上腕二頭筋とは|起始停止・作用と力こぶを作る筋トレ・ストレッチを解説

上腕二頭筋


上腕二頭筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

上腕二頭筋の作用と役割

上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)とは力こぶを形成する筋肉の一つで、長頭(ちょうとう)と短頭(たんとう)の二頭で構成されています。英語では「biceps brachii muscle」と呼ばれ、トレーニーが最も憧れる筋肉の代表格です。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

上腕二頭筋の正しい起始停止・作用は?
長頭と短頭の鍛え分けはどうする?
ダンベルカールなど効果的な筋トレ種目は?
長頭腱炎を防ぐコツは?

例え話で言うと、上腕二頭筋は「肘を曲げる二本撚りのロープ」のような存在です。長頭と短頭という2本のロープが、力を合わせて肘を曲げ、前腕を回外させ、肩関節の安定化にも貢献しています。

上腕二頭筋の長頭は肩甲骨の関節上結節から起こり、肩関節の関節腔を貫いて結節間溝を下降します。短頭は長頭の内側にあって烏口突起から起こり、両者相合して上腕の前面を下行して橈骨上端の橈骨粗面に付着しています。

このように上腕二頭筋は肘関節と肩関節の2つの関節をまたがっているので、二関節筋と呼ばれています(橈尺関節も加えて三関節筋と呼ばれることもあります)。

上腕二頭筋は特に前腕が回外している時に肘関節屈曲の主働筋として大きな力を発揮し、肘関節が屈曲している状態では前腕の回外動作で大きな力を発揮します。

逆に、前腕が回内すると橈骨が回転してこの筋肉の停止部がずれるので、屈曲力は弱まります。これはダンベルカールでのグリップによって効き方が変わる理由でもあります。

さらに上腕二頭筋はローテーターカフと共に上腕骨頭を肩甲骨の関節窩に接合させ、肩の前方の安定性にも貢献します。わずかに肩関節の屈曲にも関与しますが、この動作ではあくまでも補助的な役割しか果たしていません。

上腕二頭筋長頭腱

上腕二頭筋長頭腱

また、上腕二頭筋長頭はトレーニングなどで非常に痛めやすい場所としても知られています。
例えば、インクライン・ダンベルカールと呼ばれる種目がありますが、運動実施の際、インクラインベンチの角度をあまり倒し過ぎてしまうとダンベルカールを行う際に上腕二頭筋の長頭腱で大きなストレスがかかる場合があります。

ベンチプレスを行う際、肩甲骨の寄せ(内転)があまいとやはり長頭腱で大きなストレスがかかります。

これが原因で上腕二頭筋長頭腱炎・上腕二頭筋長頭腱断裂・上腕二頭筋長頭腱脱臼を発症してしまうことがあります。因みに上腕二頭筋長頭腱炎は肩関節周囲炎の病態の一つです。

上腕二頭筋の起始停止

上腕二頭筋の起始停止

起始①上腕二頭筋長頭:肩甲骨の関節上結節(かんせつじょうけっせつ)
起始②上腕二頭筋短頭:肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)先端

停止①上腕二頭筋長頭:橈骨粗面(とうこつそめん)
停止②上腕二頭筋短頭:上腕二頭筋腱膜を介して前腕筋膜に停止

長頭と短頭は両方とも肩甲骨から起こりますが、起始位置が異なるため、それぞれ違った働き方をします。停止部は1つにまとまって橈骨粗面に付着します。

長頭と短頭の違いと鍛え分け

長頭と短頭は同じ「上腕二頭筋」と呼ばれますが、起始位置の違いから働きと鍛え分けが可能です。

長頭(外側)

起始:肩甲骨の関節上結節
位置:腕の外側に走行
特徴:力こぶの「高さ」「ピーク」を作る
効かせ方:腕を体より後ろにした状態でカール(インクラインカール)

短頭(内側)

起始:肩甲骨の烏口突起
位置:腕の内側に走行
特徴:力こぶの「幅」「太さ」を作る
効かせ方:腕を体の前方で持ち上げるカール(プリーチャーカール)

