筋肉の種類と分類法|横紋筋・平滑筋から羽状筋・多関節筋まで徹底解説

筋肉はすべての活動の源となる組織で、筋線維(筋細胞)と呼ばれる細胞の束が多数集まって構成されています。

筋肉が活動するためには筋中内にある高エネルギー化学物質のATP(アデノシン三燐酸)がADP(アデノシン二燐酸)とP(燐酸)に分解されなければなりません。

このときに生じるエネルギーを使うことにより筋肉は始めて活動することができるのです。
体内にある筋肉はその役割によって下記のようにまず2種類に大別することができます。

  • 横紋筋(心筋、骨格筋)
  • 平滑筋

この記事では、次のような疑問にお答えします。

筋肉にはどんな種類がある?
横紋筋と平滑筋の違いは?
筋頭数による分類とは?
形状や関節数による分類は?

例え話で言うと、筋肉の分類は「筋肉を見る4つの視点」です。顕微鏡的構造・制御方法・形状・関節への関わりという異なる視点から、同じ筋肉でも様々な分類が可能になります。

横紋筋と平滑筋の特徴

筋肉は、微細な縞模様(横紋構造)をもつ『横紋筋(おうもんきん)』と、縞模様をもたない『平滑筋(へいかつきん)』に大別することができます。

横紋筋は横紋と呼ばれる独特の細い線維が外見上連なって見えるのが特徴で、平滑筋ではそれを確認することはできません。

さらに横紋筋は、主に骨に付着して関節運動を引き起こす『骨格筋(こっかくきん)』と心臓を動かす『心筋』に分類することができます。

骨格筋は単に筋肉と呼ばれることが多く、また、自らの意志で手足などを自由に動かせることから随意筋(ずいいきん)と呼ばれることもあります。

しかし、同じ横紋筋でも心筋は骨格筋と異なり、自律神経によって制御されていて、自由に動かすことができないので不随意筋(ふずいいきん)とも呼ばれます。

平滑筋は心臓を除く内臓や消化器官・血管などを構成する筋なので『内臓筋』と呼ばれることもあります。

平滑筋は心筋と同じく自律神経によって制御されている筋肉なので、心筋と同様、自分の意志で自由に動かすことができないので不随意筋(ふずいいきん)に分類されます。

心筋の特殊性|横紋筋なのに不随意筋

筋肉の3分類で心筋はユニークな存在です:

心筋の特徴
横紋筋(縞模様あり)
不随意筋(意識で制御不可)
独自の自動性(脳を経由せず動く)
疲労しにくい
強い再生能力なし

3つの筋肉の比較表

① 骨格筋
・縞模様:あり(横紋)
・制御:随意(意識的)
・存在:全身の骨に付着
・例:大腿四頭筋、上腕二頭筋

② 心筋
・縞模様:あり(横紋)
・制御:不随意(自律神経)
・存在:心臓のみ
・特徴:自動的に拍動

③ 平滑筋
・縞模様:なし
・制御:不随意(自律神経)
・存在:内臓・血管・気管
・例:消化管壁、子宮、血管壁

心筋の特異性

① 自動的拍動
脳の指令なしに洞房結節(ペースメーカー細胞)から拍動信号が発生。

② 介在板(intercalated disc)
心筋細胞同士が特殊な接続構造で連結。電気信号が一斉に伝わる。

③ 疲労しない
一生(80年で約30億回)休まず拍動。

④ 再生能力低い
損傷すると瘢痕組織になりやすい(心筋梗塞後)。

⑤ ミトコンドリア豊富
持続的なエネルギー供給に対応。

心筋は「自動運転する縞模様の筋肉」として、生命維持に直結する特殊な筋肉です。

骨格筋の分類とその特徴

骨格筋には更に形状による分類法があります。

筋肉が起始から停止まで枝分かれしない筋を『単頭筋(たんとうきん)』と呼び、途中から二つに分かれる筋を『二頭筋(にとうきん)』、三つに分かれる筋を『三頭筋(さんとうきん)』、四つに分かれる筋を『四頭筋(しとうきん)』と呼びます。

骨格筋の筋頭の数による分類

骨格筋の筋頭の数による分類

例えば、大腿部前面には大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と呼ばれる筋肉があるのですが、それは内側広筋・外側広筋・中間広筋・大腿直筋と呼ばれる四つの『頭(ヘッド)』で構成されているからです。

さらに、両端が細く、中央部が太くなっている骨格筋を『紡錘状筋(ぼうすいじょうきん)』、長い腱の両側に短い筋線維が斜め方向に並んでいて鳥の羽のような形をした骨格筋を『羽状筋(うじょうきん)』、羽状筋が半分になったような形をした骨格筋を『半羽状筋(はんうじょうきん)』、四辺形をしていて薄い骨格筋を『方形筋』と呼ぶ分類法もあります。

骨格筋の形による分類

骨格筋の形による分類

例えば、上腕部前面にある上腕二頭筋は紡錘状筋、大腿部前面にある大腿直筋(大腿四頭筋のひとつ)は羽状筋、大腿部後面にある半膜様筋は半羽状筋僧帽筋は方形筋に分類されます。

羽状角と筋力の関係|なぜ羽状筋は強いのか

筋肉の形状は「力発揮の特性」と密接に関連しています:

羽状筋とは

腱に対して斜めに筋線維が並ぶ筋肉。鳥の羽根のような外観から命名。

羽状角
腱と筋線維がなす角度。10〜30度程度。

羽状筋の特徴

① 同じ体積で筋線維数が多い
斜めに並ぶため、横断面積(PCSA)が大きい

② 大きな力発揮
筋線維数が多いため力強い収縮が可能。

③ 短縮速度は遅い
1本1本の筋線維の収縮幅は限定的。

④ 持続的な力発揮に有利
持続的な姿勢維持や大きな負荷を支える。

代表例
大腿直筋(大腿四頭筋の1つ)
下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)
三角筋
外側翼突筋

これらは姿勢維持・パワー発揮に重要な筋肉です。

紡錘状筋とは

筋線維が腱と平行に並ぶ筋肉。両端が細く中央が太い紡錘形。

紡錘状筋の特徴

① 大きな短縮幅
筋線維が長いため大きく短縮できる。

② 高速収縮
迅速な動きに有利。

③ 大きな関節可動域
大きく曲げ伸ばしできる。

④ 力発揮は中程度
羽状筋ほどの力はない。

代表例
上腕二頭筋
縫工筋
薄筋

これらは素早い動き・大きな可動域に重要な筋肉です。

方形筋とは

四辺形で薄い筋肉。

方形筋の特徴
広い面で動作
姿勢制御
多方向への動き

代表例
僧帽筋
広背筋
大胸筋

これらは姿勢維持・複雑な肩甲骨の動きに重要な筋肉です。

形状と機能の関係

| 形状 | 力発揮 | 速度 | 可動域 | 代表 |
|——|——–|——|——–|——|
| 羽状筋 | 大 | 遅 | 小 | 大腿直筋 |
| 紡錘状筋 | 中 | 速 | 大 | 上腕二頭筋 |
| 方形筋 | 中 | 中 | 中 | 僧帽筋 |

スポーツや動作の目的によって、異なる形状の筋肉が重要になります。

関節数による分類|単関節筋と多関節筋

ほかにも、ひとつの関節のみを動かす『単関節筋』と、二つ以上の関節の動きに関与する『二関節筋』(2つ以上を多関節筋と呼びます)に分ける分類法もあります。

関節の数による分類

関節の数による分類

この分類法でいうと、①の腕橈骨筋は単関節筋に分類され、②の上腕二頭筋は二関節筋に分類されます。
前腕部にある深指屈筋(しんしくっきん)などは手関節と手指の3つの関節をまたがっているので多関節筋に分類されます。

関節をより多くまたがった筋肉ほど細やかで繊細な動きができるのです。

多関節筋の機能的特徴|複雑な動きの達人

多関節筋は単関節筋にはない独自の特徴を持ちます:

① 複数関節の同時制御
1つの筋肉で複数の関節を同時に動かせる。

② エネルギー効率が良い
1つの筋肉で複数の動作が可能なため、省エネ

③ 動作の連携性
複数関節の協調動作を実現。

④ 細やかな動きが可能
複雑な動作パターンに対応。

多関節筋の例

① 上腕二頭筋(二関節筋)
肩関節肘関節
・腕を曲げる+肩を上げる

② ハムストリングス(二関節筋)
股関節膝関節
・股関節を伸ばす+膝を曲げる

③ 大腿直筋(二関節筋)
股関節膝関節
・股関節を曲げる+膝を伸ばす

④ 深指屈筋(多関節筋)
手関節手指の関節
・手首と指を同時に曲げる

⑤ 長指屈筋(多関節筋)
足関節足趾の関節
・足首と足趾を同時に曲げる

多関節筋の弱点

① 機能的不全
両方の関節を同時に最大可動域に動かすと機能不全を起こす。

② 筋伸長の限界
一方の関節で最大伸長すると、もう一方の動作が制限される。

③ ストレッチの難しさ
複数関節を考慮したストレッチが必要。

例:ハムストリングスのストレッチ
股関節を屈曲+膝関節を伸展
・両方を行うとハムストリングスが最大に伸びる
・前屈ストレッチがその典型

スポーツでの活用

多関節筋はスポーツ動作の主役
走る:ハムストリングス・大腿直筋
蹴る:大腿直筋・腸腰筋
投げる:上腕二頭筋・上腕三頭筋・三角筋
跳ぶ:下腿三頭筋・ハムストリングス

複雑な動作には多関節筋+単関節筋の協調が必須です。

以上のように筋には一般的にイメージされるような筋肉(骨格筋)だけでなく、構造から役割・形状に至るまで様々な種類や分類法が存在します。

まとめ

筋肉の種類と分類法について解説してきた内容を整理します。

・筋肉のATP分解でエネルギーを得る
4つの視点で分類:
顕微鏡的構造:横紋筋vs平滑筋
制御方法:随意筋vs不随意筋
形状:紡錘状筋・羽状筋・方形筋など
関節への関わり:単関節筋vs多関節筋
3種類の筋:骨格筋・心筋・平滑筋
心筋は横紋筋+不随意筋の特殊な存在
筋頭数による分類:単頭筋〜四頭筋
羽状筋=強い力紡錘状筋=速い動き
多関節筋はスポーツ動作の主役

筋肉は「筋肉を見る4つの視点」によって多角的に分類できます。各分類の特徴を理解することで、効率的なトレーニング+怪我予防+スポーツパフォーマンス向上が実現します。

参考文献・出典

・厚生労働省 e-ヘルスネット「筋肉と運動」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

・日本生理学会「筋肉の生理学」https://physiology.jp/

・日本解剖学会「筋肉の解剖学」https://www.anatomy.or.jp/

・American College of Sports Medicine(ACSM)「Muscle Architecture」https://www.acsm.org/

・国立スポーツ科学センター(JISS)「筋生理学」https://www.jpnsport.go.jp/jiss/

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