胸棘筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
胸棘筋(きょうきょくきん)とは脊柱起立筋を構成している筋肉の一つです。英語では「spinalis thoracis muscle」と呼ばれます。
胸棘筋は頸棘筋(けいきょくきん)とともに脊柱起立筋の最も内側を走行する筋肉です。胸棘筋は主に胸椎・腰椎を反らす働きがあり、体幹を側屈させる作用もあります。背骨のすぐ脇を走る繊細な制御筋として、姿勢の細かい調整・椎骨間の安定に貢献する筋肉です。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・胸棘筋の正しい起始停止・作用は?
・脊柱起立筋3列の中でどこに位置する?
・頭棘筋・頸棘筋とどう違う?
・椎骨間の動きでなぜ重要?
例え話で言うと、胸棘筋は「背骨の真横をすぐ近くで支える小さなロープ」のような存在です。脊柱起立筋3列の中で最も背骨に近い位置を走り、椎骨同士の細かい動きを制御します。
英語名称
spinalis thoracis muscle(スパイナリス・ソラシィス・マッスル)
「spinalis(脊柱の)」+「thoracis(胸の)」で構成された名称。
胸棘筋の解説
胸棘筋(きょうきょくきん)は脊柱起立筋を構成している筋肉の一つで、頸棘筋とともに脊柱起立筋の中で最も内側を走行する筋肉です。
胸棘筋は第10胸椎〜第3(または第2)腰椎の棘突起から起始し、第2〜第8(または第9)胸椎の棘突起に停止します。
胸棘筋は主に胸椎・腰椎を反らす働き(体幹の伸展動作)があり、体幹を側屈させる作用もあります。
胸棘筋は脊柱後面の中央にあるため、側屈作用の貢献度は比較的低い傾向にあります。むしろ椎骨間の細やかな動作制御や、脊柱中央部の安定に主に貢献します。
棘筋群の3部位|頭・頸・胸の区分
棘筋群は脊柱沿いの位置によって3つに分類されます:
頭棘筋(とうきょくきん)
・頭部を支える
・実際には半棘筋と融合していることが多く、独立した筋として観察されないこともある
・頭部の姿勢に関与
頸棘筋(けいきょくきん)
・頸部を支える
・項靭帯・第7頸椎の棘突起から起始
・第2〜4頸椎の棘突起に停止
・頸部の伸展・姿勢保持
胸棘筋(きょうきょくきん)
・胸部・腰部を支える
・第10胸椎〜第3腰椎の棘突起から起始
・第2〜8胸椎の棘突起に停止
・胸椎・腰椎の伸展に関与
3つの棘筋は連続的に走行し、脊柱起立筋3列構造の最内側の列として、椎骨間の細やかな制御を担います。
棘筋群の特徴:
・棘突起から棘突起へ走る筋
・脊柱起立筋の中で最も小さい
・側屈の貢献度が低く、伸展メイン
・椎骨間の細かい制御に貢献
脊柱起立筋3列の最内側|胸棘筋の位置的特徴
胸棘筋を語る上で重要なのが脊柱起立筋の3列構造での位置です。
脊柱起立筋の3列構造:
・棘筋(spinalis):最も内側(背骨直近)
・最長筋(longissimus):中央
・腸肋筋(iliocostalis):最も外側
最内側に位置するメリット:
① 椎骨間の細やかな制御
棘突起から棘突起へ走るため、隣接する椎骨同士の細かい動きを制御。
② 脊柱の中央安定
背骨の真横にあるため、中央軸の安定に貢献。
③ 微細な姿勢調整
大きな動きよりも細かな姿勢調整が得意。
④ 持久力に優れる
姿勢保持のために長時間働き続ける遅筋線維の比率が高い。
大きな筋肉とのバランス:
胸棘筋は胸最長筋や胸腸肋筋に比べて遥かに小さいですが、これら大きな筋肉が「大きな動きとパワー」を担うのに対し、胸棘筋は「繊細な動きと持続的な安定」を担う、いわば「ピアノの指先のような筋」と言えます。
棘突起と胸棘筋|触診のポイント
胸棘筋は棘突起のすぐ脇を走るため、触診で見つけやすい特徴があります。
棘突起とは
背骨を後ろから触ると、ぽつぽつと飛び出している骨がそれです。第7頸椎の棘突起(首の後ろの最も飛び出た骨)から始まり、腰まで続きます。
胸棘筋の触診方法:
1. うつ伏せに寝てもらう
2. 背骨(棘突起)のすぐ脇(1〜2cm)を触れる
3. 胸椎レベル(背中の真ん中あたり)で触診
4. やや硬く、縦に走る筋束を感じる
マッサージのコツ:
・棘突起の脇を縦方向にゆっくり圧迫
・強すぎない圧で(背骨に近いため)
・呼吸に合わせてゆっくりリリース
整体院・整骨院での背中のマッサージでは、胸棘筋へのアプローチが頻繁に行われます。細かい部位なので、繊細な手技が必要です。
起始
第10胸椎〜第3(または第2)腰椎の棘突起
胸椎下部〜腰椎上部の棘突起から起こります。
停止
第2〜第8(または第9)胸椎の棘突起
胸椎中〜上部の棘突起に停止します。棘突起から棘突起へ走る独特な配置です。
胸棘筋の主な働き