両者をバランスよく鍛えることで、立体感のある力こぶが完成します。

上腕二頭筋の役割と作用

上腕二頭筋の作用

上腕二頭筋は運動動作においては主に肘関節屈曲肩関節屈曲(主に長頭)、水平内転(主に短頭)、前腕部の回外動作に関与しています。

肘関節の屈曲

屈曲:肘関節を中心に手の平を耳に近づける動作を屈曲といいます。

前腕の回外

回外:肘関節を屈曲(90°)し、手の平が上を向くように回旋する運動を回外といいます。

肩関節の屈曲

屈曲:前方に上腕を挙上する動作を屈曲といいます。
90°を越え更に180°まで屈曲させる動きを前方挙上と呼ぶこともあります。

肩関節の水平内転

水平内転:肩関節を屈曲または外転した状態からの内側ないしは前方向への水平の動きを水平内転、または水平屈曲といいます。

上腕二頭筋を支配する神経

上腕二頭筋の神経支配

上腕二頭筋を支配する神経は筋皮神経(C5〜C6)です。腕神経叢から分岐する筋皮神経が、上腕二頭筋・烏口腕筋・上腕筋を支配しています。

日常生活動作

上腕二頭筋が関与する日常動作

上腕二頭筋は日常生活の中では肘を曲げ、物を持つ動作などに主に関与します。

具体的には:

重い物を持ち上げる動作
カバンを抱える動作
子どもを抱き上げる動作
食事を口に運ぶ動作
ドアノブを回す動作(前腕の回外)

スポーツ動作

上腕二頭筋が関与するスポーツ動作

上腕二頭筋はダンベル、バーベルなどを巻き上げる動作などに大きく貢献します。

特に重要なスポーツ:
ボディビル・ウェイトリフティング(カール系種目)
ボルダリング・クライミング(体の引き上げ)
柔道・レスリング(相手を引き寄せる)
テニス・卓球(フォアハンド)
野球(バットスイング)

関連する疾患

上腕二頭筋に関連する疾患

上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)、肩上方関節唇損傷(けんじょうほうかんせつしんそんしょう)、上腕二頭筋長頭腱断裂(じょうわんにとうきんちょうとうけんだんれつ)、上腕二頭筋長頭腱脱臼(じょうわんにとうきんちょうとうけんだっきゅう)

① 上腕二頭筋長頭腱炎

長頭の腱が炎症を起こす疾患。肩前面の痛み・腕を上げると痛むのが特徴。肩関節周囲炎の一型としても扱われます。

② 上腕二頭筋長頭腱断裂

長頭腱が断裂すると、ポップアイサイン(力こぶが下に落ちる)と呼ばれる特徴的な所見が現れます。中高年の男性に多い疾患。

③ 上腕二頭筋長頭腱脱臼

結節間溝から長頭腱が外れる状態。腕の動きで「コクッ」と音がするのが特徴。

④ SLAP損傷(肩上方関節唇損傷)

長頭の起始部(関節上結節)に近い関節唇が損傷する疾患。野球選手など投球動作の多いスポーツで好発。

上腕二頭筋を鍛える筋トレ種目

ここからは上腕二頭筋を効果的に鍛える代表的な筋トレ種目を紹介します。

目安となる回数・セット数:
初心者:10〜12回×3セット(軽め、フォーム重視)
中級者:8〜12回×4セット
上級者:6〜10回×4〜5セット

①バーベルカール(基本種目)

バーを両手で持ち、肘を体側に固定したまま肘を曲げる。長頭・短頭ともにバランスよく鍛えられる代表的種目。

②ダンベルカール

ダンベルを両手に持って交互または同時にカール。回外動作を加えることで上腕二頭筋への刺激を最大化。

③ハンマーカール

ダンベルを縦に握り(中立位)カール。上腕筋・腕橈骨筋を中心に鍛えつつ、上腕二頭筋にも刺激。腕の太さアップに有効。

④インクラインダンベルカール

インクラインベンチに仰向けで座り、腕を体より後ろに下ろした状態でカール。長頭にストレッチがかかり集中的に効く。ただし角度を倒しすぎないこと(長頭腱炎リスク)。

⑤プリーチャーカール(スコットカール)

