肩関節の内旋・外旋とは|働き・関与する筋肉・可動範囲・ローテーターカフを解説

肩関節の内旋・外旋とは

下垂状態にある上腕の親指が外側から内側に向くように捻ること内旋といいます。

肩関節の内旋に関わる代表的な筋肉として肩甲下筋大胸筋広背筋大円筋などがあげられます。

外旋は下垂状態にある上腕の親指が内側から外側に向くように捻ることを外旋といいます。

外旋に関わる代表的な筋肉として棘下筋小円筋があげられます。

  • 図では上腕の動きと肩の動きをはっきり区別させるため、前腕を回外位で、肘関節を直角に曲げて内旋・外旋しています。

この記事では、次のような疑問にお答えします。

肩関節の内旋・外旋とは?
どの筋肉が関わる?
正常な可動範囲は?
ローテーターカフとは?

例え話で言うと、肩関節の内旋・外旋は「上腕を捻るドライバーのような動き」です。上腕骨を長軸回りに回転させる動作で、投球動作・水泳・武道など多くのスポーツで重要な役割を果たします。

内旋・外旋の解剖学的メカニズム|長軸回りの回転

内旋・外旋は上腕骨の長軸を中心とした回転です:

「長軸回りの回転」とは

上腕骨をに見立てると、その長い方向の軸を中心に回転する動作。これにより手のひらの向きが変わります。

内旋の動き

① 親指の動き
外側→内側
・手のひらが後ろ向き
・手のひらが下向き

② 日常例
・ボトルのフタを右手で開ける動作
ガッツポーズから手のひらを下にする
後ろポケットに手を入れる

外旋の動き

① 親指の動き
内側→外側
・手のひらが前向き
・手のひらが上向き

② 日常例
・ボトルのフタを右手で閉める動作
「敬礼」の手の向き
髪を後ろにかきあげる

測定姿勢の重要性

肩関節の内旋・外旋は測定姿勢で値が変わるのが特徴:

① 下垂位(解剖学的肢位)
腕を体側に下げた状態。本記事の標準姿勢。

② 90度外転位
肘を90度曲げて腕を真横に水平。
内旋:70〜90度
外旋:90度

③ 90度屈曲位
腕を前に90度挙げた状態。
内旋:70度
外旋:90度

姿勢によって可動域が大きく異なるため、測定時の姿勢を統一することが重要です。

「投球動作」での重要性

投球では90度外転位での内旋・外旋が最重要:
テイクバック=外旋
リリース=内旋
・スピードと精度を決定

midashi肩関節の内旋・外旋に関与する筋肉

内旋:肩甲下筋大胸筋広背筋大円筋

外旋:棘下筋小円筋

内旋に関与する筋肉の詳細

① 肩甲下筋(けんこうかきん)
肩甲骨前面
ローテーターカフの1つ
内旋の主役
・最大の内旋筋

② 大胸筋
胸前面を覆う
強力な内旋筋
・「押す」動作と連動

③ 広背筋
背中の広範囲
内旋+伸展+内転
・「引く」動作と連動

④ 大円筋
肩甲骨外側下方
「広背筋の小さな相棒」
・内旋+伸展+内転

外旋に関与する筋肉の詳細

① 棘下筋(きょくかきん)
肩甲骨後面
ローテーターカフの1つ
外旋の主役
・最大の外旋筋

② 小円筋(しょうえんきん)
肩甲骨外側
ローテーターカフの1つ
・外旋+水平外転

三角筋後部も外旋に補助的に関与。

ローテーターカフ4筋の役割|肩の隠れた立役者

肩関節の内旋・外旋を語る上で最重要なのが「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」

ローテーターカフとは

4つの筋が肩関節を取り囲んで安定させる構造:

① 棘上筋(きょくじょうきん)
肩甲骨上部
外転(特に開始時)

② 棘下筋(きょくかきん)
肩甲骨後面
外旋

③ 小円筋(しょうえんきん)
肩甲骨外側
外旋+水平外転

④ 肩甲下筋(けんこうかきん)
肩甲骨前面
内旋

「カフ(cuff)」は「袖口」の意味。4筋が肩を袖口のように包む構造から命名。

ローテーターカフの役割

① 上腕骨頭の関節窩への押し付け
肩関節は不安定な構造。ローテーターカフが常に活動して球を受け皿に押し付け、安定を保ちます。

② 動的安定性の確保
腕を動かす際の「微調整」を担当。

③ 大きな動作の補助
三角筋など大筋群が動かす際の「基盤」を作る。

④ 回旋運動の主体
内旋・外旋動作の主役。

「インナーマッスル」

ローテーターカフは「肩のインナーマッスル」と呼ばれ、深層で関節の安定を担います:

① 大筋群(アウター)
・三角筋・大胸筋・広背筋など
を発揮
大きな動き

② インナーマッスル(ローテーターカフ)
・棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋
安定性を確保
細かな調整

両者のバランスが肩の健康に必須。

ローテーターカフの問題

① 腱板断裂
棘上筋が最多発
40歳以上に多い
夜間痛・挙上不能

② 腱板炎
・繰り返しの動作で炎症
・スポーツ選手に多い

③ 機能不全
筋力低下
動的不安定性
他の肩疾患の原因

強化の重要性

ローテーターカフを意識的に鍛えることで:
肩関節の安定性向上
四十肩・五十肩予防
スポーツパフォーマンス向上
大筋群の効果的活用

低負荷×高回数でのトレーニングが基本です。

midashi可動範囲

内旋:0〜80°
外旋:0〜60°

正常範囲の詳細

内旋
0〜80度
・親指が体の後ろを向く程度

外旋
0〜60度
・親指が体の外を向く程度

内旋>外旋の傾向:

① 内旋筋の方が多い
肩甲下筋+大胸筋+広背筋+大円筋(4筋)

② 外旋筋は少ない
棘下筋+小円筋(2筋)

③ 日常動作の傾向
内旋動作が多い(前方の物を扱う)。

姿勢別の可動範囲

① 下垂位(本記事の基準)
・内旋:0〜80度
・外旋:0〜60度

② 90度外転位
内旋:70〜90度
外旋:90度
投球姿勢での評価

③ 90度屈曲位
・内旋:70度
・外旋:90度

年齢別の目安

内旋
20代:80度
40代:70〜80度
60代:60〜70度
80代:50〜60度

外旋
20代:60度
40代:50〜60度
60代:40〜50度
80代:30〜40度

制限の意味

可動範囲の低下は:
四十肩・五十肩
ローテーターカフ機能不全
関節包の硬化
巻き肩

を示唆します。

特に外旋制限は四十肩の初期症状として現れやすい指標です。

肩の全可動範囲一覧

屈曲:0〜180度
伸展:0〜60度
外転:0〜180度
内転:0度
外旋:0〜60度(本記事)
内旋:0〜80度(本記事)
水平内転:0〜135度
水平外転:0〜30度

midashi主な運動、スポーツ動作

エクスターナルローテーションインターナルローテーション野球の投球動作・空手の防御

各種目での役割

① エクスターナルローテーション
外旋の専門トレーニング
棘下筋・小円筋強化
軽い負荷で実施

② インターナルローテーション
内旋の専門トレーニング
肩甲下筋強化
・ローテーターカフ強化

③ 野球の投球動作
テイクバック=最大外旋(180度)
加速期=外旋から内旋への切り替え
リリース=強力な内旋
フォロースルー=最大内旋

④ 空手の防御
外受け=外旋
内受け=内旋
・素早い切り替え

その他の重要なスポーツ

⑤ テニス・バドミントン
サーブ・スマッシュ
・回外位から回内位への切り替え

⑥ バレーボール
スパイク動作
・強力な内旋

⑦ ハンドボール
投球動作
・野球と類似

⑧ 水泳(クロール)
キャッチ=内旋
リカバリー=外旋

⑨ クライミング
ホールドの掴み方で内旋・外旋を使い分け

⑩ ゴルフ
テイクバックでの外旋
ダウンスイングでの内旋

日常生活でもドアノブを回す・スマホ操作・キーボード打ち・運転(ハンドル)などで頻繁に使われます。

投球動作と内旋・外旋|野球選手の肩の使い方

肩の内旋・外旋が最も極端に使われるのが「投球動作」

投球動作の6段階

① ワインドアップ期
・準備姿勢
・両肩は中立位

② アーリーコッキング期
腕を後ろに引く
外旋開始

③ レイトコッキング期
最大外旋(150〜180度)
「弓を引く」状態
大胸筋・肩甲下筋が伸長

④ アクセラレーション期(加速期)
外旋から内旋への急速な切り替え
・最大の角速度
7000度/秒の超高速

⑤ リリース期
ボール離れ
内旋ピーク

⑥ フォロースルー期
・腕の減速
強い内旋+水平内転

投球障害肩の3大原因

① 外旋可動域の低下
テイクバックが不十分
球速低下
無理な動作でケガ

② ローテーターカフの機能不全
・棘上筋・棘下筋の疲労
インピンジメント
関節唇損傷

③ 肩甲骨機能不全
肩甲胸郭関節の動き不足
スカプラディスキネジア
・全身運動連鎖の崩壊

「内旋制限」の問題

野球選手で「内旋可動域の左右差」がよくあります:

GIRD(Glenohumeral Internal Rotation Deficit)
投球側の内旋可動域が低下
20度以上の左右差は要対応
関節包・関節唇の問題

原因
・繰り返しの外旋負荷
後方関節包の硬化
関節唇損傷

対策
スリーパーストレッチ
・後方関節包のストレッチ
・適切な投球数管理

少年野球での注意

成長期の選手は骨端線がまだ閉じていないため:
リトルリーガーズショルダー
・成長板の損傷
球数制限が重要

「投手の肩は使い捨て」と言われないよう、ローテーターカフ強化+柔軟性維持+適切な休養で一生使える肩を作りましょう。

セルフチェックと強化エクササイズ

セルフチェック

① 内旋可動域テスト(結帯動作)

方法
1. 手を背中の後ろに回す
2. 手を背中で上に滑らせる
3. どこまで届くか確認

評価
肩甲骨に届く:正常
胸椎中部:軽度制限
腰部のみ:要対応

② 外旋可動域テスト(結髪動作)

方法
1. 髪を結ぶ姿勢を取る
2. 両手を頭の後ろへ
3. スムーズにできるか

評価
余裕でできる:正常
痛みあり:要注意
不能:要対応

③ アプライリーテスト

方法
1. 反対側の肩を反対の手で触る
2. 身体の後ろから反対の手で背中を触る
3. 両方をスムーズにできるか

強化エクササイズ

① エクスターナルローテーション(外旋強化)

方法
1. 軽いダンベル(0.5〜2kg)を持つ
2. 横向きに寝るまたは座位
3. 肘を体に密着
4. 前腕だけ外側に動かす
5. 10〜15回×3セット

効果:棘下筋・小円筋の強化。

② インターナルローテーション(内旋強化)

方法
1. 軽いダンベルを持つ
2. 横向きに寝る
3. 肘を体に密着
4. 前腕だけ内側(お腹側)に動かす
5. 10〜15回×3セット

効果:肩甲下筋の強化。

③ チューブを使ったエクササイズ

方法
1. チューブを腰の高さに固定
2. 横向きに立つ
3. 肘を体側
4. 外旋・内旋を繰り返す
5. 15回×3セット×両側

④ スリーパーストレッチ(後方関節包)

方法
1. 横向きに寝る(下の腕を伸ばす)
2. 肘を90度
3. もう片方の手で前腕を床に押す
4. 後方の伸びを感じる
5. 30秒×3回

効果:GIRD改善・後方関節包の柔軟性。

⑤ クロスボディストレッチ

方法
1. 腕を反対側の肩へ
2. もう片方の手で肘を引き寄せる
3. 30秒キープ
4. 3回×左右

頻度の目安

週3〜5回のローテーターカフ強化。投手・スポーツ選手は毎日軽めの維持トレを推奨。

注意事項
軽い負荷から始める
痛みがあれば中止
正しいフォームが最重要
急性期は安静優先

ローテーターカフは「使い続けないと衰える筋」。日々の小さなケアで一生健康な肩を維持しましょう。

まとめ

肩関節の内旋・外旋について解説してきた内容を整理します。

上腕骨の長軸回りの回転動作
・内旋=親指が外側→内側
・外旋=親指が内側→外側
・内旋筋:肩甲下筋・大胸筋・広背筋・大円筋
・外旋筋:棘下筋・小円筋
ローテーターカフが動的安定の主役
4筋構成:棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋
・正常可動域:内旋80度・外旋60度
・主なスポーツ:野球の投球・空手の防御・テニス・水泳
・投球動作で最大外旋→急速内旋の切り替え
GIRD(内旋制限)は投球障害の原因
軽負荷×高回数のローテーターカフ強化が予防の鍵

肩関節の内旋・外旋は「上腕を捻るドライバーのような動き」として、私たちのスポーツ・日常動作のすべてを支えています。ローテーターカフ4筋を意識した強化+柔軟性維持で、一生使える肩を作りましょう。

参考文献・出典

・厚生労働省 e-ヘルスネット「肩こり」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

・日本整形外科学会「腱板損傷」https://www.joa.or.jp/

・日本肩関節学会「肩関節疾患」https://katakansetsu.jp/

・日本臨床スポーツ医学会「投球障害肩」http://www.rinspo.jp/

・rehatora.net「肩関節の機能解剖」https://rehatora.net/

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