運動動作においては体幹部の伸展(後屈)・側屈させる作用があります。
主な役割:
・胸椎・腰椎の伸展(主作用)
・椎骨間の細やかな制御
・脊柱中央の安定
・体幹の側屈(貢献度低い)
・姿勢の微調整
胸棘筋を支配する神経
脊髄神経後枝(C2〜T10)
頸髄から胸髄までの脊髄神経後枝に支配されます。
日常生活動作
姿勢保持だけでなく、かがんだ姿勢から上体を起こす動作に関与します。
具体的には:
・立位の姿勢保持
・座位の姿勢保持
・かがみから上体起こし
・歩行(脊柱の安定)
・細かい体幹の調整
無意識のうちに姿勢の微調整を担う筋。
スポーツ動作
あらゆるスポーツ動作に関与し、上半身を安定させる働きに大きく貢献します。
特に重要なスポーツ:
・体操競技(細かな姿勢制御)
・ダンス・バレエ(背骨の繊細な動き)
・ヨガ・ピラティス
・射撃・アーチェリー(姿勢の微調整)
・ゴルフ(バックスイングの安定)
関連する疾患
① 慢性背中痛
胸棘筋の過緊張・トリガーポイントが背中の中央部の痛みの原因に。
② 筋筋膜性疼痛症候群
胸棘筋を含む脊柱起立筋のトリガーポイントによる慢性痛。
③ 姿勢異常
胸棘筋を含む脊柱起立筋の機能低下による猫背・円背。
④ 脊柱側弯症
脊柱起立筋の左右バランスの崩れに関連。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

ソリネックス・リバースバックエクステンション

胸棘筋のスタティックストレッチ
胸棘筋を効果的に鍛えるポイント
胸棘筋は脊柱起立筋の中で最も小さい筋のため、単独で鍛えるよりも脊柱起立筋全体としてのトレーニングがおすすめです。
① バックエクステンション(基本)
うつ伏せで上半身を反らせる動作。10〜15回×2〜3セット。
② ライイングバックアーチ
床にうつ伏せで両腕を頭の上に伸ばし、上半身と両腕を同時に持ち上げる。
③ スーパーマンエクササイズ
両手両足を同時に持ち上げる。
④ バードドッグ
四つ這いで対角の手足を伸ばす。体幹の細かい安定機能を強化。胸棘筋が特に活躍。
⑤ プランク
肘とつま先で身体を支える。脊柱起立筋全体+胸棘筋を持久力的に鍛えます。
胸棘筋のストレッチ・セルフケア
①基本前屈ストレッチ
立位または座位で、ゆっくり前屈する。30秒×3回。
②猫のポーズ・牛のポーズ(ヨガ)
四つ這いで背中を丸める→反らせるを繰り返す。脊柱起立筋全体の動的ストレッチ。
③チャイルドポーズ(ヨガ)
正座から両手を前に伸ばして上半身を倒す。背中全体のディープストレッチ。
④テニスボールでのリリース
仰向けでテニスボールを背骨の脇に当て、ゆっくり圧迫。胸棘筋への直接アプローチ。
⑤温める
蒸しタオルやお風呂で背中を温めると緊張緩和に。
よくある質問(FAQ)
Q1. 胸棘筋はどこにある?
脊柱起立筋の最も内側の列(棘筋)の中部〜下部。背骨の棘突起のすぐ脇(1〜2cm)を縦に走ります。
Q2. なぜ脊柱起立筋3列の中で最も小さい?
胸棘筋は棘突起から棘突起という限られた範囲を走るため。代わりに椎骨間の細かい制御が得意です。
Q3. 胸棘筋と胸最長筋の違いは?
胸棘筋は最内側で小さく細やかな制御、胸最長筋は中央列で最大・パワー発揮。両者は役割が分担されています。
Q4. 背中の真ん中が痛い時は?
胸棘筋を含む脊柱起立筋中央部の過緊張・トリガーポイントの可能性。デスクワーカーに多い症状です。
Q5. 胸棘筋は触診できる?
はい、背骨(棘突起)のすぐ脇を縦方向に触ると、硬めの筋束として感じられます。マッサージ時の重要な触診ポイントです。
Q6. 胸棘筋を鍛えるメリットは?
姿勢の微調整能力UP・脊柱中央の安定・体幹の細かい制御。体操・ダンス・ヨガなど繊細な動きが必要なスポーツで重要。
まとめ
胸棘筋について解説してきた内容を整理します。
・第10胸椎〜第3腰椎の棘突起から起こり、第2〜8胸椎の棘突起に停止
・脊柱起立筋3列構造の最内側(棘筋)の下部
・棘突起から棘突起へ走る独特な配置
・主作用は胸椎・腰椎の伸展
・支配神経は脊髄神経後枝(C2〜T10)
・頸棘筋・頭棘筋と連続的に走行
・椎骨間の細やかな制御が役割
・側屈作用は弱い
・触診で見つけやすい
胸棘筋は脊柱起立筋の中で最も小さく目立たない筋ですが、椎骨間の細かい動作制御と背骨中央の安定で重要な役割を担います。背中の真ん中の張り・姿勢の繊細な調整が気になる方は、胸棘筋を意識したストレッチ+脊柱起立筋全体のトレーニングを実践しましょう。
その他の腹部・腰部の筋肉
【腹直筋・腹斜筋群(外腹斜筋・内腹斜筋)・腸腰筋(腸骨筋・大腰筋・小腰筋)・腹横筋・腰方形筋・脊柱起立筋(胸腸肋筋・腰腸肋筋・胸最長筋・多裂筋)・横隔膜・下後鋸筋・骨盤底筋群】
参考文献・出典
・Wikipedia「棘筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/棘筋
・看護roo!「胸棘筋」https://www.kango-roo.com/word/20105
・日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン」https://www.joa.or.jp/
・厚生労働省 e-ヘルスネット「姿勢と健康」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・rehatora.net「胸棘筋の解剖と機能・触診」https://rehatora.net/





