小菱形筋とは|起始停止・神経支配と肩甲骨内転・肩甲挙筋との協働を解説

小菱形筋

小菱形筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)

小菱形筋(しょうりょうけいきん)大菱形筋(だいりょうけいきん)の上を走行する筋肉です。英語では「rhomboid minor muscle」と呼ばれ、菱形筋群(大菱形筋・小菱形筋)の中で上側に位置する細長い菱形の筋です。

小菱形筋は大菱形筋と形状だけでなく働きもほぼ同じで、主に肩甲骨を互いに引き寄せる(肩甲骨の内転)作用を持ちます。さらに肩甲骨を下方回旋させる作用と、肩甲挙筋と協働して挙上にも関与する独特の筋肉です。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

小菱形筋の正しい起始停止・作用は?
大菱形筋とどう違う?
肩甲挙筋とどう連携する?
効果的な筋トレ・ストレッチは?

例え話で言うと、小菱形筋は「肩甲骨上部を首の付け根に引き寄せる細いロープ」のような存在です。大菱形筋とともに肩甲骨を背骨に引き寄せつつ、上方向にも引き上げる役割を担っています。

英語名称

rhomboid minor muscle(ロンボイド・マイナー・マッスル)

「rhomboid(菱形の)」+「minor(小さい方の)」で構成された名称です。大菱形筋(rhomboid major)と対になる呼び名です。

小菱形筋の解説

小菱形筋(しょうりょうけいきん)は大菱形筋上を走行する筋肉で、僧帽筋に覆われる薄い菱形の筋です。

小菱形筋は第6〜7頚椎の棘突起もしくは第7頚椎、第1胸椎棘突起から起こり、肩甲骨内側縁上部1/3に着きます。

大菱形筋とともに主に肩甲骨を内転に作用し、小胸筋と協同し肩甲骨を下方回旋させる作用を持ちます。

また、小菱形筋は肩甲挙筋とともに肩甲骨の挙上にも関与します。これは大菱形筋にはない、小菱形筋特有の機能です。

さらに前鋸筋(ぜんきょきん)と共同して肩甲骨内側縁を胸郭に保持する役割を果たしています。

小菱形筋、大菱形筋(以下、菱形筋群)の筋力が著しく弱化すると肩関節が内旋するので、猫背のように背中が丸くなってしまいます。

菱形筋群は懸垂など腕を後方に引く動作で効率良く鍛えることができます。

菱形筋群をストレッチするためには肩甲骨を下制させたまま他動的に肩甲骨を外転させます。また、上方回旋させながらストレッチしても効果的です。

胸郭出口症候群牽引(けんいん)型では、菱形筋群・僧帽筋中部線維による胸郭への肩甲骨の固定作用が低下し、肩甲骨が大きく外転している症例が多く、疼痛の発生に強く関係しています

小菱形筋と大菱形筋の違い

両者は連続して働く似た筋ですが、位置と機能に違いがあります:

小菱形筋(上側・小さい)
・起始:C6〜C7(またはC7〜T1)の棘突起
・停止:肩甲骨内側縁の上部1/3
・特徴:肩甲挙筋と協働して挙上にも関与

大菱形筋(下側・大きい)
・起始:T1〜T4の棘突起
・停止:肩甲骨内側縁の下部2/3
・特徴:菱形筋群の主役、より広範囲をカバー

小菱形筋は範囲が狭い分、肩甲挙筋との接続部に近い位置にあり、肩甲骨上部の動きにより関与します。

小菱形筋と肩甲挙筋の協働

小菱形筋には大菱形筋にはない特徴があります。それが肩甲挙筋との協働で肩甲骨を挙上する役割です。

小菱形筋はC6〜C7(またはT1)から起こり、肩甲挙筋はC1〜C4から起こります。両者とも頚椎下部〜胸椎上部から肩甲骨上部に向かって斜めに走行しており、機能的に連続したユニットを形成しています。