専用ベンチに肘を固定してカール。短頭がメインターゲット。動作中に肘が動かないので集中して効かせられる。

⑥コンセントレーションカール

座って太ももの内側に肘を当て、片手ずつカール。短頭のピークを作る仕上げ種目として有名。

上腕二頭筋のストレッチ

①壁を使った長頭ストレッチ

壁に手のひらをつけて、体を反対方向にゆっくり回す。肩の前面〜上腕二頭筋がしっかり伸びる感覚を意識。20〜30秒キープ。

②ドアフレームストレッチ

ドアの枠に両手を当てて、体を前に押し出す。胸郭と一緒に上腕二頭筋もストレッチ。

③腕を後ろで組むストレッチ

両腕を背中で組み、軽く上に持ち上げる。上腕二頭筋と肩前面の筋を同時に伸ばせます。

上腕二頭筋トレーニングでよくある間違いとケガ予防

① 反動を使う(チーティング)
特にカール系種目で背中を反って反動を使うと、刺激が逃げて腰痛・長頭腱炎のリスクが高まります。

② 肘を動かす
肘が前後に動くと刺激が分散。肘は体側に固定することで上腕二頭筋にしっかり効きます。

③ インクラインカールの角度倒しすぎ
インクラインベンチを倒しすぎると長頭腱に過度なストレスがかかります。45〜60度程度が安全。

④ 高重量でフォームが崩れる
重量にこだわってフォームが崩れると効果半減+ケガリスク。軽い重量で正しくが基本。

⑤ ウォームアップ不足
長頭腱は損傷しやすいので、軽い重量で関節を温めてから本セットに。

よくある質問(FAQ)

Q1. 上腕二頭筋を鍛える頻度は?
週2〜3回、中2〜3日空けるのが目安。小さい筋なので回復は比較的早いですが、毎日鍛えるのはオーバートレーニングになります。

Q2. 長頭と短頭、どちらを優先すべき?
両方バランスよくが基本ですが、力こぶの「高さ」を出したいなら長頭、「太さ」を出したいなら短頭を意識。基本種目(バーベルカール)でカバーできます。

Q3. 自宅で上腕二頭筋を鍛えるには?
ダンベルがあれば十分。なければペットボトルに水を入れたものや、タオルを使った等尺性収縮、懸垂(リバースグリップ)も効果的。

Q4. 力こぶを大きくするには?
基本種目(バーベルカール)で全体を鍛えつつ、インクラインカールで長頭、コンセントレーションカールで短頭を集中的に。週2〜3回の継続が重要。

Q5. 上腕二頭筋と上腕三頭筋、どちらを優先?
腕を太くしたいなら上腕三頭筋です。上腕の体積の約2/3は上腕三頭筋が占めるため、太い腕作りには三頭筋も忘れずに。

Q6. 「ポップアイサイン」とは?
上腕二頭筋長頭腱が断裂した時に、力こぶが下にずれて目玉のように見える現象。中高年男性に好発し、外科手術が必要なケースも。気付いたら整形外科を受診しましょう。

Q7. 女性も上腕二頭筋を鍛えるべき?
はい、おすすめです。二の腕の引き締め・姿勢改善・基礎代謝アップに効果的。ただしダンベルカールは軽い負荷(1〜3kg)から始めましょう。

まとめ

上腕二頭筋について解説してきた内容を整理します。

・上腕二頭筋は長頭・短頭の2つから構成、肩甲骨〜橈骨を結ぶ二関節筋
・主作用は肘関節の屈曲・前腕の回外・肩関節の屈曲(補助)
・支配神経は筋皮神経(C5〜C6)
・長頭=力こぶの高さ、短頭=幅を作る
・代表的な筋トレはバーベル/ダンベル/ハンマー/インクライン/プリーチャー/コンセントレーション
・週2〜3回、フォーム優先で取り組む
長頭腱は損傷しやすいのでウォームアップとフォームに注意

上腕二頭筋は男女問わず人気の高い筋肉です。正しいフォームと長頭・短頭の鍛え分けを意識して、安全に力こぶを育てていきましょう。

その他の上腕部の筋肉
上腕三頭筋烏口腕筋上腕筋肘筋

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参考文献・出典

・Wikipedia「上腕二頭筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/上腕二頭筋

・看護roo!「上腕二頭筋」https://www.kango-roo.com/word/20057

・日本整形外科学会「上腕二頭筋長頭腱断裂」https://www.joa.or.jp/

・厚生労働省 e-ヘルスネット「筋力トレーニング」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-04-003.html

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