横突起の間のくぼみ
・関連臓器(応用キネシオロジー):直腸
・「大腿後面の3兄弟」
・大腿二頭筋+半腱様筋+半膜様筋の3筋構成
・「二関節筋」として股関節伸展+膝関節屈曲
・肉離れの最頻発筋
・H/Q比0.6〜0.8が理想
・坐骨神経支配
ハムストリングスの機能評価は肉離れ予防+反り腰改善+腰痛予防+スポーツパフォーマンス+直腸機能の参考指標として活用できます。整体・カイロ・トレーナーの現場で活用される基礎的な評価法です。日常的にもレッグカール+ノルディックハムストリング+ストレッチ+大腿四頭筋とのバランスでハムストリングスの健康を維持しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「スポーツ外傷・腰痛」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本整形外科学会「肉離れ・スポーツ障害」https://www.joa.or.jp/
・日本臨床スポーツ医学会「ハムストリングス肉離れ」http://www.rinspo.jp/
・日本理学療法士協会「下肢機能とリハビリ」https://www.japanpt.or.jp/
・国際応用キネシオロジー学会「Manual Muscle Testing」https://www.icakusa.com/










