大円筋の作用と役割(起始停止・神経支配・筋トレメニューなどを徹底解剖)
大円筋(だいえんきん)とは脇の下に位置し、肩甲骨から上腕骨へとつながる筋肉です。英語では「teres major muscle」と呼ばれ、「teres」は「円形の」を意味します。
広背筋(こうはいきん)と似た作用を持つ筋肉で、主に広背筋の働きを補助する作用があるため、トレーニング業界では「広背筋の小さなヘルパー(Little helper of latissimus dorsi)」とも呼ばれています。
この記事では、次のような疑問にお答えします。
・大円筋の正しい起始停止・作用は?
・広背筋との違いは?
・小円筋とどう違う?
・逆三角形ボディに大円筋はどう貢献する?
・効果的な鍛え方は?
例え話で言うと、大円筋は「広背筋を脇から支える縁の下のサポーター」のような存在です。広背筋ほど大きくはありませんが、「広がりのある背中」を完成させる重要な脇役です。
英語名称
teres major muscle(テレス・メジャー・マッスル)
「teres(円形の)」+「major(大きい方の)」で構成された名称です。隣にある小円筋(teres minor)とペアで覚えると整理しやすい筋です。
大円筋の解説
大円筋(だいえんきん)は小円筋(しょうえんきん)の下に位置し、肩甲骨後面の下角部から起こり、前外方に向かって上腕骨前面の小結節稜(しょうけっせつりょう)に着きます。
大円筋は広背筋(こうはいきん)などとともに脇の下の後腋窩(こうえきか)ヒダを形成します。このように大円筋の停止部は広背筋と近いところにあるので、似た作用を持ちます。
小円筋も大円筋と隣接している筋肉ではあるのですが、それぞれ付着部が異なるので運動動作はまったく反対の働きをします。

大円筋と広背筋の走行
大円筋は運動動作においては広背筋と伴に肩関節の内転、内旋、伸展動作に関与しています。
この筋肉は広背筋と共同して働くことが多い筋肉なので「広背筋の小さなヘルパー」と呼ばれることがあります。
大円筋は菱形筋群(りょうけいきんぐん)によって肩甲骨がしっかりと固定されているか、あるいは下方回旋しているときのみ効果的に働きます。つまり、菱形筋・僧帽筋などの肩甲骨を安定させる筋群が機能していることが、大円筋の働きを引き出す前提条件です。
大円筋を鍛える種目は広背筋を鍛える種目と酷似していて、ダンベルやバーベルを用いたローイング、プル・オーバー、ラット・プルダウン、懸垂やロープ・クライミング、それに肩関節の内旋動作をすることで大円筋が鍛えられます。
また、肩関節を90°外転位、更に外旋させることでストレッチすることができます。
肩関節周囲炎になってしまうと大円筋に強い圧痛・攣縮(れんしゅく)反応が出てしまい、可動域の制限の原因になる場合があります。
大円筋と広背筋・小円筋との違い
紛らわしい3つの筋を整理します。
① 大円筋 vs 広背筋
両者は同じ場所(上腕骨小結節稜)に停止し、作用も似ています。違いは大きさと起始:広背筋は背中の広い範囲から起こる大きな筋、大円筋は肩甲骨下角から起こる小さな筋。広背筋がパワー、大円筋が補助役。
② 大円筋 vs 小円筋
両者とも肩甲骨外側縁から起こりますが、停止部と作用が真逆。大円筋は上腕骨前面の小結節稜に停止し内旋に働く。小円筋は上腕骨後面の大結節に停止し外旋に働く(ローテーターカフの一員)。
起始
肩甲骨の外側縁(がいそくえん)・下角(かかく)
肩甲骨の一番下、外側の角から起こります。
停止
上腕骨の小結節稜(しょうけっせつりょう)
広背筋と同じ場所に停止します。この共通の停止部が、両者の作用の類似性を生み出しています。
大円筋の主な働き

運動動作においては肩関節の内転、伸展、内旋といった動作に関与します。
具体的には:
・肩関節の内転(腕を体側に引き寄せる)
・肩関節の伸展(腕を後ろに引く)
・肩関節の内旋(腕を内側に捻る)
・逆三角形ボディの脇下のボリュームを作る
トレーニング上重要なのは、大円筋が発達すると脇下のボリュームが増し、肩から腰にかけてのラインがより「広がり」のある形になる点です。広背筋だけでは出せない立体感を作る筋として、トップビルダーが特に意識する部位でもあります。
大円筋を支配する神経
肩甲下神経(C6〜C7)
腕神経叢から分岐する肩甲下神経が大円筋を支配しています。同じ肩甲下神経が肩甲下筋(ローテーターカフの一員)も支配しています。
日常生活動作
主に物を引き寄せる動作などに関与し、広背筋の補助筋として働きます。
具体的には:
・重い扉を引いて開ける
・カバンを引き寄せる
・体を引き上げる動作(鉄棒・はしご)
・後ろにある物を引き寄せる
スポーツ動作
広背筋とともに水泳のストローク動作やボートのオールを漕ぐような動きに貢献します。
特に貢献するスポーツ:
・水泳(クロール・バタフライの水を引く動作)
・ボート競技(オールを引く)
・クライミング(体の引き上げ)
・柔道・レスリング(相手を引き寄せる)
・野球(投球のフォロースルー)
関連する疾患
肩関節周囲炎、投球障害肩(とうきゅうしょうがいかた)、肩甲下神経麻痺(けんこうかかしんけいまひ)など
① 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
大円筋に強い圧痛と攣縮反応が現れ、肩の可動域制限の原因となります。
② 投球障害肩
野球の反復投球で大円筋がオーバーユースになると、肩後部〜脇下の痛みを引き起こします。
③ 肩甲下神経麻痺
大円筋・肩甲下筋を支配する神経が損傷すると、肩関節の内旋筋力が低下します。
④ クアドリラテラルスペース症候群
大円筋・小円筋・上腕三頭筋長頭・上腕骨で囲まれる「四辺形間隙(クアドリラテラルスペース)」を通る腋窩神経や後上腕回旋動脈が圧迫される疾患。大円筋の過緊張が一因となります。
代表的なウエイトトレーニングとストレッチ