このため:
肩をすくめる動作では肩甲挙筋+小菱形筋が協働
肩こりが慢性化すると両者が一緒に硬くなる
支配神経も同じ肩甲背神経

肩甲骨上部の頑固なコリは、肩甲挙筋単独ではなく、肩甲挙筋+小菱形筋セットでケアすることが効果的です。

肩甲骨上部のこり|小菱形筋が関与する不調

肩甲骨の上部内側(肩甲棘の少し上の内側)に感じる凝りは、小菱形筋の慢性緊張が関与している可能性があります。

主な原因:

① デスクワークでの前傾姿勢
頭が前に出る姿勢で小菱形筋が常時引き伸ばされて疲労。

② 巻き肩で肩甲骨が外側に開く
小菱形筋の機能低下で肩甲骨上部が外側に開き、慢性的に張った状態に。

③ 重い荷物の片掛け
片側の肩甲骨に負担が集中し、その側の小菱形筋が疲労。

④ ストレス・心理的緊張
ストレスで無意識に肩がすくむ癖が、肩甲挙筋+小菱形筋の慢性緊張に。

⑤ 寝違え後の慢性化
寝違えで肩甲挙筋が炎症を起こすと、関連して小菱形筋も硬くなることが。

対策:肩甲挙筋ストレッチと一緒に、肩甲骨を寄せる動きで小菱形筋を活性化することが効果的です。

起始

頚椎C6〜C7の棘突起(きょくとっき)もしくは頚椎C7〜胸椎T1の棘突起

教科書によって若干表記が異なりますが、概ね「頚椎下部から胸椎最上部」と覚えればOKです。

停止

肩甲骨の内側縁上部(ないそくえんじょうぶ)

肩甲骨内側縁の上部1/3、肩甲棘内側端付近に停止します。大菱形筋(内側縁下部2/3に停止)とは住み分けています。

小菱形筋の主な働き

肩甲骨の内転 肩甲骨の下方回旋 肩甲骨の挙上

運動動作においては肩甲骨を脊柱に向かって引き寄せ(内転)、わずかに下方回旋挙上させる作用があります。

主な役割:

肩甲骨の内転(背骨方向に引き寄せる):大菱形筋と協働
肩甲骨の下方回旋
肩甲骨の挙上(肩甲挙筋と協働):小菱形筋の独自機能
肩甲骨を胸郭に保持(前鋸筋と協働)

小菱形筋を支配する神経

肩甲背神経(C4〜C5)

肩甲背神経は大菱形筋・肩甲挙筋も支配します。3つの筋が同じ神経支配であることは、機能的にも合理的です(すべて「肩甲骨を引き上げて内側に寄せる」働きを担うため)。

日常生活動作

手前にあるものを手前に引き寄せる動作に主に関与します。

具体的には:

引き戸を開ける動作
カバンを引き寄せる動作
胸を張る動作・姿勢の保持
肩をすくめる動作(肩甲挙筋と協働)

スポーツ動作

大菱形筋とともに弓を引いたり、ボートのオールを漕いだり、肩甲骨を真ん中に寄せる動作などに大きく貢献します。

特に重要なスポーツ:
アーチェリー・弓道(弓を引く動作)
ボート競技(オールを引く)
クライミング
柔道・レスリング
水泳(プル動作)

関連する疾患

胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)、肩関節不安定症(かたかんせつふあんていしょう)、肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)

① 猫背・巻き肩

菱形筋群の弱化による現代人の最大の悩み。

② 肩甲骨上部の慢性的なコリ

小菱形筋の慢性疲労による典型症状。肩甲挙筋と一緒に固まることが多いです。

③ 胸郭出口症候群(牽引型)