ハイプーリー(ラットプルダウン)
大円筋を効果的に狙うコツ
大円筋は広背筋と同じ種目で鍛えられますが、より効果的に狙うコツがあります。
① 肘を体から離した状態でローイング
肘を体側に近づけて引くと広背筋が主役。肘を体から離して後方に引くと大円筋により強い刺激が入ります。
② プルオーバー
仰向けでダンベルを頭の上から胸前に引き下げる動作。広背筋と大円筋に同時に効きます。
③ ストレートアームプルダウン
腕を伸ばしたままケーブルを下に引く動作。大円筋と広背筋を集中的に狙えます。
④ 菱形筋・僧帽筋を先に温める
大円筋は肩甲骨が安定していないと効果的に働かないため、これらの筋を軽くウォームアップしてからトレーニングするのがおすすめ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 大円筋を集中的に鍛えるべき?
広背筋を鍛える種目で同時に鍛えられるので、特別に意識する必要はあまりありません。ただし、「脇下のボリューム」を強調したい場合は、肘を体から離したローイングを取り入れると効果的です。
Q2. 大円筋と小円筋を間違えやすい理由は?
名前と位置が似ているからです。大円筋は内旋(内側に捻る)、小円筋は外旋(外側に捻る)と、作用が真逆なので覚えやすいでしょう。
Q3. 大円筋はローテーターカフに含まれる?
含まれません。ローテーターカフは棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つ。大円筋は隣接していますが別カテゴリーです。
Q4. 脇の下が痛むのは大円筋が原因?
可能性はあります。広背筋・大円筋・後腋窩ヒダ周辺の筋緊張は脇の下の痛みの原因になります。慢性的な痛みや腕のしびれを伴う場合はクアドリラテラルスペース症候群などの可能性もあるので、整形外科を受診してください。
Q5. 大円筋のストレッチ方法は?
腕を頭上に挙げて反対方向に体を傾けると、広背筋と一緒に大円筋もストレッチされます。また、腕を頭の後ろで反対側の肘を引く動作も効果的です。
Q6. 大円筋を鍛えると逆三角形ボディに近づく?
はい。大円筋が発達すると脇下のボリュームが増し、肩から腰にかけてのVシェイプがより強調されます。広背筋とセットで鍛えることで、立体感のある背中になります。
まとめ
大円筋について解説してきた内容を整理します。
・肩甲骨の外側縁・下角から起こり、上腕骨小結節稜に停止
・広背筋と同じ場所に停止し、似た作用を持つ「広背筋の小さなヘルパー」
・主作用は肩関節の内転・伸展・内旋
・支配神経は肩甲下神経(C6〜C7)
・逆三角形ボディの脇下ボリュームを作る重要な脇役
・小円筋とは隣接するが作用が真逆(小円筋=外旋、大円筋=内旋)
・ローテーターカフには含まれない
・ローイング・ラットプルダウン・プルオーバーで広背筋と同時に鍛えられる
大円筋は小さく目立たない筋ですが、広背筋とともに「広がりのある背中」を完成させる重要な筋肉です。広背筋のトレーニングを意識して行うことで、自然に鍛えていきましょう。
【三角筋・広背筋・ローテーターカフ(小円筋・棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)・僧帽筋(僧帽筋上部線維・僧帽筋中部線維・僧帽筋下部線維)・外内肋間筋・前鋸筋・肩甲挙筋・菱形筋群(大菱形筋・小菱形筋)】
大円筋クイズ(全7問)
起始・停止・神経支配などを4択で確認。覚えたかチェックしよう。
問題文
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参考文献・出典
・Wikipedia「大円筋」https://ja.wikipedia.org/wiki/大円筋
・看護roo!「大円筋」https://www.kango-roo.com/word/19956
・日本ストレッチング協会「大円筋の起始と停止・作用と神経支配」https://j-stretching.jp/anatomy/teres-major-muscle
・rehatora.net「大円筋の解剖と機能・ストレッチ」https://rehatora.net/