なで肩で菱形筋群の機能低下があると発症リスクが高まります。

④ 寝違え後の慢性化

寝違えで肩甲挙筋が損傷すると、小菱形筋も関連して硬くなることがあります。

⑤ 肩関節周囲炎の二次因子

小菱形筋の機能不全は肩甲骨の動きを制限し、四十肩・五十肩の進行を悪化させることがあります。

代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

ベントオーバーショルダーシュラッグ

ベントオーバーショルダーシュラッグ

背部のスタティックストレッチ

背部のスタティックストレッチ

小菱形筋を効果的に鍛えるポイント

① ベントオーバーローイング
前傾姿勢でダンベルを引き上げる種目。肩甲骨を寄せる動作で大・小菱形筋を同時に強化。

② フェイスプル
ケーブルを顔の高さに引きつける動作。肩甲骨上部を寄せる動きが特に小菱形筋に効きます。

③ ハイロウ(高い位置からのロウイング)
ケーブルを胸の上部に向けて引く動作。小菱形筋の活性化に最適。

④ プローンT・W
うつ伏せで腕をT・Wの形に動かすエクササイズ。菱形筋群の活性化に。

⑤ 椅子で肩甲骨を寄せる
椅子に座って胸を張り、肩甲骨を背骨に寄せて5秒キープ。1時間に1回のミニトレが姿勢改善に効果的。

よくある質問(FAQ)

Q1. 小菱形筋と大菱形筋の違いは?
小菱形筋が上、大菱形筋が下に位置します。小菱形筋は肩甲挙筋と協働して挙上にも関与する点が独特です。

Q2. 小菱形筋と肩甲挙筋はどう違う?
両者とも肩甲骨を挙上しますが、肩甲挙筋は頚椎C1〜C4から、小菱形筋はC6〜T1から起こり、走行位置が異なります。両者は肩甲骨上部に共に作用し、肩こりに関与します。

Q3. 小菱形筋を意識的に鍛えられる?
単独で意識するのは難しいですが、肩甲骨を背骨に向かって上方に寄せる動作(フェイスプル、ハイロウ)で小菱形筋を狙えます。

Q4. 肩甲骨上部のコリは小菱形筋が原因?
可能性はあります。ただし肩甲挙筋・僧帽筋上部・小菱形筋が複合的に絡んでいることが多いため、これら3筋セットでケアするのがおすすめ。

Q5. 小菱形筋ストレッチのコツは?
両腕を前で交差させて背中を丸める動作(キャットポーズ)が効果的。15〜30秒キープを2〜3セット。

Q6. なで肩・胸郭出口症候群と関係する?
菱形筋群(大・小)の機能低下は胸郭出口症候群(牽引型)のリスクを高めます。なで肩タイプの方は意識的に強化することが予防になります。

まとめ

小菱形筋について解説してきた内容を整理します。

C6〜T1の棘突起から起こり、肩甲骨内側縁上部1/3に停止
・菱形筋群の上側担当、大菱形筋の上を走行
僧帽筋の深層にある斜め走行の筋
・主作用は肩甲骨の内転・下方回旋・挙上
肩甲挙筋と協働して挙上に関与(独自機能)
・支配神経は肩甲背神経(C4〜C5)
・弱化すると猫背・巻き肩・肩甲骨上部のコリ
フェイスプル・ベントオーバーロウで効果的に鍛える

小菱形筋は単独で意識しにくい筋ですが、大菱形筋・肩甲挙筋と協働して姿勢の安定と肩こり予防に大きく貢献しています。「肩甲骨上部のコリ」「巻き肩」が気になる方は、小菱形筋を含めた菱形筋群+肩甲挙筋のケアを習慣化することをおすすめします。

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その他の肩部・背部の筋肉

三角筋広背筋大円筋ローテーターカフ(小円筋棘上筋棘下筋肩甲下筋)・僧帽筋(僧帽筋上部線維僧帽筋中部線維僧帽筋下部線維)・外内肋間筋前鋸筋肩甲挙筋菱形筋群(大菱形筋)】

参考文献・出典

・Wikipedia「小菱形筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/小菱形筋

・看護roo!「小菱形筋」https://www.kango-roo.com/word/19929

・日本整形外科学会「胸郭出口症候群」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/thoracic_outlet_syndrome.html

・厚生労働省 e-ヘルスネット「肩こり」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html

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